居酒屋の利用動機や飲酒シーンが大きく変わった2020年代、これまでの「大箱・大人数・個室3,500円飲み放題」的な用途向けが大多数だったチェーン居酒屋は、いま続々と一人飲み、ちょい呑みにシフトしています。ここでは、従来の居酒屋チェーンの低価格新ブランドや、もともとその価格帯にあった従来ブランドの特長をまとめています。(主に直営で運営されている店舗のみ。※FCは店により差が大きいため)
備考:評価の★(最大5つ)は標準的な店舗の個人の感想です。安さの項目は単純な金額ではなく、体験した満足感と金額の相対評価です。金額は店舗・地域によって異なる場合があります。記事内の金額は各社の公式サイト、及び直近の都心実店舗メニューを記載しています。
値段は解説文の一部を除き、税込みに統一。(値段調査は2022年10月)
目次
大手の新業態
一軒め酒場(養老乃瀧)
写真:一軒め酒場1号店である神田南口店
養老乃瀧が2008年にはじめた低価格酒場。「コストパフォーマンス居酒屋」がコンセプト。神田のガード下に一号店が登場したことから、看板料理「神田旨カツ」には神田の文字を冠しています。ガード下の酒場に集うおじさんが安心して飲めるタイプの雰囲気。さすが、歴史ある養老乃瀧、個人系の居酒屋の雰囲気に近い印象です。
名物:神田旨カツ109円、こってり旨しょうゆ煮込み319円、豚足焼308円、バクハイ(生ビール&ウイスキー)319円
酒類:サッポロ系
価格指標:生ビール429円、酎ハイ209円、煮込み319円
一人飲み度★★★、酒場感★★★、リラックス度★★、安さ★★★★★
神田屋(テンアライド)
写真:神田屋1号店である神田屋神田駅前店
天狗でおなじみのテンアライドが2018年に立ち上げた低価格業態。神田の高架下に1号店が誕生したことが店名の由来。当初は小規模店舗の立ち飲みしたが、いまはテング酒場から業態変更が続き、大箱でゆとりある空間の着席スタイルが増加中。安くても狭くない、ファミレス感覚のセンベロ業態となりつつあります。創業の地・池袋の天狗1号店も神田屋に変更され、いま、同社を代表するブランドのひとつと言えるでしょう。類似業態で、昔ながらの定食屋をイメージした飲める定食屋「テング大ホール」(船橋、新宿)があります。
名物:肉刺し各種319円~、焼き餃子3個154円、塩つくね1個198円
酒類:サッポロ系
価格指標:生ビール319円、酎ハイ209円、煮込み385円
一人飲み度★★、酒場感★★、リラックス度★★★★、安さ★★★★(※池袋、渋谷など後発でオープンした店の感想)
満天酒場(大庄)
庄やでおなじみ、大庄の低価格業態。コンパクトなテーブルを多数配置したにぎやかな雰囲気のつくり。昭和の大衆酒場を多少アレンジしたもののムードはそのまま、ですので年配の方も落ち着いて飲めると思います。庄やも大衆ムードが強いですが、より横丁感をだしています。旗艦店は大森。
名物:やきとん・焼き鳥105円、モツ煮込み430円、お刺身 紅白満足盛り580円
酒類:サッポロ系
価格指標:生ビール480円、酎ハイ330円、煮込み430円
一人飲み度★★★、酒場感★★★★、リラックス度★★、安さ★★
三代目鳥メロ(ワタミ)
続々と増えた焼鳥・唐揚げ業態のひとつ、ワタミが提案する低価格は「鳥メロ」。インパクトが強いアサヒスーパードライ中生199円(税込218円)の看板はチェーン店がしのぎを削る都心駅前立地でも目をひきます。ワタミの他店同様、基本的にはテーブル席。宴会などで、普段大衆酒場にあまり行かないような人たちも一緒になって利用できるムードです。タブレット注文。お通しあり。
名物:ぷるぷるダレの焼鳥108円、串揚げ108円、清流若どりのモモ一本焼976円
酒類:アサヒ系
価格指標:生ビール218円、酎ハイ328円、煮込み430円
一人飲み度★、酒場感★★、リラックス度★★★、安さ★★★
