渋谷『千両』食肉市場直送のモツが人気。豚足に赤星を合わせて。

渋谷中央通りで半世紀。縄のれんの店「千両」。食肉市場直送の食肉・モツを使った肉料理が人気です。お客さんの多くは飲み慣れた黒帯さんたち。だから喧騒の渋谷にあっても、ここは程よく落ち着いています。

渋谷のマークシティと玉川通りの間・道玄坂一丁目エリアには、長く続く酒場が密集しています。昨今の再開発ラッシュで次々と表情を変え続けている渋谷にあって、ここは”あの頃”のままなのです。

Syupoではこのエリアのお店をいくつも紹介してきましたが、「千両」も一度丁寧にご紹介しなければならないでしょう。

創業は1968年（昭和43年）。まだ渋谷駅前には路面電車が行き交っていた頃です。もちろんマークシティもなく、この界隈は今以上に赤ちょうちん一色だったようです。

道玄坂一丁目は老舗酒場密集地帯

いまでこそチェーン店がこぞって出店していますが、それでも歴史ある個人経営のお店が粘り強く営業中。店の歴史の分だけ客層も飲み慣れた人が多く、いわゆる「昭和の酒場の空気感」が出来上がっています。

お店は3階建て。90人も入れます。だから人数が多くても期待に応えてくれる安心の一軒。もちろん初めての利用で一人飲みだったとしても、どーんと受け入れてくれます。あっという間に「渋谷にある行きつけの老舗」気分に浸れてしまいます。

とくに2階の広い空間が心地いい。窓から外を眺めれば、みんなが楽しく酔っ払う飲み屋街。店内もガヤガヤしているのですが、それが心地よい酒場のBGMなんです。手をたたいて笑う人などはほとんどいません。

ビールは何十年もサッポロラガー（赤星）。老舗のテーブルには瓶ビールがよく似合います。それでは乾杯。

それではドリンクメニューを見ていきましょう。樽生ビールはサッポロ生ビールこと現・サッポロ黒ラベル（620円）。瓶ビールは大瓶で650円。ヱビスもあり、こちらは中瓶で650円です。

酎ハイ類の値段は以前300円と大変安い印象がありました。いまでも300円台はキープし、380円。ホッピーセット（480円）もあり、通常のホッピーと黒ホッピーが選べます。

日本酒は定番として白鹿（400円）があるほか、越乃景虎や雪の茅舎、名倉山など地酒も豊富に揃っています。

続いて料理のメニュー。千両のおすすめは食肉センター直送のもつ料理。毎日新鮮なモツが入荷します。

牛ホルモン炒め（690円）、酢モツ（420円）、レバカツ（610円）など。串焼きは150円から、レバ、ハツ、カシラと一通り揃っています。

千両の名物料理はだし巻き玉子（640円）。あいにく写真に撮っていませんでしたが、ぷるぷるでプリンのよう。家では真似のできない逸品です。ボリュームもしっかり。

レモンサワー（380円）。昔ながらの酎ハイタンプラーでやってきます。しっかり入るのが嬉しい。そして焼酎が濃いのも老舗らしくて素敵です。

結構しっかりした量がでてきます。揚げたてサクサク、天つゆにヒタヒタにつけて、酒場らしく濃い味を楽しみたい。

片栗粉をまぶした、どちらかといえば竜田揚げのような一品。歯ごたえを楽しむと同時に溢れ出してくる肉汁を楽しみます。

サッポロビールのソフトドリング部門時代からのロングセラー、業務用玉露茶をつかった「玉露割り」。元祖業務用割材専用の玉露茶は、いまもポッカサッポロ社が発売しています。焼酎と合わさったときに本来のお茶の濃さになるよう濃く作られているのが美味しさのポイント。

私のイチオシは、380円の豚足です。冷製でプリッとしていますが、中はしっとりとしていて柔らかく、年配の方でも安心して食べられます。ピリ辛のオリジナルソースもあとひく美味しさです。

古いお店ですが明るいのも千両の良さ。ここで飲むと渋谷にいることを忘れて、遅くまで飲み友だちと盛り上がってしまいます。落ち着いたら、渋谷の千両で飲みたいですね。

ごちそうさま。

（取材・文・撮影／塩見なゆ）