堀切菖蒲園『金子酒店』チャーミングな女将さんが迎えてくれる、奇跡の角打ち

堀切菖蒲園には昭和の風情を色濃く残す硬派な角打ちがあります。一見するとハードルが高く見える店ですが、いざ店に入ってみれば、笑顔が素敵な気さくな女将さんが迎えてくれます。通い慣れた常連さんたちと一緒に乾杯しましょう。

菖蒲園や荒川散策のあとは角打ちで一休み

京成本線の堀切菖蒲園駅は、普通電車しか停車しないローカルな駅。駅名の通り、近くには葛飾区立の植物園「堀切菖蒲園」があります。

堀切菖蒲園と聞くと、居酒屋愛好家の間では「焼酎ハイボール」の町というイメージがあるのではないでしょうか。駅周辺には、色付き・氷なしの”ボール”と呼ばれる色付きの酎ハイを提供する老舗酒場・もつ焼き店が何軒も点在しており、それらを巡るために訪れるファンは多いです。

そんな堀切菖蒲園駅前には素敵な角打ちがあります。店名は『金子酒店』。1957年の創業で、70周年を迎えました。

どっしり構えたレンガ張りの建物に、酒屋用のP箱を載せた業務用自転車が止まっています。どちらかといえば業務用酒販店の店構えなので、店を訪ねることにやや躊躇するかもしれません。ですが、ここは勇気をもって店内へ。

迎えてくれたお店の方は、笑顔が素敵な2代目女将さん。「いらっしゃい！飲んでいてね」と優しく迎えてくれました。

以前は立ち飲みでしたが、いまは完全椅子席となっており、カウンターに4人ほど、テーブルに4人ほど、あとは詰め合わせれば何人か、という大きさです。

壁には、”春夏冬一斗二升五合”という墨文字がおじさんの画とともに飾られています。「商い（春夏冬＝秋がない）、ご商売（一斗=5升の）、ますます（2升＝升升）、繁盛（5合＝半升）」の意味。

京成電車の行き交う音をBGMに女将さんと世間話をしながら乾杯。

樽生ビールはなく、瓶でアサヒスーパードライとキリンラガーを置いています。

聞けば、女将さんは何十年も定休日なしで店を開け続けてきたそうです。毎日、菖蒲園などを散策し、店を開ける前にちょっとした料理を準備し、正午頃から角打ちを開始。年金で暮らす方、飲食店で働く方、自由業の人など、日中から飲みに来るお客さんは意外と多いそうです。

手作りの肉じゃがをいただきました。温かい料理はこれだけ。でもしみじみ美味しい。

「最近、人気なのよ」と教えてくれた宝酒造のやわらかお茶割りをいただいて、これをすっと空に。つぎに、堀切を含む城東エリアにある酒場の焼酎ハイボール類をモチーフに開発されたという宝焼酎ハイボールを。

角打ちはゼロ軒目で、このあとは界隈の老舗酒場へハシゴするわけですが、缶入りのこれも十分に美味しいです。

冷蔵庫には、常連さんたちが贈り合っている缶酎ハイや、ペットボトルの和らぎ水（常連さんはお水をボトルキープしています）が入っていてローカルな風習に興味が湧きます。

小さラプラケースに入ったおつまみは、100円均一。

さらに酎ハイが進みます。

肉じゃがやカップ入りのちょっとしたお惣菜はありますが、メインはやはり乾きもの。沿線ゆかりのお菓子などもありました。子供向けの駄菓子も、角打ちでつまめば立派なおつまみです。

のんびりとした穏やかな時間が流れる素敵な角打ちです。近年、クラフトビールやビオワインをメインにしたスタイルや、ほとんど居酒屋とかわりないよう料理が充実する角打ちも増えていますが、それはそれとして、こうした王道の酒屋の”もっきり”が今も残っていることもとても素晴らしいことだと思います。