浅草雷門の2軒隣りにある『ときわ食堂』は、創業100年を迎えた東京を代表する大衆食堂のひとつです。朝から夜まで休みなく営業し、浅草で働く人の胃袋を支えてきました。天然あじフライが名物ですが、ほかにも王道の食堂グルメが勢ぞろい。場所柄、お昼からお酒を楽しむ人も多いです。
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観光地の真ん中に、揺るぎない大衆食堂あり
ここは浅草寺参道。浅草は2018年には953万人が訪れた日本有数の観光地です。2019年までは外国人観光客の姿が多かったですが、昨今の状況で人の流れは激変しました。2022年春頃からは週末を中心に、再び観光客の姿が戻ってきました。最盛期の賑わいとまでは言えないものの、活気ある街並みが嬉しいです。
平日でも雷門前はこの人だかり。休日は立ち止まれないくらいにまで混雑します。
外観
さて、雷門前の名物といえば、江戸時代から続く常盤堂の「雷おこし」です。そして、この常盤堂の隣にある食堂が、今回ご紹介する『浅草ときわ食堂』。創業は百年前の1922年(大正11年)です。店を営むご主人は4代目。創業時から家族代々で暖簾を受け継いできました。
観光地のまん真ん中に、チェーン店や観光客向けご当地料理をだす店ではなく、大衆的な食堂メニューを揃える昔ながらの食堂が続いていることは、奇跡といっても過言ではないでしょう。そぞろ歩く観光客には気づかれないかもしれませんが、すごい食堂なんです。
ときわ食堂とは
ときわ食堂は、浅草の「常磐花壇」(現存せず)の食堂部門だった明治40年代の「ときわ食堂総本店」(現存せず)が原点です。
この「ときわ食堂総本店」からは6つの店舗がうまれ、浅草ときわ食堂は第5支店として、1922年(大正11年)に業平の地で創業しました。その後、千住大橋への移転を経て、1946年(昭和21年)に現在の場所に移りました。(参考:株式会社ときわ 会社概要)
浅草ときわ食堂(第5支店)からは、次々に20軒の独立(暖簾分け)が行われ、こうして東京下町を中心に各地に「ときわ食堂」が広まりました。
ときわ食堂各店は一部を除き資本関係のない個人店ですが、「東京ときわ会」という暖簾会で繋がっています。浅草ときわ食堂は、「東京ときわ会」の額では雷門本店と記載。
内観
浅草のときわ食堂は、現存する最古のときわ食堂です。そう聞くといぶし銀のレトロな店をイメージするかもしれませんが、2010年のリニューアルでモダンなつくりになりました。平日の朝・昼は近隣で働く人たちの食事処として親しまれているほか、休日は観光で訪れた家族連れの姿もみかけます。
品書き
お酒
樽生ビールはアサヒスーパードライ 小:480円・中:680円、瓶ビール(アサヒスーパードライ)大瓶:650円。
日本酒は大関 小:480円、大:880円、吟醸酒は京都・玉乃光酒造の玉乃光:950円。
サワー類は、生レモンサワー:600円、ハイボール:600円、ウーロンハイ:500円など。
定番料理
魚介類は、刺身盛合:980円、まぐろ刺身:980円、銀だら照焼:1,100円、にしん塩焼き:1,000円、さば味噌煮・塩焼き:各680円。
炒め・焼き・揚げ物は、ハムエッグ:400円、肉入り野菜炒め:600円、ハムカツ:400円、とんかつ:1,200円、鶏肉唐揚げ:780円など。
ときわ特撰
名物は天然あじフライ:980円、受け継がれた特製ダレでつくる豆腐ステーキ:780円、銀だら照焼:1,100円、茄子味噌(甘め合わせ味噌):650円、肉生姜焼き:780円、とん皿:880円、自家製ぎっしり餃子(焼・水):550円。
参考までにごはん類。かつ丼:1,250円、鍋焼きうどん:900円、ねぎとろ丼:1,250円、とん汁:350円、まぐろとろろ:400円など。
日替わり、おすすめの一品
しめさば:780円、すずき刺:880円、メジマグロ刺:980円、中とろ刺:1,280円、からすみ:780円、まとう鯛西京焼:980円、いさき塩焼き:1,280円、湯豆腐:380円、春野菜の天ぷら:680円など。※おすすめの一品は、日替わり料理です。
このほか、日替わり料理は、数種類の定食(1,000円ほど)があります。
午後2時以降のときわ食堂は、食堂飲みの楽園
アサヒスーパードライ大瓶(650円)
一度体験すると虜になる「食堂飲み」。浅草・雷門の横でも楽しさは変わりません。外を行き交う人の流れをぼーっと眺めながら、手元にはビールがあるという幸せ。銘柄は吾妻橋のビールメーカー・アサヒビールの「アサヒスーパードライ」です。ビアタンを満たして、それでは乾杯!
とん皿(880円)
浅草は飲みに行きたいお店がたくさんありますが、ときどき無性にときわ食堂に入りたくなります。名物の天然あじフライが美味しいですし、4代目が自ら市場で仕入れてくる魚介類、とくにお刺身も期待できます。
ですが、今日の目的は「とん皿」!以前、ベテランの常連さんたちが、これをつまみにビールを飲んでいる姿を見て以来、気になっていました。
たっぷりの豚肉としんなりした玉ねぎ、ニラ、そして春雨が入ったすき焼き風の料理です。八角の高台が高いお皿に盛られているのも素敵です。
溶き玉子にくぐらせて食べるのかときわ食堂流です。東京らしい濃く甘い割り下をたっぷり纏った長い春雨が、玉子を飴色に染めます。そのため、厚めの豚肉でもしっかり割り下の味が感じられ、総じてバランスの良い味になります。クタクタの玉ねぎ、ニラも実にいい味です。
ほんのり濃い味でビールが進む逸品。ボリュームがありますが独り占めするほうが幸せです。なるほど、ベテランの皆さんが摘んでいる理由がよくわかりました。
日本酒 大関(480円)
ハフハフととん皿を頬張っていると、気づけば大瓶は空っぽです。つぎの飲み物は、お馴染みの灘の酒「大関」のお燗にしましょう。
塩らっきょう(180円)
箸休めに塩らっきょうを。食堂と言いつつも、こうしたちょっとした肴の小鉢もあるのが嬉しいです。
現存する希少な東京都指定民生食堂の一軒
ここはいまも営業を続けてい東京都指定民生食堂の一軒でもあります。
戦前からの一大歓楽街・浅草で、今もこうしてどっしり構えた食堂が続いている。そんな背景もお酒を美味しくします。
今度の休日は浅草へ「食堂飲み」に行ってみませんか。テキパキとした元気な店員さんたちが、初めてのお客さんでも優しく迎えてくれます。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 浅草ときわ食堂 |
住所 | 東京都台東区浅草1-3-3 |
営業時間 | 9:00〜22:30(土日祝は8:30~・水定休) |
開業年 | 1922年(現店舗は1946年開業) |