堀切菖蒲園「のんき」 常連がたすきを繋ぐ店。絶品しろモツと焼酎ハイボール。

堀切菖蒲園「のんき」 常連がたすきを繋ぐ店。絶品しろモツと焼酎ハイボール。

子供の頃からもつ焼きが大好物。趣味で、仕事で、いろんなお店で飲んで食べてきました。タレに特長があったり、独自の仕入れルートがあったり、はたまた店の歴史が美味しさをより引き立てたり、個性は様々。「お好きなもつ焼き屋さんはどちらですか?」と聞かれることがありますが、お店それぞれに特色と魅力があるので一概にはご紹介が難しいです。

ですが、あえて挙げるならば、いくつか味わってみてほしいお店の一軒として堀切の「のんき」があります。

おすすめは「しろ」(豚の直腸)。ここのしろは一度食べると忘れられない他にはない食感と味わい。一般的なもつ焼きのしろのイメージをもしかしたら覆すかもしれない、それはそれは独特なものなのです。

 

創業は60余年。創業時期が正確にわかっていないそう。現在お店を切り盛りする山崎さんは三代目。実は二代目、三代目ともに、のんきの常連さんが暖簾を受け継いでいます。山崎さんはもともと会社員だった方で、のんきの味に惚れ込んでこの世界に入った方。飲み屋好きで、プライベートでも酒場めぐりを楽しんでいらっしゃいます。

 

店内はごくまれにもつ焼き店で見かけるニの字カウンター。店の中央に厨房を設け、道路側に焼台を配置した構造です。お客さんは店の両側にある扉から入ります。全席カウンターですが向かいのカウンターの様子が眺められ、時間を共有するお客さん同士、遠すぎず近すぎず、不思議な一体感があります。

 

下町・城東エリアの飲み物といえばやはりこれ。色付きシュワシュワ、焼酎ハイボール(通称:ボールもしくは酎ハイ)です。

お店ごとに独自の配合があり、古くからやっているお店は一軒たりとも同じ味はありません。ボールの味で他店との差をつけ集客をしていたなんて話は、老舗の大将からよく聞く話。だからいまでもレシピは企業秘密というお店がほとんどです。

 

それでは乾杯!

ニットク製の酎ハイサーバーから注がれ、ゴボゴボと大きく泡を立てた、強炭酸の一杯。ドライながらほんのり漂うレモンの香り。

氷なし、スライスレモンがちょこんと浮かぶのんきのボールは、ボールの標準スタイル。一杯290円というリーズナブルな価格設定も魅力で、ひとり3杯は当たり前かもしれません。(お酒は適量で。)

 

もつ焼きは1皿4本で440円。看板メニューのしろをはじめ、かしら、たん、はつ、ハラミ、レバー、はつもと、シロコロ、ナンコツと並びます。

小皿メニューや刺し系は種類は多くないものの、どれも食べてみたくなるものばかり。

 

焼き物ができるまでの時間は冷やしトマトで繋ぐのが好き。ボールとトマトで味覚をすっきりリセットさせたところで、こってり濃厚なもつ焼きが食べたいですから。

 

しろとかしらを焼いてもらいました。

まずはしろから。パリッとした食感の先にトロトロふわふわな脂が舌の上で溶けるように広がります。食感を例えるならば肉厚のうなぎ倶利伽羅焼きでしょうか。濃いめの甘ダレとの相性も抜群によく、クサミは皆無。煮込みながらとことん削ぎ落とす、初代から受け継ぐ仕込み方をされているそうです。

脂とタレのコクが焼酎ハイボールの爽やかさとシンクロし、いつもより多めに食べて飲んでしまいそう。

 

かしらやナンコツなども丁寧な串打ちと、絶妙な焼き具合でしっとりとしてジューシー。

 

のんきの飲み物といえば焼酎ハイボールがイチオシですが、この雰囲気とこの料理、歴史あるビールがあわないはずがありません。のんきのビールは長年サッポロビールです。

 

赤星にあわせて、豚足スライスを。硬いホネはなく、箸で食べられるのがよいですね。ピリカラの酢味噌に軽く潜らせ頬張れば、しろの濃い味とは真逆であっさりとした美味しさ、ちゃんと旨さが続きます。

余韻にきゅっと赤星を飲めば、もう一回、しろのオーダーに戻りたくなるくらい。

堀切菖蒲園ののんき。三代目ご主人はフットワークの軽い方で、色々新しい取り組みもされています。そんなお店ですから、老舗酒場に敷居の高さを感じられている方にもおすすめ。一人飲み入門にもぜひ。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2020年2月以前)

 

のんき
http://nonkihorikiri.com/
03-3601-4052
東京都葛飾区堀切5-20-15
17:00~22:00(水定休)
予算2,000円