長門市「大阪屋」 大当たり!地域の人といっしょに仙崎の魚を満喫する夜

長門市「大阪屋」 大当たり!地域の人といっしょに仙崎の魚を満喫する夜

日本海にせり出した崖に、縁起の良い”ひふみ”にあわせて123本の朱色の鳥居が連なる「元乃隅稲成神社」などで知られる、山口県日本海側の街「長門市」。隣接する仙崎港は山口県でも有数の漁港として知られ、秋にとれる仙崎イカをはじめ、春の真鯛やイサキ、夏のキジハタやアジ、冬はダルマ(メダイ)などが水揚げされています。

昔からの港町で主な産業は漁業や水産加工業。美味しい魚の宝庫です。

今日はそんな長門市で、地元の漁師さんから教わった魚の美味しい店「大阪屋」をご紹介します。

 

長門市は、山陽新幹線の厚狭駅からJR美祢線で約1時間。または、下関からJR山陰本線で約2時間。まるで昭和で時がとまったようなノスタルジーな旅の景色が残っています。

 

昭和の松竹映画のワンシーンのよう。いまにも寅さんが列車から降りてきそうな雰囲気です。

 

長門市駅からJR仙崎支線で1駅いくと、そこは仙崎港。かつてここから多くの人が海の向こうへ旅立ち、そして帰ってきた歴史があります。

 

磯の香りを楽しんだあとは、目指すは目的の店「大阪屋」。長門市駅南側にある四軒長屋にはいる一軒です。お店のキャッチコピーは「漁師直伝田舎料理」。

 

L字10席のカウンターは地元の方でほぼ満席。ちょうど私は帰るところだから…という常連さんのご厚意で入れていただきました。地元の方のあったかい雰囲気に包まれているお店は本当によいものです。

左は老夫婦と、今年就職が決まったというお孫さん。お世話になったお返しにとお孫さんが連れてきたのだそう。右隣は水産関係の方。どうもどうも。

突き出しは日替わりで、今日はブリ南蛮。一品目から魚をだすお店は期待も高まります。

ビールは樽生がアサヒスーパードライ(500円)、瓶ビールは中ビンでキリンクラシックラガー(500円)。トトトと瓶ビールをビアタンに傾けて、それでは乾杯!

 

定番酒は地元のお酒。冷酒も五橋(岩国・酒井酒造)に東洋美人(萩・澄川酒造場)と、山口に飲みに来ていることを改めて感じられる顔ぶれです。

 

料理は何を食べても美味しいと、十年も通う隣のご主人と水産関係者に言われてしまえば、もうそれは間違いのないこと。腕自慢の女将の大坂さんとお姉さんが切り盛りするお店で、土地のコトバ混じりでもてなしてくれるのがなんとも言えない心地よさです。日替わりメニューでは牡蠣、ムツ、クジラのうね、メイボ(ウマズラハギのこの地域での呼名)の煮付けなどが加わります。

じゃあ、まずはお刺身からお願いします。

 

しばらくして出てきたその内容は、まぁなんと贅沢なことでしょう。これで800円は、地元価格バンザイ。

 

何が入るかはその日の海次第。ヒラメ、イカ、サザエ、ヒラマサという内容。イカやヒラマサは角がぴっと立つほどコリコリで鮮度の良さは言うまでもありません。噛むほどに磯の甘さをにじませるサザエ、しっとりと上品なヒラメも抜群に美味しいです。

 

すかさず余韻にあわせるは、東洋美人。芳醇旨口、土地の魚とあわせれば格別です。

 

焼き魚をお願いしました。今日は良いヤズが入っているそうです。ヤズ(ハマチ)、メジ、ブリと出世するブリのこども、「ヤズ」。全国的に活ヤズは出回っておらず、水揚げされたてを食べられるのはその地域の特権かもしれません。

冬の日本海でとれるヤズはこどもでも脂がのっていて、焼いても身がトロっとするほど。コクと旨味がつよく醤油は風味付け程度に軽く数滴でよいくらい。

 

刺身にも添えられている柑橘類は、「長門ゆずきち」というこの地域でのみ江戸時代から栽培されているという柑橘類。カボスとスダチの間の子で香り爽やか、昔から温泉に浮かべたり魚にかけたりして使ってきたのだと常連さん。

 

中がとろとろクリーム状になっているコロッケが美味しいと隣のお孫さんが教えてくれましたが、それはまたの機会に。

食に、人に、空間に風土を感じる「大阪屋」。長門を訪ねた際はぜひ立ち寄られてみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ ※外出自粛要請以前に取材)

 

大阪屋
083-722-6785
山口県長門市東深川864-1
17:00~21:30(日定休)
予算2,500円