松江市の小泉八雲記念館近くにある『手打 神代そば(かみよそば)』は、日本有数の蕎麦激戦区にあって、長年愛されてきた蕎麦の名店です。自家製粉の手打ち十割蕎麦を、地伝酒使用のつゆでいただきます。営業は日中だけですが、地酒とヱビスビールもあるので、蕎麦前を楽しみたい人にもオススメ。
松江観光の昼食に、軽く一杯
戸隠蕎麦(長野)、わんこ蕎麦(岩手)と並ぶ日本三大蕎麦のひとつに数えられる出雲蕎麦。名称にこそ出雲とはいっていますが、島根県で広く食べられています。とくに県庁所在地都市である松江市は老舗の蕎麦店が多く、蕎麦屋でお酒を飲む「蕎麦前」好きにはたまらない街です。
名店揃いの松江ですが、今回は観光の途中で立ち寄りやすい『神代そば』をご紹介します。松江城の北側、堀に面した武家屋敷 塩見縄手にあり、小泉八雲記念館や松江護國神社からも徒歩3~7分ほどの場所です。JR松江駅からはレイクラインバス(巡回バス)などの路線バスに乗って約15分、小泉八雲記念館前下車。
江戸時代の町並みを色濃く残す松江に似合う、堂々とした店構えです。店の創業は1952年。ちょうど散策で喉が渇いた頃に、こんな素敵な店構えの蕎麦店が見えてきたら入りたくなりませんか。
観光ルート上とはいえ、住宅街にある蕎麦店なので、お客さんは地元の人も多いようです。古くても手入れが行き届いた椅子・テーブルにホッとします。穏やかな照明に照らされ落ち着いたところで、お酒が飲みたくなってきました。
品書き
お酒
- ヱビスビール 中瓶:700円
- 純米吟醸 豊の秋:1杯800円・1本1,500円
料理
- とろろ玉子付き:400円
- そばみそ:180円
- 鳥煮:400円
- 割子そば:990円
- とろろ割子:1,450円
- 釜揚げそば:800円
- 山かけそば:1,280円
- とりそば:1,150円
- 月見そば:850円
まずは鳥煮をつまみに一杯
サッポロ ヱビスビール中瓶(700円)
穏やかな日差しが差し込む店内。蕎麦店特有の湿度の高さと暖かさが、ピンと張った背筋をほぐしていきます。そんなときに飲むビールは実に良いものです。老舗に似合うヱビスビールをもらって、乾杯!
鳥煮(400円)
おつまみは限られているものの、蕎麦の盛り付けにも使われている鳥煮があれば十分です。蕎麦店の焼鳥や煮ものは”かえし”を使っているのでより深い味わいになっていますが、『神代そば』の鳥煮もコクがあります。
松江城下の酒蔵・米田酒造がつくる地酒「豊の秋」(純米吟醸)と合わせれば、旅情に浸れること間違いなし。
割子そば(990円)
軽く飲んでほろ酔いになったところでお蕎麦をお願いしました。
さて、郷土料理「出雲蕎麦」の盛り付けは独特です。冷たい蕎麦が割子、温かい蕎麦が釜揚げ蕎麦が基本。前述したように、出雲蕎麦といっても出雲市だけで食べられているものではありません。例えばこの「割子」は、松江の城下町で誕生した提供方法と言われています。
出雲蕎麦の発祥は、1611年出雲藩・松平家初代藩主が松本から出雲に国替えになった際、信州の蕎麦職人を連れてきたことが発祥と言われています。丸い独特のお重「割子」はお弁当として蕎麦を持ち歩けるように考案されたものです。
「いろんな食べ方を楽しみたい」という現代のニーズにもぴったりですね!
話は戻りまして『神代そば』では、島根県産や東北、北海道などから取り寄せたそばの実を石臼で”挽きぐるみ”し、手打ちで十割蕎麦にしているそうです。これに、地酒「豊の秋」蔵元の石田酒造がつくる松江の伝統的な料理酒「地伝酒」が入った蕎麦つゆをかけていただきます。
手繰ると漂う蕎麦の実の香り。やや平たい蕎麦はコシが強く、それでいて喉越しいいです。つゆの見た目はかなり黒いのですが、塩分の尖った印象はなくまろやかな味にまとまっています。
ごちそうさま
昼食時のピークは混雑します。営業時間は15時まで(注文は14:30まで。ただし蕎麦がなくなり次第閉店)と蕎麦店としては比較的長く営業していますので、お酒を飲む方は13時以降のほうがのんびりできて良いと思います。
飲んだ〆の出雲蕎麦なら
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 手打 神代そば |
住所 | 島根県松江市奥谷町324-5 |
営業時間 | 営業時間 11:00~15:00 日曜営業 定休日 水曜日 |
創業 | 1952年 |