松江「やまいち」 大橋川端。宍道湖を肴に、地酒・豊の秋で陶酔する。


島根県の県庁所在地で20万人都市の松江。何度となく旅行で訪れていますが、しっかりと飲み歩きを記事にしたことがなく、今回は一泊立ち寄ってみることにしました。

宍道湖、日本海、比婆山と複雑な地形に挟まれた松江は、自然の幸の宝庫です。その美味しい食材を楽しむならば「やまいち」をまずは紹介しなくてはなりません。松江の飲み屋を代表する一軒で、店の歴史は半世紀を越えています。

大橋川の川端に佇む立派な瓦屋根が目印の渋い建物で、旅愁をかきたてられます。

 

松江へは、山陽新幹線岡山駅から、伯備線の特急やくも号でおよそ2時間40分の旅路です。航空機ならば米子空港からリムジンバスがアクセスルートです。

 

松江駅前は一畑百貨店を中心に商店街が広がっていますが、この町も他の地方都市同様に駅から少し離れた場所に古くから栄えたエリアがあります。市内の所要な場所を巡回する路線バスが便利です。

 

松江駅近くの歓楽街、伊勢宮町を少し散策。かつて赤線だった場所で、地元では「新地」とも呼ばれています。ここにも居酒屋は揃っているのですが、もう少し落ち着いた飲み屋がよいので、さらに北へ。

 

松江の中心を東西流れる大きな「大橋川」。西に宍道湖、東に中海と、山陰・松江の複雑な汽水湖の流れを目の前で見ることができます。川をこえると、昔からの飲食店街「東本町」です。

 

宍道湖の畔でもあり、汽水域で水揚げされる海産物をまさに産地のまん真ん中で楽しめるのが松江の飲み屋の特長です。早くから空いている店では漁師さんも宴会をしています。

 

大橋川を渡りきったたもとに、目指す飲み屋「やまいち」があります。駅から結局歩いてきましたが、15分ほどと飲む前のウォーミングアップにぴったりです。

 

遠くに灯る店の看板が見えるのがまた情緒があっていいものですが、今日は口開けで予約していましたので、まだ明るいです。

 

明るい笑顔で迎えてくれるベテランのお姉さんと、若大将。家族経営です。旅先の疲れを癒やしてくれる、安堵感がたまりません。

 

季節料理の名の通り、時期によって変わる品書き。その日の水揚げ次第だそうです。値段は書かれていませんが、普通に飲んで食べてでおよそ4000円ほど。飲み屋として高すぎもしないので、ぜひお店の方との会話から、今日の逸品を選びましょう。

 

カニ、ブリ、のどぐろと文字が踊るその上をみると、唐揚げ定食や焼うどんの文字があります。常連さんで、定を目当てに、ささっと食べていく長い常連さんもいらっしゃるそうです。

 

一杯目はビールから。瓶、樽生ともにヱビスビールです。日本海からの空風で喉がかわいたので、ここは生ビールで。500mlサイズの昔ながらのジョッキで登場。では乾杯!

 

品書きを眺めつつビールを飲んでいると、「まずは、これからどうぞ」と大皿から盛られた炊いた貝がやってきました。赤貝と呼ばれているもので、かなり小ぶり。全国的にはサルボウガイで知られています。シジミだけではない松江の海の幸のひとつです。

濃い目に炊かれているのに、しっかりと主張した身の旨味。これだけで十分お酒のお供をしてくれます。

 

銀座で食べればいくらとられるかわからない、立派な白魚。松江の白魚はそれだけ評判がよく、高級店向けではあるものの、こうして産地の飲み屋ならば手頃な価格で食べられます。

生でいけるものをあえて天ぷらでわずかに火を通す…すると甘みが引き立ち、一層美味しい肴となります。余韻に僅かな苦味が残りました。

 

豊富な魚介類や里の幸がとれる松江は、おでんが市民の味。おでん専門店も近隣にあるほか、「やまいち」でも楽しめます。

 

となれば、ここは燗酒を一本つけてもらいたくなるのが、酒飲みの習性でしょう。松江の銘酒、豊の秋。店から100メートルほどにある松江城下の酒蔵です。

 

せっかくだから、のどぐろをつまみにしたらどうかとご主人。こぶりなので、一人でちびりと摘むのに最適です。小さくともさすがはのどぐろ。ぷりぷりの身は噛むほど優しいコクが広がり、脂の美味しさが頬を緩ませます。煮付けの具合や味付けは老舗の安定感を感じます。すかさず、米の旨味がつまった豊の秋を口に含めば幸せです。

お猪口には家紋が入っています。

 

静かな空間でゆったり飲む。地元の食材をちょうどいい量でちびちびつまめる…。大衆すぎず、ガイドブックの見開きを飾るような郷土料理店でもなく、ノンベエの私にはちょうどいいお店です。

 

豊の秋純米辛口「金五郎」。冷酒をもらうと、これがやってきました。金五郎は豊の秋の初代蔵元・米田金五郎のことで、表情通り辛口ながら濃厚な味です。

 

よき料理にお店の方との楽しい会話。あとは、金五郎をゆっくり飲んでいこうと思ったら、ご主人からちょっとした肴をいただきました。白魚の佃煮とこんぶ。これはお酒が進みます。どうしよう、300ml瓶、もう一本いこうかな。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

やまいち
0852-23-0223
島根県松江市東本町4-1
16:30~21:30(不定休)
予算4,500円



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


こちらの記事もどうぞ



«