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庄内藩の城下町、山形県鶴岡。北前船で栄えた商人の町・酒田と並び、山形庄内平野を代表する街です。海あり、山あり、平野ありで、あらゆる食材が集まる鶴岡は、ユネスコ食文化創造都市にも選ばれました。
この地の郷土料理を肴にして、地酒を楽しむひとときはいかがでしょう。
鶴岡駅から1キロほど離れた中心街で1989年創業の割烹「みなぐち」へ飲みに行きます。
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鶴岡へは、JR羽越本線の特急いなほで新潟駅から1時間20分ほど。日本海から吹き付ける吹雪の洗礼を受けて、それでも無事に到着。ホームまで雪で真っ白です。
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JR鶴岡駅前には、地元の観光案内や地元食材を楽しませてくれる観光施設があり、列車までの時間にぶらりと立ち寄るのも楽しいです。角打ちもありますが、それはまた別の機会に。
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飲みに行く前に軽く街歩きを。ここは国指定史跡・庄内藩校 致道館。文化2年(1805)酒井家九代目・忠徳公が設立した藩校です。
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こちらは致道博物館。元々は庄内藩主酒井家の御用屋敷だったもので、鶴岡公園の中心にあります。このように、鶴岡は歴史や文化を今に伝える建物が多く、往時に思いを馳せながら歴史散歩もまた楽しいです。そうしているうちに、お酒も飲みたくなりますから。
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街の中心街は、冬季は半分雪の中。それでも、飲み屋さんは元気に営業しているので安心です。
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築150年、幕末の土蔵を改装してお店にした「みなぐち」。
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太い柱や梁が店内からも眺めることができ、雪と戦う重厚な建物を体感できます。1人、2人でちびりと日本酒を飲みながら過ごしたいカウンターや、ゆったり座れるテーブル席、宴会座敷が配されています。割烹とありますが、地元食材で飲ませてくれるここは、まさしく酒場です。
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地元の食材を使った料理が豊富。ご近所の方の集いの場所でもあり、食材のプロもファンが多いと聞きます。
山形牛タタキ、由良穴子、タラ汁にガサ海老と、この品書き一枚からも庄内が食べ物の宝庫だと感じることができます。
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地元のベテランお姉さんと「ここは美味しいよー」と話を聞きながら、今日の料理を考えます。ミニ懐石もかなり豪華そう。
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刺身2点盛り700円(以下税抜)、豚ヘラ焼き500円など単品もリーズナブルです。
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それでも、これだけあると決めきれない…自家製のエビシュウマイ(700円)も気になります。
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まずは落ち着くために、生ビールから。状態良好のディスペンサーから注がれた上品なタンブラーで登場のサッポロ黒ラベル。では乾杯!
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お隣の常連さんと「あれもこれも食べたい」と話していると、その常連さんから次々おすすめを教えてもらって。これは困った…そんなとき、女将さんが「じゃあ、お酒のつまみを少しずつ用意しますね!」と、持ってきてくれたのは山形の名物、ずんだや昆布、ハリハリを和えた小鉢。郷土色ある肴は、地元のお酒を誘います。
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おすすめ頂いた、鱒焼き。全国的に知られる庄内の鱒が、こうして目の前にある。旅先で飲む幸せがここにあります。
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日本酒が飲みたくなるのは当然の流れでしょう。庄内のお酒を常時12種類用意しています。栄光冨士の本醸造(450円)を上燗でお願いします。
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洒落た丸徳利ほ傾けてお猪口を満たし、思わずにんまり。辛口淡麗ながら、余韻に長く米の香りが続く食中酒です。
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庄内豚の脂の美味しいところを3日間かけて仕上げた店の名物、桜美豚の角煮(700円)。割烹らしい和の盛り付けで、その味は日本酒とも相性抜群です。
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箸で切れるほど柔らかく、年配の常連さんにも贔屓にされる理由がよくわかる逸品です。日本海側はつい魚ばかり食べるイメージがありますが、土地の豚もまた美味。
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自家製のつけものなど、その後も数品いただきつつ、お店を切り盛りするお二人や、偶然カウンターでご一緒した地元のお母さんたちと、料理話に花がさきましす。
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デザートも食べますか?私は甘いのはあまり得意ではないので…そんな話しの中で、「これを食べなきゃもったいない!」と、お裾分けいただいた冬の柿。ほっこり暖まる甘さが嬉しいです。
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外は白銀の世界ですが、お店の中は人も料理も佇まいも暖かい。この寒暖の差もまた、冬に旅する魅力です。
皆さんも、美味しい郷土料理と地元の素敵な人々との交流を楽しみに、お酒の旅をしてみませんか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
すたんど割烹 みなぐち
0235-23-3791
山形県鶴岡市山王町8-10
11:00~14:00・17:00~22:00(第1・4・5月曜、第2・3日曜定休※2・3月曜祝日の場合日曜営業)
予算3,000円