静岡で現存する最古の酒場と言われている「大村バー」。創業はなんと1916年(大正5年)というから驚きます。
静岡は県庁所在地としては珍しく、鉄道駅と歓楽街が接する街です。遅くまで飲んでも駅までそう遠くはありません。駅前にはパルコやマルイといった大型ショッピング施設が立ち並び、その先にある両替町は規模の大きな歓楽街が広がっています。老若男女を飲み込むバラエティ豊かな店が立ち並び、街歩き、飲み歩きは楽しいエリア。大村バーはそんな両替町ではなく、さらにそのさき、人宿町に構える酒場です。
中心街の喧騒を離れ、落ち着いた大人の雰囲気漂う人宿町。そこにひときわ目立つネオン看板がみえてきます。ここが大村バー。いつみても絵になる魔性の看板です。
御年90歳という二代目女将が立っていた大村バー。現在は慣れた感じの職人さんと気風のよいお姉さんたちが切り盛りしています。
店名の”バー”の由来は店内に張り巡らされた弧を描くカウンター。長くくねくねしたカウンターに一人飲みのお客さんがずらりと並びます。もはや小上がりと呼べないほど大きい畳敷きの空間は、昭和の松竹映画のワンシーンになりそうな雰囲気。
三階まで宴会用広間があるものの、日によっては予約で埋まることもあるという人気店です。
大箱の繁盛店は、サーバーの数も多い。ビールメーカーの関係者もよく利用するお店と聞きますし、樽生ビールに期待。オートサーバーに加え、スーパードライブラックやクラフトビール「隅田川ブルーイング」用のサーバーまであります。
お店の奥に曲がり込んだカウンター席が落ち着くのでそちらへ。カウンタのすぐ後ろには鯉が泳ぐ池があり、なんとも不思議な雰囲気。昭和の竜宮温泉ホテル的なムード。
酔っ払って池に落ちないようにご用心。
大村バーのビールはアサヒスーパードライ。昔ながらの見た目同様にたっぷり入るアサヒブルージョッキ(500ml)に、ジョッキ内側に余分な気泡がないきれいな状態に注がれて登場です。では乾杯!
ビールは中ジョッキ600円(以下税別)、瓶ビールは大ビン680円。加えて珍しいドライプレミアム豊穣(中ビン550円)まであります。
静岡の土地の味が揃う品書き。名物のモツ煮込みに、静岡おでんの黒はんぺんフライなど。ながらみ(490円)や海つぼ(バイ貝・520円)があるのがあるのがおもしろいです。常連さんに人気は、静岡産のかつお節をたっぷり振りかけた湯豆腐(390円)で、豆腐は餡で包まれています。
よいものを適正価格で、というのがお店のコンセプト。飛び抜けて安いわけではありませんが、どれも丁度いい価格でよいものを揃えています。
今日のおすすめの差し込みメニューには、仕入れ次第で生桜えびや生しらすが加わることも。
御前崎、焼津、清水などで水揚げされるかつおは、静岡を代表する魚の一つ。産出額は日本一です。
このかつお刺身(890円)が美味しいのなんのって。ねっとりとした食感。表面ににじみ玉虫色に光る脂は、上等なかつおの証。
おろし生姜といっしょに頬張ります。そしてすかさず生ビール。
よい刺身があるのならば、ビールだけで完結するのはたいへんもったない、と日本酒をオーダー。
定番酒は静岡市内(駿河区)の酒蔵、萩錦酒造がつくる普通酒で1合390円。萩錦上撰(420円)も選べます。特定名称酒は、焼津の地酒、磯自慢本醸造(580円)、磯自慢純米吟醸山田錦(980円)、そして萩錦蔵出し原酒(510円)も用意があります。
目の前でなみなみ注がれます。水飲み鳥のように迎えに行ってきゅっと飲めば、気分はだいぶ盛り上がります。磯自慢、好きなお酒です。
わかさぎ南蛮漬け(380円)。しゃきしゃき食感が楽しい一品。大きいものが入荷すると天ぷらでも提供するそうです。
冬季はお鍋も美味しいと評判。静岡は魚が美味しい老舗が多くどこへ行こうか迷うと思います。私も毎回迷います。
地元に根付き世代をこえて親しまれてきた大村バーへ、いつか飲みに行ってみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2020年2月以前)
大村バー 本店
054-252-2311
静岡県静岡市葵区人宿町1-5-8
16:30~22:00(日祝は15:30~・木定休)
予算2,500円