終戦間もない渋谷では、多くの屋台や闇市が登場し、その後の復興の活力となりました。道玄坂に看板を掲げる焼鳥「森本」も、そんな屋台から始まった一軒です。
創業から70余年、今も変わらず渋谷の街を明るく灯す人気の飲み屋です。
場所は渋谷マークシティのすぐ近くに店を構えますが、店員さんによりますと60年ほど前に店舗を構え、昭和47年に現在の場所に移ったそうです。
屋台から始まった渋谷の鰻酒場
予約を受けていないお店で、ピーク時には列をつくるお客さんもいます。タイミングよく入れてもらって、女将さんにご挨拶。
ここはカウンター中心のつくりで、お客さん同士、そして店員さんとの距離がとても近いです。ピシっと背筋を伸ばして、忙しくとも丁寧な接客の森本は、大衆酒場ではあるものの、どこか割烹や寿司屋のような空気があります。
今日残っているのはこれとこれと…。人気店なので遅い時間は売り切れもあります。
なにはともあれ、今日もお疲れ様のビールでスタート。樽生はアサヒスーパードライ、瓶でキリンクラシックラガーとサッポロ黒ラベルも置いています。
ビアタンにトトトと注いで、では乾杯!
焼鳥の香りを肴に、まずはビアタンをきゅっと乾かして、さて何をいただきましょう。
メニューはシンプル
瓶ビールは619円、生ビールは昔ながらの大きな中ジョッキで667円です。看板にある通り、お酒は飯田市のお酒・喜久水です。多くの人がビールから日本酒にいきますが、赤ワインの小瓶をいつも頼むベテラン紳士もいらっしゃいます。
鶏の焼鳥で、A,B,Cの3コースが用意されています。お腹のすき具合で選んでみては。岩手県の南部鶏を、独自の炭配置でじっくり焼き上げます。
加えて、10月から3月まで旬という、真鴨、小鴨、合鴨も気になるところ。鴨のたたきも、渋谷で食べたくなればまずはここでしょう。
常連さんの定番「つくね」
長年、変わらず受け継がれているつくね(200円)は、爽やかな柚子の香りがします。滴る肉汁に思わずほっぺが落ちそうに。
そうそう、梅おろしもおすすめ。鰹節に隠れていますが、梅干しがたっぷり入ってます。焼鳥に添えて食べるもよし、そのままでも、舌や食道をすっきりしてくれてますまます焼鳥を美味しくしてくれる魔法の小鉢です。
名物、渋谷の倶利伽羅焼き
渋谷の焼鳥屋には鰻をだすところが多いです。童謡「春の小川」で知られる渋谷川では、かつて鰻がとれたから、など聞きます。※諸説あります。
森本もそんな一軒で、創業時は鰻やどじょうをメインに扱うお店だったと女将さん。その歴史を今に伝え、70年前の渋谷に思いを馳せながら「くりから」のカタチをした、鰻太巻き(1,333円)をつまみにするのも森本の楽しみ方です。
太巻きといっても「う巻き」ではなく、半身をまるまると焼き上げたボリュームたっぷり、贅沢な逸品です。
長年愛されている濃いめの甘タレにつけて重ね焼きをしています。蒲焼きと違ってかなり厚いので、このタレの濃さがちょうどいいです。
女将さんの笑顔に見送られて、今日もごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 焼鳥 森本 |
住所 | 東京都渋谷区道玄坂2-7-4 |
営業時間 | 営業時間 16:00~22:00 定休日 日曜日、祝日 |
開業時期 | 1948年 |