鹿児島港から桜島を結ぶ桜島フェリーは高頻度で運行され地元の人の大切な足として活躍していますが、観光にもオススメの乗りものです。船内には名物のうどん屋「やぶ金」というお店があり、このうどんが酒の肴にぴったりなのです。
今回はそんな桜島フェリーで錦江湾クルーズを楽しみながら、飲み旅を楽しみたいと思います。
桜島フェリーは全国でも珍しい公営のフェリーで、路面電車や市内周遊バスが発着する鹿児島港から桜島桟橋までをおよそ15分で結ぶ航路。錦江湾を横切るので行きは正面に桜島。帰りは鹿児島市街を海から一望でき、桜島に用事がなくと鹿児島で時間があればぜひ一度は乗って損はない乗りものです。
船室はゆったりとしたベンチシートのほか、潮風にふかれ桜島を眺めるデッキも魅力。ここで「プシュッ」とあけて、ゴクゴク飲めばいつものビールもより一層美味しくなる!
桜島フェリーには売店もありますが、残念ながらアルコール類の販売はありませんので、乗船前までに忍ばせておきましょう。※飲酒・飲食は禁止されていません。
売店の向かいにあるこの渋い佇まいの暖簾が「やぶ金」です。駅の立ち食いそば屋と同じようなスタイルで、注文したらすぐに提供されます。桜島フェリーは何隻も航行していますが9:00〜18:45(桜島港発)の便ならばすべてで営業しているので安心です。1980年代から出店し、いまや鹿児島を代表するソウルフード。
鹿児島港にあるバックヤードで仕込んだ出汁と麺を補充していて、船内はいつもどこかお出汁の香りが漂います。
かけ、月見、てんぷらの3種類があり、一番人気のかけには鹿児島らしくつき揚げ(さつま揚げ)がのっています。気持ち多めに七味をふりかけ、ずるずるとすすってビールを飲めばいい気分。前を見れば桜島、旅のお酒はおいしいです。
麺にこしはなく、ちゅるっとした食感。トビウオやかつお節など6種類の魚介系の出汁は、複雑な旨味があり、うどんを食べきったあとの汁が「ぬき」感覚で焼酎とよく合います。
ごちそうさま。
桜島フェリーは目的なく往復するだけで楽しい
鹿児島港から15分間隔で出港していく桜島フェリーは時間を気にせず向かえば乗れます。鹿児島港を離岸し、めざすは桜島。
右が鹿児島、左が鹿児島中央。山がぎりぎりまで迫っている狭い場所に都市が密集しているのがわかります。
桜島港に到着。料金は行きも帰りも桜島側の改札で支払い。片道160円ととっても安い。
鹿児島港フェリー乗り場から市街まではやや距離があり路線バスが結んでいます。
駅前にはお酒屋さんが一軒ぽつんとあり、桜島産を中心とした乙類焼酎がずらりと並んでいます。5分ほど歩けば道の駅桜島やローソンもありますが飲み屋はありませんので、ノンベエの私はとくにすることがなく。
ただ、眺めは素晴らしいです。日本とは思えない荒々しい桜島の姿が間近にあります。現在も噴火を繰り返す桜島、ちょっぴり緊張します。
月読命(ツキヨミノミコト)をはじめとする6柱の神様が祀られている桜島で一番大きな「月読神社」はフェリー乗り場と目と鼻の先。溶岩石やヤシの木の中にたつ社は独特な雰囲気。大正噴火で溶岩に沈んだ過去を持つそうです。
振り向けば錦江湾。パワースポットとして人気があるのもうなずける大地と信仰の力強さが感じられます。
美味しいうどんとお酒を飲みながら、上陸を含めて約1時間の桜島体験。市街観光のついでにいかがですか。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ Special Thanks/九州旅客鉄道株式会社)