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島根県西部の日本海側沿い、鎌倉時代から栄えてきた歴史ある町「益田」。清流・高津川と益田川の河口に広がった穏やかなこの地域は、海と里、そして山の幸が集まる場所です。
食材と歴史が揃えば、名店あり。いくつか老舗の酒場が存在しますが、寿司店で一献という選択はいかがでしょう。
益田はこの界隈では唯一の漁港があり、市内には取扱高約11億円(JF島根・平成14年データ)の魚河岸「益田水産物地方卸売市場」が設置されています。
この地で鮮魚卸も営む店が「寿し処みのり」。創業は1957年、駅前のバス通りを一本越えた先にある古い歓楽街のムード漂う「新天街商店街」にあります。
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名産のふぐなどが泳ぐ水槽の先に7席のカウンター席があります。地元のベテランさんが連れ立って食事を楽しまれているテーブル席に、奥には宴会用の座敷を配したつくり。地元金融機関や農協、市役所などが近くにあり、ビジネス関係の利用も多い立地です。
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丁寧な接客の大将とお姉さんに迎えられて、まずはビールでスタート。銘柄はアサヒスーパードライ(580円)です。それでは乾杯。
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益田は交通の要衝で、列車の乗り継ぎに立ち寄るのにも便利な場所。この日は、JR山口線への乗り換え時間をつかって訪ねました。
そんな旅行者にとって、11時から14時とお昼から営業していることが嬉しいです。さらに、寿司種もこの通り、ばっちりと揃えられており、夜と同じメニューを楽しむことができます。
ショーケースには、高津川河口でとれる名物の大蛤や、地だこ、幻と言われるモサエビなどがずらり。
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小いかの足詰め煮が先付です。上品な味わいに、ビールのつぎは日本酒にしようという気持ちが高まります。
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最初から握りにするのはもったいない、ということで、軽くおまかせでお摘みにしてもらいました。甘鯛、サヨリ、まぐろに、中国地方らしいサワラの炙り。サヨリは鮮度がよく、甘鯛はほどよくねかされ、それぞれに仕事の丁寧さが感じられる一皿です。
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益田は江戸時代から続くような酒蔵が6つもある、地酒処でもあります。高砂、華泉、扶桑鶴…。一通り揃うなか、ここは地元消費の定番酒をお燗でひとつ。
中国山地の伏流水でつくる地酒と、その水で育つ益田の魚介類。同じ水だから、合わないはずがありません。
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地のものでお願いした握り盛り合わせ(特上3,000円)。どの寿司種も日本海の旬を詰め合わせたような大変素晴らしい内容です。
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歯ごたえと上品な塩の旨味が膨らむアワビや赤貝、脂ののったブリに、活エビの握り。
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益田をはじめこの界隈の日本海側の特産品である「赤ウニ」は、濃厚で深みがありながらもイヤミは皆無の非常に素晴らしいものでした。
これでお燗酒が1本で足りるはずもなく、一時間少々のお昼飲みは、しっかり心地よいものになりました。
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今度は、ふぐを食べに来よう。
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観光向けというよりは、地元のちょっと贅沢な食事処という雰囲気に感じる「みのり」。気取らない感じの場所で、地域の言葉をBGMに、旅先のひとり酒を楽しむにはぴったりの場所です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 寿し処みのり |
住所 | 島根県益田市駅前町11-7 みのりビル 1・2F |
営業時間 | 営業時間 [火~土] 11:00~14:00(L.O.13:30) 17:00~22:00(L.O.21:30) 定休日 日・月曜日 |