下関市の中心部から離れた海沿いの城下町・長府には、奇跡のような食堂があります。1950年代創業の『菊舎』です。看板料理はお好み焼きと釜飯。通しで営業しており、甘味を楽しむ人もいれば、私のように旅先の昼飲みを楽しむ飲兵衛の姿もあります。
史跡目白押しの下関
下関は、壇ノ浦の合戦や下関戦争など、幾度もの歴史的な出来事の舞台となりました。史跡をめぐり、当時の人々の気持ちになってみるのもよいですが、私はもっぱらお酒と食でその地を楽しみたいタイプです。
この街はなにかと個性の強い店が多い。名物の河豚料理を食べさせる料理屋や、海峡の街らしい朝から営業する食堂、鮮度抜群の魚を食べさせてくれるいぶし銀の名酒場など、挙げればきりがありません。常日頃から「歴史ある街に名店あり」と言っていますが、下関はまさにそれ以外の何ものでもありません。
今回やってきたのは、JR下関駅からサンデン交通の路線バスに乗って壇ノ浦を過ぎ、長府で下車。長府もまた歴史ある街で、かつての城下町。武家屋敷など旧跡が保存されていますが、私が目指すのはお昼から通しで営業している『菊舎』です。城下町長府バス停からすぐ。忌宮神社の参道にある店です。
店は立派な三階建てで100人も収容できたようです。なんとも不思議なお店で、名物は釜飯とお好み焼き。甘味もあるため茶屋感覚で利用する人も多かったようです。現在は、のんびりとした地域密着の食堂といった雰囲気。
鉄板の前に立つ大将が丁寧に練り込みタイプのお好み焼きを焼いてくれます。
朱色の化粧板が貼られた長いカウンターと、小上がり。窓からは山陽沿岸らしい燦々とした日差しが店内を照らしています。いたるところに飾られたたぬきの置物に、旅先のローカル店らしい情緒がありました。
素朴な海鮮系お好み焼きを肴にビールが進む
下関の市場内食堂で朝食を兼ねてビール・日本酒を飲んできたため、こちらではいきなりお好み焼きから。品書きにある一品料理のカマボコも気になります。
京都のベタ焼き、広島のソバ付きなどと比べれば至ってシンプル。レトロな食堂らしい懐かしいお好み焼きです。
マヨネーズとソースはお好みで追加できます。
表面はパリパリでなかはフワフワの仕上がり。玉子がたっぷり使われています。家庭でつくるお好み焼きと見た目は似ていても、さすが長年続いてきた店の技は違います。中からタコがコロコロとでてきました。
令和の時代に、かつての城下町とはいえ駅から離れたこうした場所で、お昼から通しでやっている老舗お好み焼店があるのは奇跡としか言えません。機会は多くないかも知れませんが、下関散策の際はぜひ飲みに行ってみてください。
詳細
品書き
- 瓶ビール キリンラガー大瓶:750円・小瓶:520円
- カマボコ:450円
- にゅうめん:750円
- 貝柱釜めし:1,300円
- お好み焼き玉子:650円
- お好み焼きたこ玉:880円
- お好み焼き いか玉:880円
- お好み焼き えび玉:880円
- お好み焼きデラックス:1,080円
- 焼きそば:800円
店名 | 菊舎 |
住所 | 山口県下関市長府土居の内町1-18 |
営業時間 | 月・火・水・金・土・日 11:30 – 20:30 木 定休日 ■ 定休日 木曜日、第3水曜日(いずれも祝日の場合は翌日) |
創業 | 1950年代 |