東京の繁華街や飲み屋街は多種多様で、それぞれ異なる雰囲気を持っています。
八重洲、神田、新橋、赤坂などの都心部から、上野、渋谷、新宿などのターミナル周辺、さらに中央線各駅や東急沿線、赤羽・十条といった住宅街まで、各地域には独自の魅力が広がっています。それぞれの街が持つ歴史的背景や、そこへ集まる人々の属性が色濃く反映されていることは非常に興味深いです。
とくに、東京下町・城東地域は、単なる住宅街の駅前飲み屋街という括りにはできない一種独特なものを持っています。梅割り、色付き焼酎ハイボール、もつ焼きなどの共通項を持つ店を中心に、個性的な飲食店が集まっていて、知れば知るほど奥深さに魅了されます。
このコラムでは、下町・城東エリアでもとくに人気の飲み屋街、立石・青砥・高砂で、お昼から楽しむことができるオススメの酒場を紹介します。再開発の影響で老舗数店が閉業・臨時休業等で営業していませんが、ほかにも魅力的なお店はたくさん営業中。さあ、お昼から飲みに行きましょう。
1,立石『倉井ストアー』
立石駅から徒歩8分ほど。『倉井ストアー』は店名の通り、ストアー(スーパー)です。スーパーのお惣菜や出来立ての料理をつまみに、売り物の缶ビール・缶酎ハイを楽しみます。
家族経営の比較的コンパクトなスーパーで、1958年に精肉店として創業し、やがて店の一部が食堂となり、お昼から飲める人気店となりました。今風に言えば、イートインコーナー。
お酒やお惣菜のラインナップは相当なもの。スーパーですから、飲食する人だけでなく、ご近所さんが普通に買い物にやってきます。
- 自家製チャーシュー:390円
- もつ煮込み:350円
- トンカツ:350円
- 手作りメンチカツ:350円
- 手作りハンバーグ:250円
- かつ煮:350円
肉料理が充実しており、生姜焼きなどは出来立てを提供してくれます。缶ビールをずらりと並べて過ごす、楽しいスーパーの惣菜お昼酒はいかがでしょう。
朝10時から営業。1,000円台で十分楽しめます!
住所 | 東京都葛飾区立石2-18-4 |
営業時間 | 営業時間 10:00~14:00 17:00~20:00 定休日 土曜日、日曜日、祝日 |
開業時期 | 1958年 |
2,立石『四ツ木製麺所』
ストアーに続いて、次は製麺所。立石のお昼飲みはバラエティ豊かです。『四ツ木製麺所』は”飲めるうどん屋さん”。足踏み仕上げの店内製麺のうどんが看板料理ですが、20種類近い海鮮を中心としたおつまみや、各種アルコール飲料も揃っています。
店名の通り、もともとは四ツ木で製麺所をやっていた店主さんが開いたお店。立石で〆のうどんが食べたいというニーズに応えて飲食店を開きました。
ですが、そこはやっぱりノンベエが集まる街・立石。うどんを食べる前にもう少し飲みたいという人たちの気持ちにしっかり寄り添ってくれています。サッポロラガービール(赤星)が人気で、それにぴったりあうつまみは自家製のマグロツナサラダ(480円)です。
蛍光灯が照らす簡素な店内ですが、飲み始めるとこれが意外と居心地がよく、ついついお酒が進みます。ビールは赤星、お酒は櫻正宗、各種チューハイの中には、下町・城東らしいエキスを入れる焼酎ハイボール(370円)もあります。
飲んだ体に嬉しいしじみうどん(850円)を〆にいただきます。濃厚なダシとコシの強いうどんに大満足です。
- お刺身3点盛:980円
- アジフライ:380円
- めひかりの天ぷら:600円
- 自とり天:400円
住所 | 東京都葛飾区東立石2-11-7 |
住所 | 営業時間 [水〜金] 11:30〜14:30 17:30〜20:15(L.O) [土・日・祝] 11:00〜19:15(L.O) 日曜営業 定休日 月火曜日(祝日の際は営業し、水曜日がお休み) |
創業 | 2014年 |
3,立石『宇ち多゛』
立石で最も行列ができる店『宇ち多゛』。酒場好きならば一度はその名を聞いたことがあるような、東京を代表する酒場のひとつです。開店は14時(平日)。その時間に来ても、すでに最初に店に入れる人数以上の列ができているため、並んでも二巡目になることも。ですが、あまり長居する店ではありませんので酒場としては回転早め。
人気の理由はなんといっても、いまでも安くて美味しいモツの数々。メニューは、下町・城東のもつ焼き屋の基本形とも言える、もつ焼き・生(ボイル)・煮込みの3種類と、おしんこ。とくにタン生は他では食べられないような味。
回転寿司のように皿単位で計算するので、食べている方もわかりやすいです。
宝焼酎にちょこんと梅やぶどうエキス(無果汁)をたらして飲む梅割りと、新鮮な豚モツのペアリングはきっとハマります!
