今回は浅草駅からほど近い、東京を代表する老舗「駒形どぜう」をご紹介します。創業は1801年ですから、徳川11代将軍・家斉の時代ということになります。
浅草にはどじょう料理を食べさせる老舗・銘店がいくつかあり、地元の人達はそれぞれに好きな店が決まっているなんてことも。その中で駒形どぜうは言うまでもなく大定番で、ガイドブックでもお馴染みの店です。
ですが、皆さんご存知でしたか。ここが最高の昼酒処だということを。なんせ、200年以上続く飲み屋なわけですから、浅草散策のついでに「駒形できゅっと一献」なんていうのができればかっこいいわけです。
「どぜう」という名前は、”もともと「どじゃう」と書いていたのが1806年(文化3年)の大火で店が消失してしまい、その際に「どじゃう」だと縁起がよくないということから、縁起のいい三文字で「どぜう」と改めた”というのは江戸っ子には有名な話。
観光客の皆さんは定食を食べていくのですが、せっかくですから江戸時代の粋なノンベエになったつもりで、きゅっと引っ掛けていこうではありませんか。酒は京都伏見の北川本家がつくる「ふり袖」。伏見の女酒らしい軟水のやわらかな口当たりが特長の美味しいお酒です。「富翁」をつくる蔵元といえばわかりやすいでしょうか。
ビールはお膝元、アサヒスーパードライ。
隅田川の対岸に敬意を表して、きりっとした味と辛口な喉越しのビールで乾杯。駒形どぜうで飲むスーパードライはいつも以上に美味しく感じます。店内に漂う醤油と味醂の風味を肴に、一杯目の瓶ビールはあっという間に乾いていきます。
樽生の扱いはなく、瓶ビールオンリーなのですが、それもまた駒形らしい。静かによく眠り冷え切った瓶ビールの美味しさといったら、たまらないものがあります。
季節の料理が挿し込みではいっています。浅草生まれの友人が言うには、くじら料理は駒形が一番らしい。
江戸の情緒を感じられる1階の板間が初めての人にはオススメなのですが、どっしり飲むのなら地階のテーブル席のほうがいい。地階も、それはそれで古き良き大箱大衆飲み屋の雰囲気で愛おしい。
どじょうは江戸の庶民に愛された代表的な味覚です。とくに「まる」で食べるのが粋と言われてきていますが、筆者は「ぬき」のほうが好み。「どのどじょう屋が好きか」「それはマルかヌキか」なんていう会話は至る所から聞こえてきそう。
どぜうの注文をすると、目の前でぐつぐつと音をたてながら、次々どぜうが食べごろになっていくので、そわそわしちゃうかも。蕎麦前よろしく、鍋に行く前に軽くつまみをもらって、店の風情とお酒の美味しさを楽しんでみては。
出汁香るホクホクとした玉子焼は、ビールにも日本酒にもよく合います。
今回はどぜう鍋とはいかず、柳川鍋をとりました。どぜうの苦旨い味が溶け出して綴じ玉子に混ざり、それはそれはお酒とよく合うのです。開いたどぜうと牛蒡の食感の差も、食べ飽きないポイントです。どぜう鍋にも使っているここの割り下は、長年変わることなく美味しい土地の味。
ドライプレミアム・豊醸はアサヒらしい味の設計をしていながら、コク深く香り高い、そしてアルコール度数6.5%のビール。味がしっかりあるどぜう鍋やなまず鍋(冬季限定)と好相性です。
11時のオープンから閉店まで通しでやっているのが素晴らしい。昼時は混むので、3時位の波が引いた時間にふらりと立ち寄って、ビールとふり袖(冷酒)に柳川鍋を合わせてみてはいかがでしょうか。
観光名所とはいえ、ここの昼酒を経験しないのはもったいない。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
駒形どぜう 本店
03-3842-4001
東京都台東区駒形1-7-12
11:00~21:00(無休)
2,700円