バリヤス酒場(モンテローザ)
モンテローザは白木屋などを運営する会社。バリヤス酒場は平成のチェーン居酒屋に求めていた複数人でファミレスの延長線で立ち寄ってもそこそこ楽しめる、というテイストを残しているように思います。一般的に低価格・一人飲みは小箱の店舗が多いものの、バリヤス酒場はモンテローザらしく、多少人数がいても安心して吸い込んでくれるような、広めの店舗が多め。お通しあり。タブレット注文。
名物:鶏もも肉の一枚焼き308円、やきとり盛合せ 5本638円、鶏むね肉のタタキ352円
酒類:キリン系
価格指標:生ビール394円、酎ハイ207円、煮込みなし
一人飲み度★、酒場感★★★、リラックス度★★★、安さ★★★
アカマル屋(三光マーケティングフーズ)
均一価格で一世を風靡した金の蔵を手掛けてきた三光マーケティングフーズの新ブランド。「笑顔が集う大衆酒場をコンセプトにした、昔ながらの店構えのお店」が公式コンセプトです。掲載時時点で首都圏に8店舗。丸椅子でテーブルも比較的簡素ですが、備長炭の炭火焼きの焼鳥や、季節メニュー(タチウオたたきなど)に特長があり、料理で楽しめます。樽生ビールはなんとアサヒマルエフです。上場企業のチェーンとしては結構個性強め。
名物:黒もつ煮込み528円、厚切り牛たんの炙り焼き748円、ノドなんこつ176円
酒類:アサヒ系
価格指標:生ビール528円、酎ハイ363円、煮込528円
一人飲み度★★★、酒場感★★★★、リラックス度★★、安さ★
やきとり〇金(ダイヤモンドダイニング)
わらやき屋、今井屋本店など、個性的なコンセプト居酒屋のブランドを多数持つダイヤモンドダイニング系の低価格業態。セルフサービスながら飲み放題30分299円は破格。焼鳥は1本20g(公式記載より)と小さいものの、1本87円とこちらも安い。にんにくがまるごと入ったタレ壺につけて食べます。
名物:やきとり63円~、宮崎炙り鶏のゴロ焼き638円、ビールを含む70種類飲み放題30分299円※最短1時間
酒類:アサヒ系
価格指標:生ビール・酎ハイ30分299円、煮込み539円
一人飲み度★、酒場感★★★、リラックス度★★、安さ★★★★
銀だこハイボール酒場・銀だこ酒場(ホットランド)
中食業態の銀だこがはじめた「銀だこハイボール酒場」・「銀だこ大衆酒場」。角ハイボールをはじめとするサントリー商品とのペアリングを前面に押し出しています。従来のたこ焼きイートインの域を超え、たこ焼き以外がでも飲ませることに特徴づけたお店。着実に店数を増やしています。最近のメニュー構成をみると、たこ焼きはあくまでサイドメニューで、チャーシューなど新たな主役を続々と誕生させています。ハッピーアワー(18時まで生ビール319円)を狙ってうまく飲めばセンベロで満喫できます。お通しあり。
名物:ソースたこ焼き341円、銀の焼豚682円、銀のたこ刺し528円
酒類:サントリー系
価格指標:生ビール539円、酎ハイ(酒場・こだわりレモンサワー)429円、もつ煮込み※2人前858円
一人飲み度★★★★、酒場感★★★、リラックス度★★、安さ★★
首都圏ローカルチェーン
晩杯屋(トリドール/アクティブソース)
加古川の焼鳥店「とりどーる」からはじまったトリドール傘下の立ち飲み店。晩杯屋の原点は赤羽の赤羽の老舗酒販店直営の立ち飲み「いこい」です。
トリドール傘下になる以前、武蔵小山に一号店を出店して以来、安い、早い、旨いの「いこい」のスタイルをチェーン店化させてきました。硬派な立ち飲みのぴりっとした雰囲気をやや和らげ、だれもがほっと飲んでいられるムードになりました。それでいて、価格設定は赤羽値段なのですから、素晴らしい限り。2000年代の低価格立ち飲みチェーンの代表格です。
いろいろセンベロチェーンができましたが、一周回ってやっぱり晩杯屋は安い!
