酒田「しえん」 常連さんおすすめの干あなご。土地の味に舌鼓。

酒田「しえん」 常連さんおすすめの干あなご。土地の味に舌鼓。

2019年10月7日

北前船の寄港地として栄えた港町、酒田。最上川の河口に位置する酒田港は現代も貿易の拠点であり、また日本海の幸が豊富に水揚げされる漁港でもあります。

平野と川と海で発展してきた酒田には、その豊かな環境でとれる素材を活かした郷土料理が数多あります。冬が近づくと食べたくなる酒の肴が最上川でとれる「ヤツメウナギ」もそのひとつ。

酒田の酒場では昔からヤツメウナギ・ヌタウナギ(穴子)をつかった料理が並びます。今回は、そんな酒田の穴子をはじめ旬の魚介類で楽しませてくれる老舗酒場「しえん」をご紹介いたします。

居酒屋「しえん」は街の中心部、酒田市役所や山居倉庫の近く。カウンター8席は地元の常連さんが集い、テーブル席や座敷は宴会を楽しむお客さんで賑わいます。

家族経営で笑顔の女将さんが迎えてくれる雰囲気は、日本海側の居酒屋に想うイメージそのものです。

酒田港にも近く、海からの北風に吹かれながら店にたどり着き、カウンターでほっとするこの瞬間。ビールが美味しいです。サッポロ黒ラベル(550円)で乾杯!

お通しは日替わりです。この日は酒田港であがる魚のすり身。甘く煮てあり、コクがお酒を誘います。

生ビールはサッポロ、瓶ビール(大瓶550円)はアサヒスーパードライ。サワーは氷彩で380円とお手頃価格。といっても、多くの方がきっと飲むのは日本酒でしょう。

1合400円からで、酒田の人気銘柄「上喜元」や「楯野川」、出羽の雪「和田来」などを楽しめます。東京で希少と言われる一部酒田の銘柄も、地元では普段飲み価格です。

全国的に盛んなクラフトビール。庄内はPRINCESS ALE (プリンセスエール)で、山形県産米「つや姫」が副原料に使用されているそうです。

漁協や市場などの漁業関連施設も近く、お隣は魚に携わる方でした。そんな風土と土地の人々の雰囲気に浸りながら、今夜の献立を考えていきます。ホワイトボードの内容はどれも魅力的です。1,500円の晩酌セットも、お酒杯と小鉢3品(刺身あり)と、地元の人がふらりと飲みに来る理由がわかる素敵な内容です。

定番の料理は種類控えめながら、名物の豚角煮や炒めものなど魚以外も楽しい内容です。

新鮮でこりこりとした湊町・酒田のヤリイカ刺し(600円)。透き通っています。さわやかな磯の風味が心地いい一品です。

さぁ、待っていました。これが「干あなご」。穴子といってもヌタウナギのこと。漁獲量は減ったそうですが、いまも最上川では穴子漁が行われていて、地元では味噌汁にして食べるのが一般的と聞きます。かば焼きはもちろん、乾燥させてぶつ切りにして焼く食べ方「干あなご」を酒の肴にするのがお酒好きの通の楽しみ方だそう。

くきゅくきゅとした食感と、噛むほどに旨味がでる皮、身、軟骨は絶品。これぞ大人味。

一升瓶から豪快に注がれたコップで飲む楯野川。米の旨味に包まれるよう。

ギンダラ焼(850円)は、身がしっかり固いのに、口に含むと溶けていくように脂がしみだしてきて、口の中が幸せになる一品。骨の髄までしゃぶるのよ!と教わりました。

常連さんに教わる「しえん」で食べるべき一品は、〆の特製焼きビーフン(600円)。海鮮たっぷり具だくさんで、ビールのおつまみにもなります。

女将さんを中心に地元の皆さんの会話にまぜてもらい、魚と酒の話に盛り上がる夜でした。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

しえん
0234-26-3911
山形県酒田市本町3-3-3
17:00~23:00(日定休・※祝営業)
予算2,600円