昭和43年からやっている野毛の大衆中華『萬福』。絵に書いたようなレトロな店でしたが老朽化のため2023年に移転し、明るく清潔な店に生まれ変わりました。それでも、お客さんは昔のままで17時前から中華屋飲みを楽しむ黒帯ノンベエさんたちで賑わっています。焼売もビーフンも評判ですが、今回はオンリーワンの美味しさ「カレー焼麺」ご紹介します。
競馬中継、家族経営、赤いカウンター

野毛の『萬福』が老朽化のため閉まるらしい。そういう噂はノンベエの間ではあっという間に広まるもので、野毛を居場所にしている人たちは、またひとつ名店が消えると惜しんだものです。実は移転して再開するということだったのですが、この出来事で『萬福』がいかに大勢の野毛人に親しまれてきたのか、わかりました。

以前の『萬福』は、園芸に囲まれて植物園のようになっていました。店そのものは昭和40年代から使っているもので、お世辞にも利用しやすいムードではなかったです。通い続けてきた方や、私のような老舗の個人店が好きな人には居心地がよいのですが、Z世代にはハードルが高すぎる気がします。

“いにしえ”の個人店は、建物の老朽化とともに店を畳んでしまうことが多い。そんな中で、『萬福』の新店再開は実に嬉しいニュースでした。真新しい建物でも、独特な書体の暖簾などから、只者ではないオーラが感じられます。あぁ、吸い込まれる。吸い込まれたい。

移転前から変わらないスタイルで「いらっしゃい」と迎えてくれた女将さん。高い天井、ピカピカの厨房、ダウンライトが照らす店内。それでも、ここは紛れもなく「町中華」です。

ほら、みてください。このテーブルは移転前から使っていたものです。わざわざ持ってきたのですね。
酒場の移転で一枚板のカウンターを新店舗でも使うというパターンは多々みられますが、パイプ脚のレトロ合板テーブルで移転前からの連続性を表現するというのは斬新。こういうのが大好きです。
そこへ集うお客さんは、移転前からかわらない大ベテランの皆さん。競馬中継をみていたり、タバコを吸っていたり。

カウンターもピカピカ。町中華のカラー、赤色に仕上げられていて、少しまぶしいくらい。新旧関係なく、家族経営の中華屋さんの赤いカウンターというのはいいものですね。聖獣麒麟も笑っている気がします。それでは乾杯!
焼麺と書いてヤキソバと読む

半世紀も続いてきた中華屋さんともなれば、ひとつやふたつ、常連さんたちの間で愛されている料理はあるものです。『萬福』はこれ、カレー焼麺です。

御当地のサンマーメンや、具だくさんな椎茸肉そばも人気ですが、麺が伸びてしまう汁物はお酒のつまみとしては落ち着かない。酒のつまみになって、お腹も満たす。なおかつ他では食べられないものは…と、野毛のノンベエの多くがたどり着くのが、このカレー焼麺なのです。
具はたっぷりの豚バラと玉ねぎだけというシンプルなもの。特徴はカレーの味付けにあり。中華系香辛料等とスープを効かせた中華屋らしい味付けです。そして、私達が普段食べている家庭のカレーの3倍ほどの粘度があります。

トロトロのカレーをこれでもかと巻き込んでくれる中太縮れ麺が、実に美味。ゴワゴワとしていて一部表面が揚がっている。五目あんかけ焼きそばに使うような麺です。
ソース焼きそばにカレーをかけたものとはまた違う、老舗中華でしか食べられい特別な味がここにはあります。
お昼は静かな野毛ですが、こちらはランチタイムから夜まで通しで営業しています。遅めの昼食に瓶ビールを1本つけて、背徳感のあるカレー昼飲みを楽しんでみてはいかがでしょう。
店舗詳細
店名 | 中華料理 萬福 |
住所 | 神奈川県横浜市中区宮川町1-9-2 ナミキコンフィアンス7 1F |
営業時間 | 月・火・木・金・土・日 11:30 – 20:00 定休日:水 |
創業 | 1968年創業 2023年移転再開 |