創業から30余年。女将さんがつくる島根料理でもてなしてくれる名店『石州』(せきしゅう)。いつも満席になる人気店で、お客さんはほぼ全員が地元の方。飲み慣れたお客さんと女将がつくる空気感が実に心地良い。一度行けば気に入ること間違いなしの名店です。
ビルの奥に隠れた名酒場
島根県第二の都市・出雲市。縁結びで知られる出雲大社を目指し、日本全国から観光客が訪れる観光都市です。
街の玄関口であるJR出雲市駅前には規模は小さいものの飲み屋街が広がっており、地元のお酒好きや旅行者が赤ちょうちんに吸い込まれていきます。
そんな出雲市駅前でオススメの酒場が今回ご紹介する『石州』です。石見国(現在の島根県の一部)の別名「石州」が店名の由来。
店は古い飲み屋街にある飲食・スナックビルの奥にあります。かなり隠れた場所。飲み屋街を歩いているだけでは、店の存在すら気が付きません。
敷居の高さを感じる立地ですが、間違いのない店ですからぜひ本記事を参考に、暖簾をくぐっていただきたいです。
店を切り盛りするのは女将さんで、創業から30年を迎えました。ハキハキとしてお客さんと明るく会話するお兄さんと二人で切り盛りされています。
内観
古さを感じさせないビルにありますが、店内に一歩入ればそこは懐かしい雰囲気の典型的な差鍵の空間です。
女将さんが立つカウンターに向いたL字カウンターと、対面に畳敷きの小上がりというつくりです。開店直後に訪ねましたが、すでに先客の常連さんがイカ煮を肴にボトルキープの焼酎を楽しまれています。
箸置きがセットされているところは予約席のようで、半数が埋まっていました。なかなかの人気店です。
この店最大の魅力は、カウンターの奥にずらりと並ぶ女将さんの手作り料理でしょう。鶏肝炊き、近海物のカレイ炊きなどが山ほど並んでいます。ご時世柄、アクリル越しの眺めになりますが、これは壮観です。
練りものは島根の定番料理。ごろごろと入ったおでん鍋も魅力的です。
大皿に無造作に積まれた鰻。宍道湖を始めとした水が豊かな島根は昔から鰻が名物で、これも土地の味のひとつですね。半身で1,200円ほど。結構リーズナブルです。
品書き
- 生ビール アサヒスーパードライ
- 瓶ビール キリンクラシックラガー
- 島根の地酒各種
- 刺身盛り合わせ:1,500円
- 鯨ベーコン:1,500円
- 鯨竜田揚げ:1,500円
- 馬刺し:1,200円
- エビ塩焼き:900円
- 赤鶏炭火焼:700円
- にらまんしゅう:500円
- かにみそ:500円
キリンクラッシックラガービール
一枚板の味のあるカウンターに似合うキリンクラシックラガーをいただきましょう。トクトクとグラスを満たして、乾杯!
里芋のポテトサラダ(突き出し)
大皿料理から一品お通しとして提供されます。訪問時は小ぶりの里芋ポテトサラダで、ねっとりとしていていい味です。
刺身盛り合わせ
地物の里芋に負けない、地物の魚介類。「いくつか一人分で盛り付けましょうか?」とご提案いただきました。
アカムツ(のどぐろ)、アジ、ぶり、地ダコに〆鯖。どれも日本海でとれた地魚ばかりです。
プリッとした鮮度のいい刺身は、山陰特有の甘く濃い醤油がよくあいます。これは日本酒と合わせたい!
七冠馬 純米吟醸
扱っているお酒はお燗用も含め地酒揃い。お兄さんから「辛いのと甘いの、どちらが好きですか?」と聞かれて、好みに合うお酒をいくつか提案してくれます。おすすめの中から「七冠馬」をチョイス。
七冠馬をつくる簸上清酒(ひかみせいしゅ)は、JR木次線の出雲横田駅近くにある300年以上続く酒蔵です。ヤマタノオロチになった気分で、奥出雲のキレイなお酒をいただきます。
赤貝炊き(猿頬貝)
赤貝とも呼ばれる猿頬貝(サルボウガイ)は、宍道湖や中海の名産品です。汽水域に多く生息し、有明湾でもとれるそうですが、とくに米子、松江、出雲市では伝統料理として親しまれてきました。
殻ごと甘く炊いたサルボウガイは最高の酒の友。味が濃く、コクがある大人味。これはお燗酒が必要です。
都市部向けの磨き上げたお酒も良いですが、地元流通の普通酒もまた絶品です。地元の言葉、地元の肴、地元の酒。これぞ酒場旅の醍醐味です。
ごちそうさま
いかにもお酒好きで、酒場が大好きという雰囲気のお父さんたちで賑わう店『石州』。石見の味に舌鼓を打つひとときでした。
常連さん率が非常に高いですが一見さんも歓迎で、平等に応対してくれます。敷居の高さを感じても、酒場がお過ぎしたらぜひ訪ねて欲しい一軒です。
島根県の老舗酒場
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 石州 |
住所 | 島根県出雲市今市町929-2 |
営業時間 | 営業時間 17:00~22:00(ラストオーダー 21:30) 定休日 日曜日・祝日 |
開業年 | 1993年頃 |
予算 | 約4,000円 |