[列車で飲みたい]大正11年製の蒸気機関車に引かれて、球磨川沿いで飲む

[列車で飲みたい]大正11年製の蒸気機関車に引かれて、球磨川沿いで飲む

2020年2月25日

お酒と鉄道は好相性。旅先で、明るいうちから焼酎片手にのんびり汽車旅なんて最高ですよね。

熊本県の八代駅と人吉駅を結ぶ肥薩線は、球磨川沿いを縫うように走るローカル線。1909年(明治42年)に全線開通した肥薩線は、開通当初は鹿児島本線として、九州を南北をつなぐ陸上交通の大動脈としての役割を果たすことになりました。

1927年(昭和2年)になると、水俣やさつま川内を経由する新たなルート(現JR鹿児島本線・現肥薩おれんじ鉄道線)が完成し、人吉まわりの峠越え路線はローカル線となりました。

明治時代に開通した歴史ある鉄路と、熊本米焼酎『球磨焼酎』や温泉で知られる人吉の町は、多くの観光客を集めています。

そしてなによりも注目は、この区間を走る列車「SL人吉」号です。九州で唯一走る蒸気機関車が引く、昔ながらの客車列車の旅を、お酒とともにご紹介します。

(取材協力/九州旅客鉄道株式会社)

 

球磨川が街の中心を優雅に流れる山間の温泉街、人吉。鹿児島側、八代側、どちらからも険しい峠や細い渓流沿いでのアクセスが必要ながら、人吉盆地は思いの外開けています。豊かな水と広い土地が米作りを可能にし、球磨の米焼酎をうみました。

 

806年建創の青井阿蘇神社。1200年の歴史があり、日本で最も南に位置する国宝建築物。かつてこの地を治めた相良藩の氏神です。

 

春をすぎると、禊橋の池は一面蓮に覆われて、より美しい雰囲気になります。

 

人吉市の玄関口、JR人吉駅。熊本方面からの観光特急列車や、大正時代の鹿児島本線ルートを走り、鹿児島方面へ向かう観光列車が発着しています。

 

人吉はかつて峠越えに挑んだSLや鉄道マンたちがいっときの休憩をする場所でした。そのため人吉駅には隣接して旧国鉄人吉機関区(旧JR人吉鉄道事業部)があります。現在も肥薩線などを走る列車の留置や、SL人吉の点検などで使用されています。

 

1911年(明治11年)築の機関庫。球磨地方の石材を組み上げたもので、現役最古の石造機関庫です。現在は、SL人吉用の客車の洗浄・点検などに使用しているそうです。

 

蒸気機関車を方向転換するために用いられる転車台(ターンテーブル)。SL人吉の転車シーンは見学ができます。

 

さてさて、そろそろ列車の準備が整ったようですので、人吉駅1番ホームへ。

 

黒い客車を3両従えて、八代側の先頭には、ピカピカのSLが蒸気を漂わせながら待機しています。

 

同行されたJR九州の方によると、この蒸気機関車は国鉄(鉄道院)8600形で1922年(大正11年)製。製造から約1世紀になります。現役時代は九州各地で活躍したそうです。

 

連結されている客車は、両端が展望席になっています。

 

先頭(機関車側)では、力強く大地を蹴る頼もしいSLの姿を眺めて飲むことができ――

 

最後尾では、空に漂う機関車がはいた煙と、美しい九州の流れる景色が楽しめます。

 

球磨川沿いを結構な速度で快走するので、まるで渓流下りをしているような気分になります。

 

昔の汽車旅の旅情を感じる、向い合せのボックス席が並ぶ車内で、思い思いに旅を過ごします。人吉を14時38分に発車した列車は熊本駅到着17時14分。ゆったりとして贅沢な時間の使い方です。

 

人吉駅のキヨスクで缶ビールや缶酎ハイを購入。あとは列車に任せて、ぼんやり景色を眺めてお酒を飲んで…。

 

今どきの列車にはない、レールの上を転がるだけのような乗り心地と、時折、進行方向から引っ張られるような力によって軽い揺れがあり、それがだんだん眠気を誘ってきます…。

 

ウトウトしそう…とおもったら、列車は一旦休憩のため停車。肥薩線坂本駅。約9分の停車で、お客さんたちも機関車の様子を見に集まってきます。

 

機関士さんは、停車中の間も軸の温度を確かめたり、油をさしたりと忙しそう。

 

2号車にはビッフェコーナーがあり、球磨焼酎(1本410円)や地ビール、酎ハイ類などが購入できます。せっかくのSLの旅ですから、なにかご当地のおつまみも買いましょうか。

 

駅弁も販売中。機関車の形式8600形から、お弁当の名前も86弁当です。

 

車内のビッフェで選んだおつまみは、馬味倶楽部 手作り炭焼馬さし ひとくち。熊本の生あげ醤油と赤酒に漬け込み炭火で炙ったもの。ビールと合わないはずがありません。

 

転倒防止のボトルスタンドをつけてくれるのが嬉しい!車内で購入の小町麦酒(熊本クラフトビール)のペールエールは、フルーティーさとわずかな苦味が心地よく、スチームロコ(SL)の煙の香りでより美味しく感じます。

 

差し込む光でテーブルが飴色に輝きます。

 

日本の里山の風景って、どうしてこんなに心を落ち着かせるのでしょう。なんて考えながら、ちびりと飲むビールがまた美味しいものです。

 

鹿児島本線に入り、SL人吉はラストスパート。となりに九州新幹線が現れたら、そろそろ終点の熊本駅です。

2時間以上の乗車時間ですが、もっと乗っていたいというのが正直な感想です。盆地、渓流沿い、熊本平野を駆け抜けて、ロマン感じる列車は、熊本駅6番ホームに定刻に到着です。

 

まだ飲み足りない?

というときは、JR熊本駅高架下に誕生した「肥後よかモン市場」へ。おみやげ・特産品売り場やカフェ、和食店だけではありません。ここには、九州の人が大好きな、『角打ち』があります。

 

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うしじま酒店

球磨焼酎飲み比べセット[35ml×3杯](682円税別)、熊本の焼酎(380円~)、神泡のザ・プレミアム・モルツ(480円)、角ハイボール/ジンビームハイボール(380円)、おつまみは阿蘇のジューシーソーセージ、辛子蓮根(360円)、丸天(350円)など。

千円で軽く飲んで摘んで楽しめる酒販店併設の角打ちカウンターがあります。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/九州旅客鉄道株式会社)

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SL人吉
熊本・人吉間を1往復
運転日:3月から11月の主に週末運転。詳しくはJR九州のウェブサイトやJR時刻表でご確認ください。
JR九州公式サイト https://www.jrkyushu.co.jp/trains/slhitoyoshi/

肥後よかモン市場公式サイト うしじま酒店
https://higo-yokamon.jp/floor/ushijimasaketen/