静岡『泰平』15時過ぎから西日を浴びて、静岡の海の幸に舌鼓を打つ

静岡『泰平』15時過ぎから西日を浴びて、静岡の海の幸に舌鼓を打つ

2021年7月12日

午後3時過ぎから暖簾がかかる夕暮れの呑処「泰平」。歓楽街にありながら木造の平屋建てという贅沢な造りで、民芸調の空間が心地いい一軒です。静岡の海の幸を中心に、何を頼んでも美味しいと地元で評判の居酒屋を訪ねます。

静岡市の歓楽街「両替町」は県下最大の歓楽街です。街の歴史は古く、徳川家康が銀貨鋳造所をこの地に設置したことで両替町となりました。銀貨鋳造所はのちに江戸に移され、「東京・銀座」の街が生まれます。

歴史ある街に名酒場あり。静岡駅に近い老舗酒場が集中している両替町ですが、「泰平」もそうした一軒。お客さんは地元客が多く、とくに近隣の会社のOB・OGや、年配の夫婦の姿があり、店の雰囲気を一層落ち着いたものにしています。長く飲んできた人が集う店はいいお店です。

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老舗のぬくもりを肴に

営業時間は他店と比べて早く、静岡では貴重な午後3時台から飲める居酒屋です。午後の強い西日も、暖簾の隙間を通じてやわらぎ、店を優しく照らします。

店に入ると眼前に巨大なカウンターが現れます。調理場が横に長く、それを眺めるようにL字の長い客席が広がっています。店の奥には座敷もあり、この日も口開けから利用されていました。

長く使われてきた居酒屋は実に良いものです。何年もそこに繰り返し人々が集い笑ってきたことで、空間には予熱のようなものがあるように思えて仕方がありません。

さて、カウンターをなでていても変な人なので、ビールをお願いします。ビールはアサヒスーパードライキリンレギュラーラガーサッポロ生ビール黒ラベルサッポロヱビスの4種類が用意されています。大瓶がストンとでてくるのも気持ちがいいものです。なお、樽生はアサヒスーパードライ。

大瓶を傾けトクトクと注いだら、乾杯。

品書き

品書きはカウンターの上部に張り出されています。刺身、焼き魚は日替わり。小エビ唐揚げ海老塩焼きながらみ海ツボなど。牛すじ大根煮は常連さんにファンが多いと聞きます。

グラタンも名物で、海老やホタテなど具材のバラエティが充実しています。都度グラタン皿にホワイトソースを敷くところから作るため、早めの注文が必要です。

老舗の海鮮を中心とした店ながら、ハスバーグ自家製コロッケなど、大衆酒場的な料理もあります。どれも間違いなく美味しいと、席を隣にした何十年と通う常連さんが教えてくれました。

他の人の料理を用意する様子を眺め美味しそうだからと便乗注文をしたり、大皿を指名して注文できることはカウンター席の醍醐味でしょう。もつ煮キンメ煮付けが美味しい香りを漂わせています。

土地の肴で黄昏酒

コチ刺し

今日の刺身はカツオコチヒラメと…と言うように、席に近い板前さんが日替わりの刺身を紹介してくれます。

こちらはコチ刺し。梅雨の時期から美味しくなる初夏の魚です。鮮度がよく弾力ある身は、花板さんの包丁で切れ込みがはいり、より旨味が感じられるように仕上げられています。

海ツボ

静岡は巻き貝を置く居酒屋が多く、聞けば昔は清水や由比、相良などでは駄菓子屋にも貝類が並んでいたそうです。栄養分が豊富な河川が多数流れ込む駿河湾らしい土地の味。ぜひお店で味わいたいですね。

こちらもながらみ、そして海ツボがあります。海ツボのほうが高級なのだそうで、バイ貝の一種。ですが三陸のバイ貝とは味が異なるように思います。海ツボのコクと苦味は、一度食べるとクセになります。

志太泉純米

こうなると、欲しくなるには地元のお酒。藤枝・志太泉酒造の志太泉純米生貯蔵酒を。

午後の日差しを浴びてちょっと疲労感のある身体に、ぎゅっと旨味が濃縮された海ツボと日本酒の甘さが染み込んでいきます。あぁ、なんて良い時間。

自家製さつま揚げ

長く通うお客さん同士が楽しく過ごされている様子をぼーっと眺めていると、皆さんこぞってさつま揚げを頼んでいらっしゃる様子。そうなると、こちらも当然便乗したくなります。

きつね色の面はパリっとしていて、中はぷりっと引き締まっています。イカゲソ、玉ねぎなどの食感も心地よく、箸が進みます。小ぶりなので、日本酒のお供としてもぴったり。

この店のカウンターは座っている時間が経つほどに心地よく、椅子に根が生えてしまいそうになります。人気店ですから良いところで切り上げたいものですね。

ごちそうさま。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名泰平
住所静岡県静岡市葵区両替町2-3-11
営業時間営業時間
15:30~21:00(食事のL.O.は19:45頃)
定休日
日曜日休