浅草の北側、南千住から千束、橋場あたりをぶらりと歩いてみると、まだまだ“まちの酒屋”が息づいています。
再開発と高層マンションが進む一方で、路地には木造の長屋や昔ながらの商店が残り、下町らしい暮らしの匂いが色濃く残る一帯です。
そんな地域に、ぽつりぽつりと角打ちできる酒屋が点在しています。観光エリアの喧騒からは少し離れた場所にありながら、どこも徒歩10分圏内。気張らず、飲み疲れず、それでいて心に残る4軒です。
休日の午後、昼酒の許されるちょっと贅沢な時間。地図を片手に、角打ちと下町をめぐるミニトリップに出かけてみませんか。

モデルコースは、東京メトロ日比谷線の入谷駅、または三ノ輪駅を下車し、菊本屋→水上酒店→淀屋酒店→亀屋酒店というルートです。
山谷、吉原。時代の層が積み重なった土地には、今も濃度のある人と酒の風景が残っています。
1,菊本屋(台東区千束)

1902年創業、浅草北部・観音裏に佇む老舗の酒屋が2022年に角打ちスペースを開設。
店舗とは別棟で、完全着席スタイルの静かな空間です。明るく清潔な店内では、日本酒や国産ウイスキー、焼酎などが丁寧に提供され、価格も良心的。現在は生ビールの提供はありませんが、そのぶん一杯ずつのお酒にこだわりが感じられます。
近くに銭湯があり、入浴後に立ち寄る若いお客さんの姿も。せんべろ好きにもうれしい、大人の角打ちです。

ホッピーはこだわりの3冷スタイル。

お酒は明石の江井ヶ嶋酒造を定番としていて、銘柄への思いも強い。

合同酒精やポッカサッポロの珍しいリキュールや割材が豊富で、駄菓子屋感覚で珍しいお酒が楽しめます。
営業時間は、土日は14時開店で昼飲み可能、土曜日は23時過ぎ、日曜日は19時閉店。平日は18:30から23時過ぎまで。
2,水上酒店(台東区三ノ輪)

戦災を免れた木造建築が今も健在。100年を超える歴史を持つ三ノ輪の角打ちです。
店の中央に大きなテーブルがひとつ。地元の大工さんがつくったというそのテーブルを囲み、女将さんとの会話や他のお客さんとの交流が自然と生まれます。
酒の種類は多くありませんが、缶ビールや酎ハイが200円台で味わえ、気取らない雰囲気に癒やされます。長年暮らしてきた常連さんもいれば、近年増えた引っ越し組も。
まさに“暮らしのなかの角打ち”。

この冷蔵庫に入っているものが角打ちで飲めるお酒。200円台で楽しめます。

電話番号が4桁時代の通い徳利や角樽が飾られており、店の歴史が感じられます。

老舗の角打ちながら、お酒の種類は頻繁に入れ替わっていきます。最新の珍しい缶が味わえることも。

定番の宝缶酎ハイ。

日本酒は天鷹のみ。プロセスチーズといっしょにいただきます。


女将さんの人柄が素敵で、常連さんも朗らかな方ばかりなのでついついお酒が1本増えてしまいます。

「サッポロサワー氷彩」、お願いして入れてもらいました。(飲んでね)
飲酒可能時間は、朝10時から19時。日祝定休
3,淀屋酒店(荒川区南千住)

泪橋交差点のすぐそば。山谷エリアの入り口に構える、硬派な空気を纏った角打ちです。
ベテランのご夫婦が切り盛りする店内は、広々としていて簡素ながらとても清潔。冷蔵庫から好きな酒を取り出し、プシュッと開けてその場で楽しむスタイル。鉄道や物流、インフラ関係の方が多く、朝9時からの営業は夜勤明けの常連さんにもうれしい配慮。
若い一人客にはややハードルが高く感じられるかもしれませんが、最初の一杯を手にしたとたん、肩の力がふっと抜ける居心地のよさがあります。


缶酎ハイには、氷とグラスを用意してくれます。こういうちょっとしたサービスが嬉しい!

おつまみは乾き物と缶詰。正統派の渋い店。
営業時間は2部制で、朝9時から13時と、15時30分から20時まで。
4,亀屋酒店(台東区橋場)

浅草北部・橋場の住宅街にたたずむ創業100年超の老舗酒屋。
2024年、アパレル出身の4代目が加わり、角打ち営業をスタート。白と木材を基調にしたロの字カウンターの内装は、洗練されながらも温もりを感じる空間です。
ビール、日本酒にくわえ、缶チューハイやRTDも取り揃え、価格も手頃。味噌や玄米など、発酵食品を扱う“本来の酒屋らしさ”も残しており、地域に開かれた場として若い世代の来店も増えています。
ペット連れもOKの外台もあり。


日本酒飲み比べが楽しい。

クラフトビールや樽生もありますが、昔ながらの角打ち同様、手頃な缶ビールや酎ハイも立ち飲みで楽しめます。
営業時間は、11:00~20:00で、月曜日が定休です。
浅草の喧騒を離れた北部エリアには、まだ“まちの酒屋”が生きています。三ノ輪から千束、橋場まで、歩いて巡れる4軒の角打ちは、どこも地域とともに時を重ねてきた店ばかり。休日の昼下がり、缶ビール片手に、角打ちのあるまちを歩いてみませんか。