天童の大衆店「いろは居酒屋 写楽亭」。1993年の開業ですが、以前は「いろは寿司」として営業しており歴史があります。芋煮をはじめ、山形の名産品や郷土料理が楽しめます。観光地ながら利用者は地元の人が中心です。
天童温泉は実は大きな飲み屋街
山形を代表する温泉地のひとつ、天童。山形市に接しており、その立地から温泉を目的とした観光客だけでなく、出張客の利用が多く、温泉街の宿泊者の1割以上がビジネス利用と聞きます。
そうした理由もあって、旅館で夕食をとらない「泊食分離」がある程度浸透していた歴史があります。近年では温泉旅館が率先して屋台村横丁を開設するなど、泊食分離はより重要視されています。
天童にはそうした背景もあって立派な飲食店街が昔からありました。それも、山形新幹線が停車するJR天童駅の周辺ではなく、約1キロ離れた天童温泉街を囲むように形成されています。店の数は約40軒。周辺の町から天童へ飲みに来る人もいる、地方の温泉地としてはかなり吸引力がある温泉地併設タイプの飲み屋街です。
「いろは居酒屋 写楽亭」はそんな天童の飲み屋街の中でも一際大きく、地元に親しまれてきた一軒。母体は天童の大箱老舗寿司店の「いろは寿司」。93年に写楽亭がオープンする以前は、こちらの建物が「いろは寿司」だったそうです。
大箱で地元の宴会にも多用されるような店。ですが、入ってすぐのカウンター席はまるで横丁の古くからやっている飲み屋のよう。普段からそういう店で一人で飲む人ならば、きっと気に入るに違いありません。
そのほかの席は個室や座敷を並べたつくり。二階は宴会場になっています。
長旅のひとやすみ。街の老舗で味わう1杯目のビールは格別です。一番搾り生ビールで乾杯!
お通しは山形の郷土料理、だし。
品書き
飲み物
ビールは大樽かキリン一番搾り(中ジョッキ580円)、瓶も一番搾り(中びん750円)。酎ハイ類は430円でいろいろありますが、珍しいものでは、山形ラフランスサワー(500円)など。ビールに次いで飲まれるのは日本酒のようで、天童発で全国区の銘柄、出羽桜酒造(天童市一日町)の清酒・出羽桜(450円)など。
ホワイトボード
海あり、里あり、山あり。山形は食材の宝庫と言われていますが、居酒屋の品書きをみて改めてそう思います。
お刺身は、庄内の岩牡蠣(770円)と真イカ(770円)、真鯛の昆布締め(770円)など。揚げ物・焼き物は里の幸、庄内のアスパラ(焼き・天ぷら550円)や牛ザブトンステーキ(1,650円)、だだちゃ豆(550円)など。
一品料理の芋煮(660円)は観光客向けではなく、地元の常連さんにも人気の定番料理とのこと。
定番料理
焼き鳥(ナンコツ380円や若鶏310円)あり、円盤ギョウザ(940円)ありと、品数は多い。
鮮度がよいイカ、定番の芋煮
真イカ刺し(770円)
つやがあり、写真の通り包丁をいれた角がピンとたつほどにハリがある真イカ刺し。コリコリとした歯ごたえと上品な甘さが楽しめます。
芋煮(660円)
山形の居酒屋で食べる芋煮は本当に美味しい。特別な具材ではないですが、やはり来たら必ず食べたくなる一品です。写楽亭の芋煮も秀逸で、里芋、牛肉、舞茸やしめじ、たけのこに厚切りのネギがはいった、豪快なもの。味付けはやや甘めの醤油味です。
緑茶割り(420円)
緑茶割りは濁ったタイプ。ベースは宝の甲類です。
最上町のアスパラ天ぷら(550円)
羽黒山や月山に囲まれた最上町は、その寒暖差をつかってアスパラの生産が盛んです。みずみずしく、大きいのに繊維感は強くありません。優しい甘さと天つゆの出汁がよくあいます。
あわせるお酒は、もちろん出羽桜です。
その街でつくったお酒をその街の居酒屋で、食材も地元のものが中心で。居酒屋の美味しさは写真ではあまり映えないかもしれませんが、しみじみ美味しいという気持ちが少しでもお届けできていればなによりです。
天童温泉を訪れる際は、旅館の夕食もよいですが、ちょっと外の居酒屋の様子も見て回りませんか。案外、旅館で働く人が飲んでいたりと、街の息吹が感じられて新たな魅力を発見できるかもしれません。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | いろは居酒屋 写楽亭 |
住所 | 山形県天童市東本町2-8-14 |
営業時間 | 営業時間 月~日 17:00~24:00 (L.O.23:20) 定休日 不定休 |
開業年 | 1993年(それ以前はいろは寿司として営業) |