出雲市『五郎八』創業75年になる老舗。名物おでんの特長は?

出雲市『五郎八』創業75年になる老舗。名物おでんの特長は?

出雲大社の参拝拠点であるJR出雲市駅周辺には、古くから飲み屋街が形成されてきました。この街で現存する最古の酒場は『五郎八』で、今年で創業から三四半世紀。二代目女将が仕込む名物おでんを肴に地酒「ヤマサン正宗」をいただきます。

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女将と話す鍋前のカウンターが特等席

大国主大神がまつられている出雲大社は、縁結びの神様として知られており、恋愛成就を祈願する人々が全国から集まります。玄関口である出雲市駅周辺には、訪れる人々を迎える数多の宿や食事処が存在します。

社会情勢の変化や飲食ニーズの多様化で昔ながらの飲み屋街は寂しくなっていますが、それでも賑わう店はありますし、半世紀以上続く店も元気に営業しています。

外観

『五郎八』もそうした一軒。戦後すぐからおでん居酒屋として営業を続けており、この街の最古参です。とはいっても、平安時代には社殿がすでにあった出雲大社と比べれば、できたてほやほやといったところですね。

内観

店に入ると、元気で明るい3代目と、温厚な表情で声をかけてくれる2代目の女将さんの親子が迎えてくれました。店の中央におでん鍋が鎮座し、それを囲みつつ厨房と客席をわけるL字のカウンターが配されており、鍋の前が間違いなく特等席です。

以前は広く使っていたようですが、現在はカウンター10席程度を使用しているのみ。3代目を会話に挟みつつお客さん同士の交流が自然と始まる情緒的な雰囲気です。

「寒いから鍋の前にどうぞ」という言葉に甘えて、女将さんの真正面へ。上品な出汁の香り誘われ、コートを脱ぐよりも先にお酒の注文をしてしまいました。

女将さんと先代の大将は長年夫婦二人三脚で店を守ってきたそうです。出雲大社に見守られた出雲市らしいお話を聞けました。

品書き

  • 瓶ビール アサヒスーパードライ
  • お酒 ヤマサン正宗 上撰
  • 玉子やき
  • やきとり
  • めざし
  • やきいか
  • 焼き魚
  • 刺身(あじ・いか・いわし・〆鯖・なまこ)

味噌載せおでんは、地酒のお燗を進ませる

ヤマサン正宗 上撰 お燗

先客は1名。お一人で飲んでいらっしゃる若い方は、瓶ビールを継ぎ足しながら3代目と楽しそうに話しています。聞けば大阪の飲食店で働いているそうです。ビールを美味しそうに飲んでいます。こちらもお酒の準備が整ったようで、あまり待つことなくお酒がでてきました。

今夜は一杯目から日本酒です。それでは乾杯!

ヤマサン正宗の上撰が店の定番酒です。なかなか大都市にはでてこないお酒で、出雲市内にある酒持田本店で醸造されています。地元で評判のロングセラーだそう。吟醸酒やブランディングされた地酒もよいですが、地方の酒場では地元消費向けの普通酒がでてくるほうが嬉しいものです。

使い込まれたおでん鍋の横にチロリが1個入る湯煎の口があり、ここでお燗をつけてくれます。長年店に立ってきた女将さんがつけるお燗は言うまでもなく完璧です。

おでん

鯨皮(コロ)など、あまりみかけない種が入るおでん。山陰らしく練り物が多く、巨大な油揚げや手羽先、仙台の麩なども気になるところ。大きな御降飴色になった豆腐など、女将さんにみつくろってもらいました。味噌とネギを載せるのが『五郎八』のやり方で、これがお酒を猛烈に誘います。

ごちそうさま

気持ちよく、すいすいと進むお燗酒。少し色のついた懐かしいタイプのお酒が、飲んだそばから体内に吸収され、あっという間にほろ酔いになりました。お隣さんは入れ替わり、今度は背広姿の地元で働いているようなお客さんたちがやってきました。

旅先の酒場でこうした時間を過ごすと、その街のことがもっと好きになるように思います。

かなり年季の入ったお店なので、熱心な酒場好きの方にこそオススメです。

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syupo.com

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名五郎八
住所島根県出雲市今市町代官町1299
営業時間営業時間
18:00~24:00
定休日
日曜日
開業年1948年