酒場案内人の塩見なゆです。
「観光地の飲食店には地元の人は行かない」なんて話はありますが、浅草は昔から東京在住の人も遊びに行く身近な繁華街です。歴史ある街ですから老舗の飲食店が多いのはご存知の通り。浅草寺参拝やショッピングで訪れる人が多い街なので、老舗・名店であってもお昼休みをせずに営業する店が非常に多いのが特長です。
数ある「お昼から飲める店」の中から、今回は老舗のみを選びました。
目次
1,『神谷バー』
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住所は浅草1-1-1。一等地に建つ神谷バーは日本における西洋風大衆居酒屋の原点といえる存在です。日本で初めて「バー」を店名につけたことでも知られています。
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創業者の初代神谷傅兵衛が考案した「電気ブラン」はいまも神谷バーを代表するドリンクです。対岸にアサヒビールの本社があり、電気ブランとアサヒビールは「相思相愛」をキャッチコピーに、両方あわせて飲む提案が行われています。
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バーといいつつも料理はバリエーション豊富です。ハンバーグやピザなどハイカラなものから、焼鳥、煮込みまで揃っています。
一階が満席でも二階は座れることが多いのでご安心を。初めての方もぜひ訪ねてみて欲しい浅草の大定番昼飲みスポットです。
住所 | 東京都台東区浅草1-1-1 1F・2F・3F |
営業時間 | 営業時間 11:00~21:00(L.O.20:30) 日曜営業 定休日 火曜日(祝日は営業で翌日代休) |
開業年 | 1880年 |
2,『ニュー浅草本店』
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かつて都内各地にあった「ニュー浅草」ですが、現在は浅草の本店のみが営業しています。ここの特長は、一人飲みから宴会まで幅広く対応してくれる「使い勝手の良さ」です。
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料理は安くて品揃え豊富。お酒も手頃で、ちょっとした飲み会ならばニュー浅草を選んでおけば間違いありません。チェーン店的な用途の酒場を探しているけれど、全国チェーンの居酒屋はちょっと…なんて方にもオススメ。
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名物はたぬき豆腐です。熱せられた柳川鍋でグツグツとしながら運ばれてきます。
住所 | 東京都台東区浅草1-35-3 |
営業時間 | 11:30~21:30(日定休) |
開業年 | 1959年 |
3,『酒冨士』
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70年以上続く老舗居酒屋ですが、お昼から通しでやっています。一階は名物女将が仕切る味わい深いカウンター席が奥へと続いています。雷門界隈の喧騒が嘘のように穏やかな時間が流れており、座るとホッとします。
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昔ながらの居酒屋メニューで、あれもこれも食べたくなりますが、おすすめはイワシ刺し。
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脂がのった大羽イワシをキレイに盛り付けてくれます。派手さはないものの正統派の料理の数々ですから、一度利用したら気に入って浅草の行きつけになるかもしれません。
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正一合とかかれた徳利が似合う一枚板のカウンター。こんな居酒屋がお昼からやっているのが浅草という街の素晴らしいところです。
住所 | 東京都台東区浅草1-6-1 |
営業時間 | 11:30~22:00(土日祝は21:30まで・月定休) |
開業年 | 1950年代 |
4,『並木藪蕎麦』
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かんだやぶそばと並ぶ、薮そばの代表的な存在。大正2年の創業。誰もが認める老舗蕎麦店です。蕎麦の名店としてガイドブックに必ず紹介されている店ですが、蕎麦だけでなく「蕎麦前」も大変魅力的なのです。
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昼食時から過ぎた午後2時くらいになると、地元のご隠居さんがふらりとやってきて、樽の菊正宗をきゅっと飲みながら板わさや鴨抜きをつまみ、〆にざるそばを食べていく姿がみられます。
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日本酒は樽詰めの菊正宗で、一般的に流通している瓶詰めの樽酒ではなく、樽のまま店に届けられているもの。
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数多の食通を唸らせてきた並木薮そば。〆のお蕎麦まで、すべてが楽しい一軒です。
住所 | 東京都台東区雷門2-11-9 |
営業時間 | 11:00~19:30(木及び第二水曜日定休) |
開業年 | 1913年 |
5,『米久本店』
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東京在住の方にも、ぜひ「食べに」ではなく”飲み”に行ってほしい一軒。米久本店は比較的リーズナブルな価格ながら上等な牛鍋(すき焼き)が食べられる、筆者も大好きな一軒です。創業は明治19年!
