北前船寄港地として長く湊町として栄えた酒田は、魚好きには夢のような場所です。
庄内浜は年間で130種類もの魚介類が水揚げされています。春の鯛、桜鱒、渡り蟹、サザエ。夏の甘鯛、真子鰈、岩牡蠣。秋のおばこ鰆、ハタハタ、ブリにアオリイカ。冬のスケトウダラに紅海老、あんこう、鮃、ずわい蟹。
魚種が豊富で挙げればきりがありません。そんな土地だからこそ、多くの魚介類を少しずつ楽しめる寿司屋で一杯を楽しみませんか。
今回訪ねたお店は酒田駅から徒歩10分ほどの「鈴政」。1955年(昭和30年)創業の老舗です。
庄内地方は酒田と鶴岡、10万人都市が隣り合っています。2つの街をあわせた人口は人口25万人の同県県庁所在地・山形市に迫るほど。ある程度の規模がある街のため、鉄道でのアクセスも良好です。
コンパクトにまとまっている酒田市内。天候が良ければ徒歩でも十分に巡れます。明治26年にお米の貯蔵庫として建設された山居倉庫は、定番の観光スポット。一部は庄内米歴史資料館や観光物産館として整備されています。
米の街、魚の街。そして酒の街。初孫の東北銘醸、上喜元の酒田酒造、楯野川の楯の川、松嶺の富士の松山酒造など、酒蔵の多い酒田。山居倉庫では地域の日本酒を揃えたバーカウンターがあり、手頃な価格で有料試飲が楽しめます。熱々のどんがら汁やカニ汁を少しずつすすり、合間に日本酒をふくめばいい気分。
寄り道をしていたら、お昼酒の時間になってきました。鈴政へ。酒田まつり(山王祭)の主神・下日枝神社の参道沿いにあります。
分厚い一枚板のカウンターと、テーブル席、団体に対応した座敷というつくり。特等席は間違いなくカウンターでしょう。手入れの行き届いた寿司屋のカウンターは実に気持ちの良いもの。
まずは瓶ビール(サッポロ黒らベレル大びん700円)をもらって、トトトとビヤタンを満たし乾杯。
ちらし寿司(平日お昼のみ)は1,650円~。にぎりは上1,650円、特上2,200円、おまかせ3,300円。一品料理はめばるやのどぐろ、カレイなどの尾頭付きの煮魚、焼き魚、松茸の土瓶蒸しなど、旬の食材で用意されています。
取材時は、寒鱈の昆布締め、蟹の甲羅盛り、寒鱈汁など。
冬の酒田といえば、寒鱈の白子。お店は漁港までわずかな距離。地元で食べる鮮度抜群の白子は、プリっとした食感と爽やかな甘味、優しい旨味があります。
蟹のこうら盛り。お酒を飲みながら、ちびりちびりとつまむのに丁度いい一品。
あわせるお酒は、初孫の地元消費向け銘柄「初孫 玄の舟唄」。まずは冷で1杯。続いてお燗で一杯。温度でも美味しいお酒。とくにお燗にした際のまるみのある味わいは、白身魚との相性がよいです。庄内地方で作られる雪化粧というお米を使用しています。
握りは今回はおまかせで少しずつ。ひらめは粗塩と胡麻で味付けされていて、繊細な魚の旨味が楽しめます。つぶ貝のピンと張りのある食感は楽しく、いずれもネタが大きく、バランスはお酒飲みおつまみとして丁度いいもの。〆は鮮度抜群のガサエビで。
新鮮な日本海の幸が楽しめる酒田の街が大好きです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
寿司割烹 鈴政
http://www.suzumasa.com/
0234-22-2872
山形県酒田市日吉町1-6-18
11:30~LO13:30・17:00~LO21:30(日祝はLO20:00・基本無休)
予算5,000円