御徒町を飲み歩く人ならば一度は吸い込まれたことがある、路地裏の人気大衆中華『大興(たいこう)』が建て替え完了。きれいになっても、本格中華を手頃な値段で楽しめることに変わりはありません。
目次
ヤミ市の屋台から創業

アメ横の南端に位置し、貴金属問屋街やコリアンタウンに接する御徒町駅。土日は昼飲み客で溢れる上野6丁目飲み屋街や湯島にも近く、山手線の駅前でも特に雑多な賑わいに満ちたエリアです。
街の成り立ちに大きく関係するのがかつて存在したヤミ市の存在です。大戦中、鉄道への延焼を防ぐために国鉄ターミナル駅周辺に空き地が設けられましたが、汽車から荷物を運び込みやすいこともあり、ヤミ市へと姿を変えました。
上野のアメ横や6丁目飲み屋街もそうした中で誕生しています。復員兵が多かったこともあり、現地の味を再現したラーメン屋や中華屋が商売をはじめました。大興もそうした一軒だと聞きます。

創業は1944年。ヤミ市の屋台から始まり、やがて路地に店を構え現在に至ります。
いつまでも続くものと思っていましたが、2020年の休業要請等の渦中に突然店舗の解体がはじまり、「まさか、大興までもが…」と驚いたものです。建て替えとのことで、一旦は更地になったものの無事に新店舗が完成し、2021年10月1日、無事に再開となりました。ほっと一安心。
新店舗は、再開を待ちわびていた大勢の常連さんで、しばらくの期間、満員御礼、予約必須状態でした。少しずつ落ち着いてきたものの、いまも満席であることがほとんどです。
一階が広くなった新店舗
以前は厨房が一階にありました。入れ代わり立ち代わりで常に席がうまる『大興』には手狭に見えていました。新店舗では厨房が二階に移り、一階は明るく広く清潔な空間に大変身。ですが、テーブル配置は昔とあまり変わっていないようで、旧店舗時代を思い出します。
一階がいっぱいで上の階に通されたときにみた、一般家庭のダイニングを思わせる家庭用のテーブルや椅子を使っていた頃の面影はありません。
乾杯はキリンクラシックラガー

以前と同じキリンクラシックラガー。ちょっとオシャレな脚付きグラスに注いで、それでは乾杯。
品書き
飲み物


樽生ビールは、アサヒスーパードライまたはキリン一番搾り(ともに中480円)。瓶ビールはアサヒスーパードライとキリンクラシックラガー(ともに大びん650円)。紹興酒(デキャンタ1,650円)にグラスはありませんが、二人以上ならおすすめ。昔は甕(かめ)は店頭に無造作に置かれていましたね。
ハイボールはホワイトホース(400円)、酎ハイはウーロンハイ(430円)など。
料理


人気メニューは、前菜の鳥モツ(350円)、点心の春巻き(450円)、卵料理のゆばと青菜炒め(800円)、肉料理の豚の角煮(900円)など。以前は台湾料理が多く、大根餅や鯉甘酢あんかけなどもありましたが、今のところ品書きにはありませんでした。


壁面の黒い線はそういう内装デザインかと思っていましたが、一部は短冊が画鋲打ちされてはられています。早速、手元のメニューはない料理を発見。やはり新店舗でも店内をぐるりと見渡すことが必須です。
しっかり飲みも、〆の炒飯飲みも
おすすめ、とりモツ(350円)

建て替えや消費税内税表示、休業要請など、様々な変化の中でも、大興の料理は変わらず一回り安いまま。
主菜の前に軽くつまむならば、中華料理特有の香辛料を効かせた旨く甘いとりモツがイチオシ。これで大瓶一本飲めてしまいます。
五目チャーハン(750円)

五目チャーハンも、この立地で750円ととっても良心的。本場の店に引けを取らない山盛り具合も嬉しいところ。

強い火力でパラパラに仕上げているのはむかしのまま。味付けは大衆中華(街中華)というよりは、本格中華寄りです。具はシンプルで、卵とネギだけの卵チャーハンに、分厚いチャーシューと大きくプリプリの海老がゴロゴロと入っています。

夕食を兼ねた一杯ならば、五目チャーハンの具材は立派なおつまみです。
旧店舗の思い出


女将さんの優しい接客や雑多な感じが、台湾の食堂で飲んでいる気分にさせてくれたものです。

新店舗にも引き継がれた、豚肉がたっぷりのシュウマイ。粗挽きの肉としっとりとた皮がクセになりました。
土地の歴史を感じる大衆中華で
御徒町は戦後すぐに創業した老舗の大衆酒場だけでなく、近年はアメ横側にも立ち飲みが増加するなど、一日中お酒が楽しめる街です。そうした中ににある、路地裏の大衆中華。その背景も含め、上野・御徒町飲みを楽しまれてみてはいかがでしょうか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 中華 大興 |
住所 | 東京都台東区上野6-2-14 |
営業時間 | 営業時間 [月~土] 11:00~15:00 17:00〜23:00(L.O.22:00) ※まん延防止等重点措置期間中は21:00(L.O.20:00) 定休日 日曜日 |
開業年 | 1944年 |