ディープで陽気で美味しい角打ちが堺市にあります。堺東中瓦町商店街で1948年から続く『溝畑酒店』です。角打ちといっても小売は行なっておらず、店舗はまるで立ち飲み。愉快な溝畑さんご夫婦が切り盛りされています。
目次
敷居高そうだけど、超ウェルカムな角打ち
今日は南海電車に揺られて堺東駅にやってきました。前方後円墳が点在する長い歴史あるこの地は、いまは大阪のベッドタウン。JR線の玄関口は三国ヶ丘駅または堺市駅ですが、南海電車は中心街の堺東に駅をかまえています。南海なんば駅からは12分ほどと意外とすぐ行ける街。
堺東駅前には、“なかしん”の愛称で親しまれている堺東中瓦町商店や堺銀座商店街が広がっており、商店だけでなく酒場も多く、飲み歩きが楽しいエリアです。
外観
そんな「なかしん」で最もディープなオーラを漂わせている店が『溝畑酒店』です。店頭に積まれたビールケースの山が、より「酒飲みの世界」を醸し出しています。
内観
業務用の配達はあるものの店内での酒小売はほぼ終了しており、中は立ち飲み屋のような構造になっています。
おもしろいのはL字のカウンターが店の両側に配置された独特な構造です。片方に奥さん、もう片方に旦那さんが入り、接客合戦をおこなっています。
バーをイメージして、膝があたっても痛くないようにクッション張りにしたのだ、とご主人の溝畑さんは話します。酒屋らしいコンクリ打ちっぱなしの床とのコントラストが素敵です。
私は取材中、笑いっぱなしでした。なんたって、お二人とも軽快なトークで笑いをとる、根っからの堺商人ですから。
いたるところにお酒が並び、売り物なのか飾り物なのか不明。おでんの湯気や喫煙者の煙で全体的に飴色に染まっています。といっても、いまはタバコを吸う人は少ないそうです。
逆さになったウイスキーが素敵です。ニッカクリアではなく、スタンダードなブラックニッカとは、またチョイスが渋い。
冷蔵庫に入る缶ビールやRTD(チューハイなど)は角打ちの売り物。値段は立ち飲み店価格ですが、もちろん安いです。
全国区なメーカーのポスターも、ここではローカル仕様。大阪麦酒のマルエフでも飲みますか。
品書き
お酒
- 瓶ビールダイビン 大手各社各銘柄:480円
- 生ビール アサヒ生ビール:430円
- 缶ビール アサヒスーパードライ:340円
- 缶ビール キリンスプリングバレー 豊潤<496>:380円
- 缶ビール サッポロヱビスマイスター:380円
- 樽詰チューハイ アサヒ樽ハイ倶楽部:330円
- アサヒ ハイリキ:360円
- 土佐鶴200ml:380円
- 白鶴上撰200ml:380円
- サントリーカップワイン:310円
- サントリー角:230円
- ジョニ赤:250円
- ジョニーウォーカーゴールドラベル:350円
- デュワーズ:230円
- ブラックニッカ:160円
- 麦焼酎田苑:370円
- オールドパー:420円
- 下町のナポレオンいいちこ ヤエスレモンサワー割:380円
料理
- ニンニクパンチ!手造りギョーザ焼6個:340円
- 揚げシューマイ大:360円
- どて焼(牛):360円
- ピーマン肉詰めフライ:400円
- するめの天ぷら:300円
- ポテトサラダ:280円
- フライドポテト:300円
- 三色お造り:500円
- 湯豆腐:280円
- すき焼:400円
- 炊き合わせ(ホタテ・えび・こもちいか):400円
- 出汁巻き大:420円
- おでん:120円~
※いずれも取材時の内容。品揃えや値段は変更になることがあります。
溝畑酒店は工業地帯の角打ちという側面もある
サッポロラガービール大瓶(480円)
ビールが各社揃っていると全部飲みたくなりますが、常連さんに習って赤星ことサッポロラガーを。大阪の角打ちではおなじみ、「大阪府小売酒販組合」の表記付きビヤタンにトクトクと注いで、それでは乾杯!
狭い店内を工夫していろんなものが並んでいます。料理は温かいものはラップをかけてレンジ加熱、お造りなどは冷蔵ケースに入っています。
もうひとつのL字カウンターの角にはおでん鍋。関東炊き(かんとだき)なんて呼ばれていますが、むしろ関西のほうがおでんを食べる文化な気がします。
おでん(120円/個)
具材の牛すじがいい出汁になっていて、コクがしっかりあるおでんに仕上がっていました。
口開けから続々と常連さんがやってきて、女将さんや大将と漫才のような掛け合いをしています。パッと2杯あけて、満面の笑顔で帰っていく。大阪の角打ちには独特な空気感があります。
ジョニ赤ハイボール(250円+炭酸)
常連さんの一人が私に興味を持って話しかけてきました。堺東は、堺泉北臨海工業地帯で発展してきた街であり、角打ちは工場労働者とともに歩んできたと話します。街の歴史に詳しく、どうやらそちら方面のことを仕事にされているご様子。
日本製鉄、日立造船、IHI、ダイキンにシャープ。大規模な工場やプラントが揃っています。溝畑酒店に限らず、堺市にはまだまだ角打ちがたくさんあると教えてくれました。
そんな話し聞きながら、ジョニ赤(ジョニーウォーカーレッドラベル)のハイボールを飲みます。あら、キリンの炭酸水は珍しい。
ごちそうさま
大阪中心街の酒場もよいですが、こうして少し離れた街の角打ちや酒場を訪ねてみると、大阪のことがもっと好きになるはず。なにより、混みすぎておらず観光地化していないのが素晴らしい。機会があれば、ぜひ南海電車に乗って堺東を飲み歩いてみてください。
私はもっと角打ちを探索したいと思います。お店の皆さん、常連の皆さん、楽しい時間をありがとうございました。
大阪の角打ち
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 溝畑酒店 |
住所 | 大阪府堺市堺区北瓦町2-1-2 |
営業時間 | 営業時間 月~土 大体16:00~24:00 定休日 日曜日 |
開業年 | 1948年 |