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上の牛鍋が1人前3,160円と安い!お酒も充実しています。
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5,000円程度の予算でお腹いっぱい牛肉が楽しめ、ほろ酔いになれる素晴らしいお店です。この価格でもしっかり仲居さんがつくってくれるのも嬉しいポイント。
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お肉の色がほんのり変わるくらいで、今度は溶かした玉子を潜らせ、ひとくち。割り下の味付けは、これぞ東京のもの。長年、同店が贔屓にしてきた灘の銘酒・櫻正宗が進みます。
住所 | 東京都台東区浅草2-17-10 |
営業時間 | 営業時間 12:00~21:00(L.O.20:00) 日曜営業 定休日 水曜日 |
開業年 | 1886年 |
6,『水口食堂』
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浅草で昼飲みといえば、まずはココ!浅草6区エリアで70年以上続いてきた老舗の大衆食堂です。個人経営の店で、笑顔が素敵な名物女将が出迎えてくれます。
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名物はイリ豚とマグロブツですが、肉豆腐やフライ類も美味しく、あれもこれも食べたくなります。
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土曜の午後、競馬を楽しむ紳士はそっと瓶ビールを傾けながらテレビに夢中です。激しく競馬ムードというわけでもなくて、その横では家族連れが定食を食べているし、ささっとカレーライスを食べていく会社員もいます。
浅草の混みあう人気店に並んで慌ただしく食べるのも、それはそれで楽しいけれど、こういうお店でのんびりするのもよいものです。
住所 | 東京都台東区浅草2-4-9 |
営業時間 | 営業時間 [月・火・木・金・土・日] 10:00~20:30(L.O.20:00) 日曜営業 定休日 水曜日、月2回不定休 ※最新の定休日情報は公式Twitterアカウントで確認できます。 |
開業年 | 1950年 |
7,『ぼたん』
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ぼたんは浅草駅近くで通し営業する「飲める町中華」です。開業は終戦間もない1948年(昭和23年)。現在は3代目と4代目が厨房で腕を振るっています。
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お酒のメニューが充実していると、「ここは飲んでいいんだ」と安心しますよね。ビールはもちろん浅草近くに本社を構えるアサヒの生ビール。
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定番の餃子や人気のオムライスをつまみに、昼食を兼ねた一杯はいかがでしょう。
老舗だからと店の歴史を謳うわけではなく、誰もが入りやすい庶民派の町中華です。
住所 | 東京都台東区花川戸1-8-1 |
営業時間 | 営業時間 11:00~20:50(L.O.) 日曜営業 定休日 金曜日・他不定休あり |
開業年 | 1948年 |
8,『浅草ときわ食堂』
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ここはいまも営業を続けてい東京都指定民生食堂の一軒でもあります。
一大歓楽街・浅草で、現在もどっしり構えた食堂が続いている。そんな背景もお酒を美味しくします。
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店内に掲げられた東京ときわ会のプレート。浅草の同店が現存する最古のときわ食堂です。ここに来れば、東京各地に点在するときわ食堂の関係を知ることができます。
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名物は天然アジフライや銀だら照焼など。雷門から徒歩20秒の場所にあるのに、価格は日常的に利用できるお手頃価格なのも嬉しいポイントです。通いたくなる落ち着いた雰囲気で、観光客よりも地元の方の利用が多いイメージ。
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おすすめは豚皿。東京らしい濃く甘い割り下をたっぷり纏った豚肉を生玉子にくぐらせ、すき焼きのようにしていただきます。
住所 | 東京都台東区浅草1-3-3 |
営業時間 | 9:00〜22:30(土日祝は8:30~・水定休) |
開業年 | 1922年(現店舗は1946年開業) |
9,『四方酒店』
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朝からやっている四方酒店。観光向けもよいけれど、地元の人が飲む場所で浅草の風情にひたりたいと思いませんか。ここ「四方酒店」は、正統派の角打ち。近隣が生活圏の常連さんたちが一寸一杯ひっかけていく酒屋さんです。
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浅草観光の合間に、下町の粋な角打ち文化に触れてみてはいかがでしょう。
住所 | 東京都台東区雷門2-1-14 |
営業時間 | 9:00~19:30(日定休) |
開業年 | 1955年 |
10,『浅草サンボア』
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大正7年に神戸・花隈で喫茶店として創業し、やがてバーに業態を変え、親族や弟子が暖簾別けで店を増やしてきた老舗バー「サンボア」。現在16店舗が営業していますが、そのひとつが『浅草サンボア』(13号店)です。
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営業時間はとびきり早く、なんと14時からカクテルを楽しむことができます。
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本格的なオーセンティックバーで、提供されるカクテルはどれも正統派のスタイルです。
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暖かい季節は浅草散策後の一休みに立ち寄り、フローズンダイキリなどで体を冷やすのもいいものです。
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名物は薄口グラスに氷を入れずにつくる角(W)ハイボール:1,210円です。
静かな空間で、背筋を伸ばして飲む角ハイボールは、いつもの角とはまったく別物。若い方の一人飲みでも、ぜひ挑戦して欲しい大人の空間です。
住所 | 東京都台東区浅草1-16-8 |
営業時間 | 営業時間 14:00~23:00 (L.o.22:30前) 日曜営業 定休日 水曜日(祝日の場合は営業し、前日or翌日休業) |
開業年 | 1号店(神戸花隈)は1918年 ※浅草サンボアは2011年開店 |
気になるお店はありましたか
飲み屋街というイメージがない浅草ですが、人が集まる場所にはお店あり。今度の休みは浅草で美味しいものを食べて飲んで、ほろ酔いで街散策を楽しまれてみてはいかがでしょう。
他にもこんな老舗のお店でお昼から飲めます。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)