基本的には、一人飲みは立ち飲みスタイルとなります。
名物:煮込み130円、マグロ刺し200円、納豆オムレツ150円
酒類:キリン系
価格指標:生ビール410円、酎ハイ250円、煮込み130円
一人飲み度★★★★★、酒場感★★★、リラックス度★、安さ★★★★★
ほていちゃん(フォートップス)
近年急速に店数を増やしたほていちゃん。母体はラーメン店などを運営するフォートップス。
特長はなんと言っても、幅広い世代にうけるメニュー構成と絶妙な価格設定。ターミナルの駅前1.5等立地で、この価格は衝撃的でした。酒場好きをある程度納得させるメニューと、コンビニ感覚でだれもが利用できる低い敷居と安い価格でとくに若い世代に大人気となりました。一人飲みはカウンターへ。ただしスペースは椅子席がメイン。公式コンセプトは「開かれた酒場づくり」。立ち飲みはお会計総額から10%オフ。
名物:自慢の牛煮込み418円、本まぐろブツ396円、立ち飲み限定サッポロラガー大瓶410円
酒類:サッポロ系
価格指標:生ビール473円、酎ハイ(プレーンハイ)319円、煮込み418円
一人飲み度★★★、酒場感★★★、リラックス度★★、安さ★★
じぃえんとるまん(さか萬)
横浜発の低価格酒場「じぃえんとるまん」。上大岡本店の人気が横浜市内に広がり、ぴおシティや戸塚、関内マリナードなどにも出店。東京都内にも1軒、蒲田にもオープン。クイックな立ち飲み業態で、どこか角打ちのような雰囲気。豚平焼きや自家製の鉄板焼ピザといった、鉄板料理を主体としています。赤星の大瓶がいつでもどこでも410円というのは、ビール好きには嬉しいところ。姉妹店として、低価格、立ち飲み中華業態の風来坊がぴおシティ内にあります。
名物:とん平焼き330円、MIXピザ(430円)、サッポロラガー大瓶410円
酒類:サッポロ系
価格指標:生ビール400円、酎ハイ260円、煮込み330円
一人飲み度★★★★★、酒場感★★★、リラックス度★★、安さ★★★★
かぶら屋(フーデックス/かぶら屋)
2002年、池袋からはじまった、立ち飲み形式のやきとん・串カツ・静岡おでんの店「かぶら屋」。公式コンセプトは「小さな居酒屋」。お通し、席料なし。さっと1杯1品をジューススタンド感覚で小銭で楽しむことができます。他の低価格チェーンとのはっきりとした違いは、全体的に静岡テイストが強めというところ。黒はんぺんフライをつまみに、静岡らしい抹茶ハイを飲めば、気分は静岡駅前・紺屋町です。ちなみに、実際に静岡にも2店舗あります。
名物:やきとん88円~、黒おでん88円~、抹茶ハイ329円
酒類:アサヒ系
価格指標:生ビール438円、酎ハイ329円、煮込み308円
一人飲み度★★★★、酒場感★★★、リラックス度★★、安さ★★★★
蔵元居酒屋清龍(清龍酒造/清龍酒蔵)
埼玉・蓮田の造り酒屋・清龍酒造のグループが運営する、蔵元居酒屋清龍。都心に多く出店し、他のチェーンと明確な安さもあって、高田馬場店、池袋店などは学生時代にお世話になったという人も多いでしょう。筆者も清龍は昔も今も熱心に通っています。
新橋、三田、歌舞伎町など閉店してしまったものの、いまあるお店はリニューアルしてだいぶ今風になりました。自社の日本酒ということもあり、140mlの普通酒(常連さんはヒヤマスと呼ぶ)が190円+税ととても安いです。定番料理では、皿うどんやピザ、チャーハンなど炭水化物が人気なのも、学生・サラリーマン向けの居酒屋らしい。おすすめは、日々かわる差し込みメニューの刺身や天ぷら、兜焼きなどです。
上野2号店は寿司屋からの業態転換で他店と雰囲気が違います。全店お通しあり。
名物:海鮮ぬた528円、皿うどん528円、清龍普通酒209円
酒類:サッポロ系
価格指標:生ビール439円、酎ハイ(レモンサワー)275円、煮込み385円
一人飲み度★★★、酒場感★★★、リラックス度★★★、安さ★★★
さくら水産(テラケン)
元祖、低価格海鮮居酒屋。魚肉ソーセージやオニオンスライス、らっきょう…コンビニのチルド惣菜感覚の小皿料理が50円で売られていたのは昔の話。いまは大箱海鮮居酒屋として、刺身や焼き魚を中心としたメニュー構成です。
ワイシャツ姿のお父さんたちが2~3名で連れ立ってやってきて、少し広めのボックス席で仕事終わりの晩酌を楽しむというのがよく見られたお店。お店の人も客層も落ち着いていて、若者メインの低価格酒場に落ち着かないという人にもオススメです。お通しあり。
名物:天然!生まぐろ刺し280円、おまかせ握り5種盛り780円、秘伝!海老マヨ430円
酒類:サッポロ系
価格指標:生ビール480円、酎ハイ(一般的なサワー)380円、煮込みなし
一人飲み度★★、酒場感★★★、リラックス度★★★、安さ★★
居酒屋一休(一休)
埼玉を中心に展開する一休。新宿店が直近でなくなってしまったのが残念。特徴的な会員制度があり、これに入ると結構安いです。同じ店に繰り返し行くという人ならば、一休の会員はオトクかもしれません。客層は賑やかめ。
席料(350円)あり。会員制度があり、会員になることで低価格になります。1DAY会員(実質的にチャージ)500円、通常会員6ヶ月3000円(下記、料理等の値段は会員価格で記載)
名物:山盛 まぐとろ580円、伝説の手羽先9ピース580円、博多牛もつ鍋780円
酒類:サントリー系
価格指標:生ビール190円、酎ハイ180円、煮込み280円
一人飲み度★、酒場感★★、リラックス度★★★、安さ★★★
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)