なお、宇ち多゛は大勢のお客さんが楽しめるよういくつかお約束があります。スムーズに楽しむための解説を下記の記事でまとめていますので、訪問前に一度ご確認ください。
住所 | 東京都葛飾区立石1-18-8 仲見世商店街 |
営業時間 | 14:00~19:00(土は10:00~14:00・日祝定休) |
開業年 | 1946年 |
4,立石『ブンカ堂』
店主さんはもともと近くのおでん店で働かれていた方。玩具産業の街・立石の街にあったおもちゃ屋さん「文化堂」の3代目で、おでん店を独立後、家業の名前を継承し、酒場として『ブンカ堂』をリスタートされました。
15時の開店にあわせて、多くのファンが訪れますが、常連さんに偏ったサービスはなく、初めての人も安心して利用できる優しい空気感が包むお店です。店主さんの人柄を反映したゆったりとしたムードの中で飲むお酒は、びっくりするほどセンスがいいです。
ワインと日本酒を中心に、トマトのジントニックなどいくつかオリジナリティあるチューハイ・カクテルも用意されています。
料理は一人分サイズで、気の利いたものばかり。店は非常にコンパクトで、お客さん同士の”場”と”時”の共有感が強め。メインでしっかり飲むよりは、本格的に飲む前のゼロ軒目にもぴったり。
住所 | 東京都葛飾区立石4-27-9 |
営業時間 | 月~土、祝前日: 15:00~翌0:00 (料理L.O. 23:00 ドリンクL.O. 23:00) 日、祝日: 15:00~22:00 (料理L.O. 21:00 ドリンクL.O. 21:00) 月曜~土曜日は24時まで、日曜、祝日は23時まで営業しております。 定休日:不定休 |
創業 | 2018年 |
WEBで予約 | HOT PEPPER |
5,青砥『もつ焼き小江戸』
平日は15時、土日は正午開店。開店とともに次々お客さんがやってきて、あっという間にテーブルがほぼ埋まる大変な人気店です。
商店街から一本入った車が入れない路地の先、しかもビルの二階という、事前に知らなければ酒場があることは気づかない場所にあるにも関わらず、この賑わいはすごい!
看板メニューはもつ焼き、もつ刺し、煮込み、そして焼酎ハイボール(小江戸ハイボール)です。
もつ焼きは塩、タレ、カラタレの3種類から選べ、一皿2本単位ででてきます。かなり大きく、キレイに串打ちされているため肉汁がたっぷり、度数高めの焼酎ハイボールがグングン進みます。酎ハイだけでなく、クラフトビール(タップマルシェ)やワインなど、かなり幅広い取り扱い。
もつ焼き激戦エリアの葛飾区にありますが、他店との違いはサイドメニューの豊富さ。むしろもつ焼きは数本にして、あとは刺身やじゃがカレーなどのサイドメニューメインにしよう、なんて日も。寿司(鉄火巻300円、トロタク巻350円など)が選べるときもあり、お昼から一軒でしっかり満喫できます。
住所 | 東京都葛飾区青戸3-39-3 優和ビル 2F |
営業時間 | 営業時間 [水・木・金] 15:00~21:00(L.O.20:00) [土・日] 12:00~19:00(L.O.18:00) 日曜営業 定休日 月曜日・火曜日 |
創業 | 2014年 |
6,青砥『一笑一杯』
大手居酒屋チェーンを独立した夫婦が営む、青砥駅前のアットホームな酒場『一笑一杯』。開店は11時30分と早く、中休みなく夜まで営業。日中は定食もだしています。刺身や旨肉大根煮、チキン南蛮などから選べるメイン2品と、ごはん、味噌汁、小鉢がついたチョイス定食880円が人気です。これに生ビール(サッポロ生ビール黒ラベル)をつけて、食事がてらの昼飲みもOK!
おすすめの理由は、明るくて元気を貰えるお店の皆さんの笑顔。一階のコの字カウンターの席に座り、それとなく話しかければいろんな話題で盛り上げてくれます。
もちろん、料理やお酒も魅力的。良い鮮魚店との関係があるそうで、刺身は上等。女将さんの実家が精肉店ということで、肉も強い。
カウンターに埋め込まれている割材を冷やしたプールから炭酸水やレモンサワーの割材などを取り出し、キンミヤ焼酎を別途もらって自分で酎ハイをつくるのも楽しみのひとつ。
また、生ビールの提供品質が非常に高いことでも知られています。
住所 | 東京都葛飾区青戸2-7-15 1F・2F |
営業時間 | 営業時間 平日11:30~22:00 金曜日、土曜日11:30~23:00 定休日 日曜日 |
創業 | 2019年10月1日開店 |
7,高砂『御食事処ときわ』
下町を中心に点在する大衆食堂「ときわ」。一部を除き各店は暖簾分けの関係にあります。そのうちの一軒である、京成高砂駅近くの『御食事処ときわ』も素晴らしい昼・食堂飲みスポットです。見てください、このホワイトボードメニュー。飲みたくなりませんか。
お昼営業は11時30分から15時。一旦中休みがありますが、それでもお昼から飲んでいるお客さんは多く、刺身3点やアジフライ、納豆オムレツなどをつまみにして飲んでいる人多数。
- 刺身三品盛(まぐろ・平目・ほたて):900円
- くじらの刺身:850円
- たこのぶつ切り:680円
- かつおの刺身:750円~
- イカゲソの天ぷら:500円
- いわしの生姜煮:450円
それもそのはず、食堂ながら、八海山、〆張鶴、雪中梅、楯野川、越乃景虎、上喜元、浦霞など、地酒が豊富に用意されていて、しかも1杯480円~ととても良心的な値段設定です。
メゴチ天など、季節や仕入れによって変わるおつまみ。今日は何があるかな?と楽しみにして通いたくなります。
住所 | 東京都葛飾区高砂3丁目8-2 |
営業時間 | 営業時間 11:30~15:00 17:00~22:00 日曜営業 定休日 水曜日 その他不定休 |
気になるお店は見つかりましたか?
ほかにも個性的な酒場がこのエリアにはたくさん存在します。再開発が進行中ではありますが、この地域はまだまだ昼飲みの聖地としてその魅力を保ち続けています。ぜひ一度足を運んで、地元の飲み屋さんを探索してみてください。新たな発見や楽しい酒場時間が待っています。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)