酒田「こい勢」 寒鱈だけじゃない!お酒片手に魅惑の日本海を味わう旅。

酒田「こい勢」 寒鱈だけじゃない!お酒片手に魅惑の日本海を味わう旅。

日本海の海産物は魅力的なものばかり。物流の発達で都市部に居ながらにして食べられるようになりましたが、やはり出向いて食べるほうが断然楽しいです。凍えそうになりながら雪道を歩き、たどり着いた目的の店の暖簾をくぐる瞬間や、地元で長年店を営む大将との会話。シチュエーションや呼吸までが、美味しさのエッセンスになります。

個性豊かで地元ならではの海の幸を求めて、酒田の鮨店「こい勢」を目指しました。地元ならではの手頃な価格で食べさせてくれるお店で、値段はもちろん、地元の漁業関係者とご主人の関係が成せる素晴らしき鮮魚も評判です。

 

日本海側の町は寒いくらいが好き。目まぐるしく変化する空に操られ、晴天からの突然の吹雪だってあります。そんな環境で梯子酒をして、燗酒を片手に地魚を食べるのは格別なのです。

 

寒い時期は寒鱈が名物として知られていますが、ズワイガニやハタなど憧れの魚介類も旬を迎えます。

 

新潟駅で上越新幹線から羽越線の特急いなほに乗り継いで2時間ほど。東京からなら、朝出発すれば「こい勢」で昼食が楽しめます。

 

駅から5分ほどの距離ですが、吹雪いているとタクシーに乗りたいくらい。べっとりとした雪道を歩いてたどり着きました。

 

ご主人が笑顔で迎えてくれるカウンター。創業は昭和64年。酒田を代表する鮨店ですが、じっくり飲みたい人好みの大人の雰囲気です。

 

ビールは隣県・宮城仕込みのサッポロ黒ラベル(600円)。ピンと冷えて緊張した空間から、ほっとできる店内に入る寒暖差に「あ、ビールが飲みたい」となります。

それでは乾杯!

 

ビールはサッポロ。それはさておき、庄内平野は日本酒の名産地。取り扱うお酒も豊富で、定番は酒田を代表する銘柄のひとつ「初孫」です。本醸造とはいえ、鮨店で1合350円は大変に手頃感。

冷酒で東北泉、初孫、純米で酒田の酒蔵・麓井酒造と遊佐町の杉勇蕨岡酒造場の銘柄を取り扱い。上喜元や楯野川、亀の井にやまと桜など、地酒に力を入れている都市型酒販店の店頭を飾る銘柄が手頃な価格で用意されています。もうこれだけで、うっとり。

 

鮨はランチタイムなら1,000円から。地元の食材をふんだんに使ったおまかせ握り3,000円が店の味を楽しめるおすすめ盛りです。

お酒を飲むことを目的に来た筆者は、一品をいくつか摘んで、最後にいくらか握ってもらおうという予定です。お好みは200円から。

だって、本日のおすすめにとらふぐの文字があったら、食べずにはいられないでしょう。

 

日本酒で初孫の上燗を頼み、一緒にどうぞと供されたのは寒鱈の白子のとろみあんかけ。日本酒ベースの素朴なあんと、濃厚な白子の相性が抜群で、もうこの一口、二口で、酒田に来た労力は報われる気分です。

 

秋から冬にかけて、庄内浜の代表は天然のとらふぐで間違いないでしょう。

はえなわ漁で釣り上げられたとらふぐは豊洲なら超高級食材として取引されていますが、酒田をはじめとした地元では手頃な価格でいただくことができます。

コク深く味の濃さが庄内とらふぐの特長。

 

ふぐもあれば、もちろんカニだってある。庄内の海の幸は高級食材の宝庫。

 

蟹甲羅酒蒸し(1,200円)は、のんべえならば握りの前につままないのはもったいないです。蟹身で満たされた甲羅は温かく旨味が濃厚。華やかな風味が鼻をぬけて、そこに酒のあまみをきゅっと合わせたい。

 

のどぐろは炙りで。

日本海の食材はどれもこれも本当に贅沢です。シケで安定しないとはいえ、あれた海に揉まれた魚は、水揚げされたなら絶品揃い。

 

あらは軽く塩をふって。醤油をつかわず、一巻ずつ食材にあわせた味付けがされていますので、そのまま食べるのがご主人の味。

 

しらこは新鮮そのもので軍艦にせずともぷりっとしたまま酢飯の上ではみ出してながら収まっています。ものの良さは、魚喰いでなくとも食べてみればはっきりとわかるほど。

 

がさえび(がすえび)は、鮮度が落ちやすい食材。そのため産地である日本海側意外ではあまり流通していません。南蛮海老を上回るとも言われる濃厚の甘さ、旨さは格別の美味しさ。鮮度が良くともねっとりとした食感は他の海老とは大きく異るところ。

 

カワハギはキモ醤油で。ぷりぷりの白身とキモのコク、そしてふんわりと軽く握られた酢飯のバランスは絶妙。

 

酒田の酒類関係者さんが地元では「べー」と呼ぶと教えてくれた、黒バイ貝。大きく育ったものは、このように巻き貝らしくないきれいな切り身で握られています。

 

庄内産ボタンエビ。もちっとした食感と深みのある味わいです。

 

散々に贅沢をしているようですが、最後はご主人のおすすめ、ズワイガニ。ほかにも多くの地元食材が並ぶネタケース。改めて日本海の海の幸の素晴らしさに気付かされました。

 

丁寧な接客で優しく迎えてくれるご主人。魚のお話をゆっくり伺いながら、ゆっくりとメートルを上げていく優しいひととき。

「あぁ、いいやね。」

味や雰囲気の良さを伝える言葉はいくらでもありますが、ここではこのひとこと、つぶやきのような感想で終えます。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

こい勢
0234-24-1741
山形県酒田市相生町1-3-25
11:00~14:00・17:00~21:30(月定休)
予算6,000円