3代目の大将と、4代目候補の息子さんが切り盛りする家族経営の酒場。創業はなんと1957年で、老舗がひしめく葛飾の中でもひときわ長い歴史を誇ります。長く愛され続けている理由は、一度訪れればすぐにわかる、そのクオリティの高さと価格の安さ。品数も豊富で、どれを頼んでもハズレがありません。
激変する立石北口でギリギリ残った名酒場

長年、呑兵衛たちの聖地として親しまれてきた京成立石駅周辺。そんな味わい深い街も、近年の再開発によって風景が大きく変わりつつあります。駅の高架化だけでなく、北口に広がっていたあのにぎやかな商店街や横丁も今や更地に。現在は、区役所や交通広場、マンションの建設が進められています。
今回ご紹介する『三平』は、そんな再開発エリアから立石すずらん通りを挟んだ反対側にあります。かつてはスナックや焼き鳥屋が軒を連ねていたこの通りも、片側が更地となり、景色はずいぶん様変わりしました。そんな中で、いぶし銀の酒場を愛する私としては、『三平』が今も変わらず残ってくれていることが、ただただ嬉しくてなりません。

口開けに合わせて入店。続々と常連さんがやってきて、17時30分には座敷も含めて満卓となりました。ちなみに、「アルコールの入った方お断り」というのがこちらのルールです。

建て替えているとはいえ、ここは昔ながらの酒場。独特な構造の小上がりはどこか懐かしい雰囲気です。

焼台の前に立つ大将に軽く会釈しつつ、まずは樽詰のキリンラガービールを。キリン一番搾りではなく、ラガーを出し続けているのも歴史が感じられます。それでは乾杯!
私のオススメはこちら!

暖簾に大きく掲げられた「もつ焼 三平 たれ自慢」の文字。その言葉通り、三平のもつ焼きは、とにかくタレがいい。どんなに店内が賑わっていても、大将の焼きの手つきは実に丁寧で、炭火を巧みに操りながら串を次々と焼き上げ、仕上げにタレ壺へくぐらせていきます。その所作を間近で眺めながら飲める、L字カウンターの角席はまさに特等席です。
串は10種類以上ありなにを注文しようか迷うかもしれません。私のおすすめはシロとキンツル(喉肉)。噛むほどに肉汁が滲むキンツルにコク深いタレがよく合いますし、クサミ皆無ながら濃厚なシロも秀逸です。

丁寧な仕込みを感じるもつ焼きが、1本わずか99円という嬉しい価格設定。実はお酒も驚くほど安く、城東エリアではおなじみの焼酎ハイボールが、2025年春の時点でなんと275円という激安ぶり。美味しくて安い――これぞ、立石酒場の真骨頂です。

三平の焼酎ハイボール(以降 ボール)は、提供時はプレーン、いわゆる“白ハイ”。卓上には調味料と一緒にエキスが置かれていて、あとは自分の好みでちょい足しして味を整えるスタイルです。これがまた楽しくて、つい二杯目、三杯目と手が伸びてしまいます。

ボールとの相性抜群な塩ホルモンも、『三平』の昔からの名物。ここを訪れたなら、ぜひ一度試してほしい一品です。ニンニクをしっかり効かせたテッポウ炒めに、黒こしょうでピリッとアクセント。さらに辛味噌や辛子を添えていただくのですから、パンチのある濃い味わいがクセになります。

ここまでもつ焼きを中心にご紹介してきましたが、『三平』の魅力は、それだけにとどまりません。まさに“元祖・総合居酒屋”と呼びたくなるほど、品数の豊富さも見逃せないポイントです。魚介の刺身や焼き魚はもちろん、アジフライにオムレツ、ピザ、皿うどんまで。その数、なんと50品以上!

気にいったのは、チージャガ。じゃがいものスライスにたっぷりのチーズを載せて焼いたもの。

縁はパリパリ、中央はトロトロ!
大将と息子さんだけでなく、スタッフの皆さんもご家族という、なんともアットホームな一軒。そんな『三平』は、『三平』で飲むことを目的に京成線で遠征する価値あり。必ず1軒目にどうぞ。きっと、心地よい酒場時間になるはずです。
店舗詳細
品書き



店名 | 三平 |
住所 | 東京都葛飾区立石4-27-16 |
営業時間 | 平日 17:00 – 22:00 土 15:00 – 20:00 日定休 |
創業 | 1957年 |