米子『あやめ亭』山陰の魚と隠岐の酒。二代目家族で営むイイ酒場。

米子『あやめ亭』山陰の魚と隠岐の酒。二代目家族で営むイイ酒場。

米子駅前のレトロな飲食ビルにある『あやめ亭』は家族でもてなしてくれるいい酒場。お客さんは地元の方ばかりですが、一見さんにも優しいです。境港などで揚がる日本海の魚介類を手頃な価格で食べさせてくれます。

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常連さんが店を受け継ぎ30年

鳥取県の西端にある人口約15万の米子市。中海・宍道湖・大山圏域を形成する主要都市のひとつであり、山陰街道に陰陽連絡や境港方面が交わる交通の要衝として発展してきました。

古くからの商都であり、中心街であるJR米子駅周辺は現在も県庁所在地同等規模の繁華街を抱えています。居酒屋の数は約100軒と言われており、歴史ある街だけあって老舗の名店も存在します。

米子の魅力を語る上で「食」は外せません。弓ヶ浜半島によって区切られた日本海と中海がつくりだす豊かな漁場の存在が大きく、その付け根にある米子市内の居酒屋は珍しい魚介類が楽しめます。

今回は、地物の魚介類を刺身や鍋、おでんで食べさせてくれる一品料理の店『あやめ亭』をご紹介します。

JR米子駅前にある年季の入った飲食ビルの屋内横丁的な場所に構える『あやめ亭』は、1993年頃に前大将が開業。現在の大将は二代目で、以前は同店の常連さんだった方。「前の大将に店を継いでくれないかと言われ、酔っ払っていたのでOKしちゃいました」と笑いながら話す現大将。

トーク上手でお客さんたちとの距離を程よく縮めてくれる大将は、常連さんはもちろん一見さんにも優しく、カウンター席に集うお客さんは共通の話題で盛り上がりはじめました。

店の手伝いをしていた方とご結婚され、いまはお子さんを含む家族全員で店を切り盛りされるています。

カウンター席に集うお客さんは皆さん地元の方のようです。奥のテーブル席では宴会も入っています。雪が降る月曜日に取材しましたが、入りにくい立地・店構えにも関わらず、しっかりと賑わっています。

品書き

お酒

  • 瓶ビール キリンクラシックラガー中瓶:600円
  • 生ビール サントリーザ・モルツ:600円
  • 酒 高正宗:1合400円・2合700円
  • 純米吟醸:750円
  • 酎ハイ:500円
  • ハイボール:500円

料理

  • ポテトサラダ:400円
  • おでん(白バイ串、天然わかめ、いわし団子、野菜巾着、ごぼう天など):150円~
  • 白ネギ天(白ネギは米子の名産):400円
  • 刺身おまかせ盛:1,500円~
  • マトウ鯛:700円
  • 白ばい:700円
  • マグロ切り落とし:700円
  • 松葉ガニ小鍋:2,800円
  • 松葉ガニ塩茹で:2,600円
  • 白ばい煮付け:500円
  • ままかり素揚げ:600円
  • 牡蠣フライ:800円
  • 赤がれい煮付け:800円
  • 手作り海老焼売:800円
  • 牛肉と野菜のスキ煮:500円
  • 親蟹(セコガニ)ごはん:400円
  • 牛ステーキ:1,200円

料理はすべて地物揃い

キリンクラシックラガー中瓶(600円)

なにはともあれ、ビールから始めましょう。「久しぶりの豪雪で車が出せず店を休もうかと思った」なんていう常連さんと大将の会話を聞きつつ、まずはキリンクラシックラガーで乾杯

お通し

お通しはマグロの皮ポン酢と猿頬貝煮。

米子や松江では赤貝とも呼ばれている、雲伯の地域食材「猿頬貝」。中海や宍道湖の名産品です。主に煮付けで食べられており、酒の肴にぴったりです。マグロの皮ポン酢も珍しいですが、これも実は地元の食材です。

境港(米子の北)は生本マグロの水揚げ量日本トップクラスで、正肉はもちろん、ハツや胃袋、皮までまるごと調理してしまうのが境港・米子流。地元の酒場では、手頃なアラなどをつかったおつまみが人気なのだそう。クセがなく程よい脂のノリ具合が絶品です。

マトウダイ刺身(700円)

今日市場で仕入れてきたというマトウダイをお刺身にしてもらいました。マグロ切り落としのオマケ入り。

鍋やフライで食べるイメージのマトウダイですが、山陰では刺身でも食べる習慣があるようで、他にも何軒か居酒屋で見かけました。

上品な甘さで食べ飽きない味。日本酒とあわせて、ちびりちびりと摘みたい。

淡白な味だからこそ、山陰の甘い醤油があいますね!

高正宗(400円)

お酒は隠岐の地酒「高正宗 佳撰」。「隠岐誉」が看板銘柄の隠岐酒造がつくる地元消費用のお酒で、隠岐や米子ではおなじみのお酒だと大将。甘めでどこか懐かしい味。飲み心地がよく、お刺身やおでんと実によくあいます。

おでん(わかめ・白ばい)

せっかくですからおでんを頂きましょう。山陰はアゴをはじめ、様々な出汁のおでんがあり、東京や大阪のおでんとは別物の美味しさがあります。

わかめのおでんが大将のおすすめです。串打ちした地元産の白ばい貝もいただきました。ツルツルとした喉越しが格別のワカメに誘われて、みるみるうちに徳利が軽くなっていきます。

旨味がぎゅっとつまった白ばい貝も絶品で、これはたまらないと高正宗をおかわり。二杯目は熱燗にしてもらいました。

「料理人ではないのに店を継ぐことになって、それから慌てて先代から料理を教わりました」と大将。透き通ったおでん出汁をみれば、丁寧な仕事をされていることがよくわかります。

常連さんは松葉蟹の鍋(2,800円)を食べていらっしゃいましたが、たっぷり入ってこの安さは正しく産地価格。

ごちそうさま

出張で米子を訪ねた際は、ぜひ候補に入れて欲しい一軒『あやめ亭』です。アットホームな雰囲気で、米子のことがもっと好きになりました。

看板には「定食」の文字がありますが、現在定食はやっていません。本記事のように魚介類中心のおつまみのみの店になっていますので、「お酒が飲みたい方」にこそおすすめです。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名あやめ亭
住所鳥取県米子市明治町140 1階
営業時間営業時間
〔月~金〕16:00~22:30
定休日
土・日・祝
開業年1993年頃(現大将は2008年から)