今日は山口県南部、瀬戸内海に面した港と工業の街、周南市・徳山から、鮮魚店直営の店「いかざき」をご紹介します。
徳山といえば、新幹線の車窓から瀬戸内海とともに巨大な重工業地帯が見える工業都市です。それも中心市街地の一部だけ。少し離れれば、そこはのどかな漁村の景色が広がり、いくつもの島々が浮かぶ瀬戸内らしい穏やかな海を見ることができます。
周南の海産物といえば、徳山ふぐに、周南鱧、そして日常的な魚介類では周南ダコが名物。徳山港に併設した魚河岸(周南市地方卸売市場水産物市場)には早朝多くの瀬戸内の幸が集まります。目指す「いかざき」はそんな市場に出入りする大将が切り盛りする、”魚の旨い店”です。
緩やかな山と小さな田畑、ときどき見える瀬戸内海。穏やかな山陽エリアを列車に乗って、いざ徳山へ。東京から東海道・山陽新幹線で約4時間10分、広島からなら約20分。
ここ、徳山はかつては徳山藩の城下町であり、山陽道の宿場町として栄えました。現在も交通の要衝で、徳山駅に隣接した徳山港からは大津島や、遠く大分県は豊後半島にある竹田津港までフェリーがでています。
駅北口は街の中心街の正面にあって、商店街や飲食店街が広がっています。「いかざき」へは徒歩5分ほど。
店先に並ぶトロ函や生簀の間を進むと店の入口が見えてきます。調理場に向いたカウンター席と4人がけテーブルがいくつか。宴会用の座敷もあるそうです。家族経営で、大将を中心に皆さんで切り盛りされているアットホームな雰囲気。
カウンター席に腰掛け、ふと目の前のショーケースを見てみれば、驚くほど魚が詰まっています。さすが瀬戸内の鮮魚酒場。鯛をはじめ、アジ、セグロイワシ、メジ、めいぼ(カワハギ)、サワラ、コチ、ヒラメ、ヤリイカなど、その日の仕入れ次第で様々な魚種が揃います。
釣り好きのお客さんも多いようで、店内には魚拓や写真が所狭しと並んでいます。これは期待ができます。
まずはいつものビールから。樽生はキリン一番搾り(中550円)で。では乾杯!
瓶ビールではアサヒスーパードライとキリンラガー(ともに中ビン550円)が選べます。日本酒は定番酒に松竹梅豪快(480円)、そのほか山口の地酒で、純米無濾過の雁木、特別純米の貴、吟醸の東洋美人(各300ml 1,200円)などを用意。
今日のお目当て、周南の地魚をつかったお刺身盛り合わせ(880円~)。
時計回りに、メジ、タコ、鯛、縁側、イカ、そしてヒラメ。鮮度抜群、鯛はほどよくしっとり。魚好きならば立ち寄って絶対に損はないお店。瀬戸内の魚介類を満喫できる盛り合わせです。
周南のタコは主に市西部の戸田地区で水揚げされ、今もたこつぼ漁が行われているそうです。活蛸をさっと茹で、その日のうちに食べるこの味は、一度知るとやみつきになります。
売り切りごめんの地酒もいくつかあり、徳山の地酒「原田」などを味わえます。地魚と地酒の組み合わせは、無理がないからよいのです。しみじみ感じる美味しさと、心地よいほろ酔い感に包まれて、さて、もう1品。
カレイに煮付けを出してもらいました。ひきしまった身に浅く沁みた煮汁。お昼用で定食につけるため小ぶりなものだそうですが、脂がのっていて満足感は十分にあります。
夜の営業では、その日仕入れている魚の一覧から、刺身、焼き魚、煮魚と調理法を選ぶことができるのも魅力(一尾600円~1000円)。珍しいれんちょう(舌平目)なども入荷があるそうで、魚好きにはたまりません。
そろそろ一次休憩の時間のようなので切り上げようとしましたが、「もう少し飲んでいけば?」とご主人。そう言われて帰るはずがなく、ご主人のイチオシ、山口は美祢にある大嶺酒造がつくるお酒「Ohmine Cup 100ml」(500円)をいただくことに。
特長は加水していない純米原酒のお酒。それでいてアルコール度数は14と軽く、ワインに近い印象です。100mlというサイズ感もお昼酒にはちょうどよいですね。
地元の練り物などをいれたおでんがあったので、それをおつまみにもらって、ちびちびと味わいます。果物のような風味が心地よいお酒でした。
駅から近くお昼もやっている「いかざき」は、土地の味を十分に楽しめる一軒。ご主人の娘さんは、「いかちゃん」の芸名で活躍するお笑いタレントだそう。なんでも、ちゃんと調理師免許を取得されているとか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2020年2月以前)
いかざき
0834-22-1764
山口県周南市本町2-26
11:00~14:00・17:00~22:00(日定休)
予算3,000円