山形『スズラン』大箱だけど人情とコダワリたっぷり!山形旅行の1杯目に

山形『スズラン』大箱だけど人情とコダワリたっぷり!山形旅行の1杯目に

2020年10月30日

お酒と肴がおいしくて、ちょっぴり昔の地方都市の雰囲気を色濃く残している山形市。

戦国時代から江戸時代前期に活躍した武将・最上義光公がこの地を治めていた頃は、人口3万人を超える東北最大の都市だったと言われてます。羽州街道と最上川が交わるこの地は、多くの文化が集まりました。

歴史ある街に、食文化あり。そして銘酒と酒場あり。山形駅から徒歩圏に昭和風情に満ちた飲み屋街が広がります。

「味の店スズラン」は、地元では大定番の大衆割烹。飲み屋街の目抜き通り「すずらん通り」に店を構えて47年になります。

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山形駅前の老舗大箱居酒屋

蔵王に抱かれた山形盆地。奥羽山脈、出羽山地にぐるりを囲まれた独特な地形。空模様は目まぐるしく変化します。盆地のほぼ中央に位置する「山形城」(写真左下・JR山形駅西口から撮影)。

東京から2時間50分。参勤交代の難所だった奥羽山脈越えの板谷峠も、いまは新幹線であっという間に通過します。

駅を東に抜ければ、そこが街の中心。地方都市では珍しくお城の真横、城下町の中心近くに街の玄関・山形駅があります。

駅から徒歩5分。すずらん通りは大箱の居酒屋が多い通りですが、全国チェーンよりも個性豊かな地元店が軒を連ねています。そのうちの一軒が今日の目的地「スズラン」です。

小さな個室から大きな宴会に使える大部屋まで備える、客席数300もある大箱の居酒屋です。近隣で働く人々の宴会場所の大定番。そう聞くと一人・二人で飲みに行こうと考えている人は「うーん…」と思うかもしれませんが、1階にあるカウンター席はそうした宴会向けの料理屋のイメージとは真逆の、土地の風情を感じるスペースです。

長年店を支えてきたベテランの板前さんと、店を受け継ぐ2代目ご主人が包丁を握る板場。その目の前にカウンター席はあります。使い込まれた建物ですが手入れが行き届いています。

まずは樽生ビールから。キリン一番搾りで乾杯!

丁度いい距離感で、時折地元話や土地の食材について話してくれる女将さんやスタッフのベテランお姉さんたち。「これは自家栽培の野菜なんです」と、ブリあらと野菜の煮物がお通しがでました。

生ビールは一番搾り(中500円・大800円)。瓶ビールはキリンクラシックラガー、アサヒスーパードライ(共に中びん600円)、一番搾り黒生(小びん480円)。チューハイ(各298円)は、さくらんぼハイや生カボスハイなどを用意。

地酒も海鮮も驚くほど充実

(写真を選択すると大きな画像が表示されます)

スズランに来たら、飲み物はなんといっても地酒でしょう。県下の酒蔵だけでも、初孫銀嶺月山大山くどき上手雪むかえ男山栄光富士出羽桜上喜元あら玉など、豊富な品ぞろえ。お燗にも使う普通酒だって、寒河江(さがえ)の千代寿(小徳利400円)と、地元消費用の土地の味です。

さらに差し込みで限定の特定名称酒などが加わります。

お酒が豊富なだけではありません。日替わりの魚介類をみていただければ、きっと驚くはず。山形市という場所柄、太平洋と日本海、両方の海の幸が集まっています。アラのど黒は日本海、ホヤサンマ、穴子は太平洋。ものによっては500円程度とリーズナブルです。

海幸の次は、山形・里の幸。くるみ味噌のしそ巻、りんごの唐揚げ。名物の芋煮に玉こんにゃく、ダシ、だだちゃ豆など。

とにかく品数が多いです。常連さんのニーズに応えていたら増え続けてしまったパターンなのですが、どれも魅力的です。

カウンター席で先に始めていた常連さんの目的は、やっぱり魚介類。日中仙台で用事を済ませて山形に戻ってきたのだそう。仙台の鮮魚料理店に負けず劣らずのクオリティだと教えてくれました。

自家栽培野菜の青菜くるみ和え(390円)。大女将直伝、まさにおふくろの味。素朴な味で、しみじみと美味しい肴です。

郷土料理を肴に地酒秀鳳を

あわせる一杯は、地元の飯米「つや姫」でつくる秀鳳酒造場(山形市)の「秀鳳純米」。

米の旨味・甘味がぎゅっと濃縮されたような味わい。余韻が長く、そこに土地の食材をあわせれば旅情たっぷり。

りんごやウリの漬物。これもお店のお母さんたちのお手製です。りんご漬けは山形置賜(おきたま)地方の郷土料理なのだそう。長い冬の間に食べる貴重な果物として重宝されてきたものです。

気になるおつまみ「ひめごの炙り」(500円)。

いわしの幼魚を干したもので、全国的には干し白イワシの食べ方が知られていますが、これは広げて板状にしたみりん干しです。カタクチイワシのみりん干しとも違うもので、柔らかくしっとりジューシー。

大虎と黒ムツ

甘い肴には、辛いお酒を。大辛口純米大虎(寒河江市・千代寿虎屋)。寒河江は松尾芭蕉の句「雲の峰幾つ崩れて月の山」で知られる「月山」の雪解け伏流水が豊富に湧き出す地。水のおいしさを改めて感じる一杯です。

お刺身は次回のお楽しみとしましたが、のど黒(アカムツ)を試食させてもらうことに。晩秋から春が最も美味しくなると言われるのど黒。脂がのっていますが非常に上品な旨味であり、日本酒との相性が抜群によいです。山形市下条町のマルセイ醤油につけて頂きます。

山形内陸部ならではの郷土料理の数々とふたつの海の魚が楽しめる山形の大衆割烹「スズラン」。

旅や出張で訪れた際は、ぜひ選択肢のひとつにいれてみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名味の店 スズラン
住所山形県山形市香澄町2-10-5
営業時間営業時間
17:00~23:00(L.O.22:30)
定休日
不定休
開業年1973年頃
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