JR常磐線の沿線には、合同酒精、宝酒造、キリンビール、アサヒビール(下り方向沿線順)と、錚々たる大手酒類メーカーの工場があります。とくに松戸の宝酒造は日本最大級の甲類焼酎・チューハイの製造拠点です。
また、焼酎ハイボールや下町酎ハイの名で親しまれる色付き酎ハイを提供する老舗酒場の密集地帯を走る路線でもあります。
そんな沿線の個性に対し、ついにJR東日本が公式に「アルコール飲料に親しみが深い常磐線」と定義し、沿線を盛り上げると発表!
その一環として、JR東日本は毎年8月1日を『常磐線のチューハイの日!』、8月の一ヶ月間を「常磐線のチューハイの日」月間と定義し、沿線に工場を構えるアサヒビール、キリンビール、宝酒造と連携して「チューハイ✕常磐線」を盛り上げようと動き出しました。
なぜ8月1日かについて、JR東日本はチュー「ハイ」=”8・1″と発表しています。
常磐線はたしかにどの駅前にも長年親しまれてきた酎ハイが美味しい名酒場が存在します。そこで、当サイトも本日8月1日「常磐線のチューハイの日!」にあわせ、起点の上野駅から松戸駅までの全駅の駅前にある名酒場をご紹介します。さあ、暑い夏をシュワシュワのチューハイで乗り切りましょう!
目次
上野『大統領』
かつての東北の玄関口、上野。仙台まで伸びるJR常磐線の起点です。巨大な飲み屋街が広がる街なので、老舗酒場も多いですが、「常磐線チューハイの日!」に似合う酒場といえば、1950年創業の『大統領』でしょう。
国鉄・JRのガード下で70年以上続けてきたもつ焼き店。
継ぎ足し続けてきた濃厚な甘ダレをまとったもつ焼きと、馬モツでつくる煮込みが名物です。令和にオープンしたお洒落なやきとん店にはない、大きくてパワフルなもつ焼きがクセになります。
『大統領』の酎ハイは、焼酎と炭酸が別に提供されるスタイル。アサヒ系の甲類焼酎にウィルキンソン炭酸を注ぐドライな酎ハイが、口に残る豚モツの脂を流してくれます。
住所 | 東京都台東区上野6-10-14 |
営業時間 | 営業時間 10:00~23:30 日曜営業 定休日 無休 |
開業時期 | 1950年 |
日暮里『鳥のぶ』
日暮里で半世紀以上続く『鳥のぶ』は、この街を代表する名店のひとつ。しっかりと世代交代が行われ、数年前までは2代目が、現在は3代目が店を守ります。
老舗ながら新メニューの開発に熱心で、屋号からわかる鳥料理だけでなく、刺身、炒めもの、洋食まで160品を超える幅広い品ぞろえでお客さんを虜にしています。ファンが多いため、近年は予約なしでは入れないほどの人気店になりました。それでいて値段は大衆酒場価格なのですから驚きます。
50種類以上の地酒がありますが、ここはやはり初代から受け継がれてきた色付きの焼酎ハイボールを飲んで、店の歴史を楽しみたい!
住所 | 東京都荒川区西日暮里2丁目48-5 |
営業時間 | 営業時間 17:00~24:00(L.O)23:00 定休日 日曜日、祝日 |
創業 | 1969年 |
三河島『春駒 本店』
レトロな高架駅を降りると風向きによっては焼肉の香りが漂う三河島。ホルモン焼きや焼肉店が多いですが、名酒場も元気に営業中。この街で現存する最古の個人系居酒屋は北口に本店を構える『春駒』です。創業は1968年。
駅の南側の「駅前店」とは兄弟店の関係で、以前は新宿にも支店がありました。
ここは典型的な大衆割烹で、腕のいい板前さんがつくる刺身や焼き魚などをつまみに、チューハイやビールを楽しむ店。
手頃な価格で、家庭では食べられないような質のよい刺身が食べられると、酒類関係者も太鼓判を押す一軒です。
おすすめは、生搾りなのに良心価格、しっかり濃い生搾りレモンサワー。親しみやすい女将さんとちょっとした世間話をしながらいただく酎ハイは格別です。
住所 | 東京都荒川区荒川3丁目60−1 |
営業時間 | 17:00~23:00 火定休 |
創業 | 1968年 |
南千住『丸千葉』
貨物ヤードが広がる南千住は、昔から酒場の多いエリア。駅周辺にも魅力的な店はたくさんありますが、駅から徒歩5分ほど歩けば、山谷・日本堤と呼ばれる昔はディープだった街があり、ここにも名酒場が点在しています。
かつてのドヤ街も、いまや都心へのアクセスの良さから住宅街となり、簡易宿泊所はバックパッカーで賑わっています。山谷の三ツ星レストランなんて呼ばれていた『丸千葉』も、多くの酒場ファンが集まる人気店となりました。
創業は1955年。店名の由来は創業者が千葉出身だったことからきています。フランクな下町気質の三代目店主「やっちゃん」の接客がすばらしく、もちろん料理も安定した美味しさ。
足立市場でやっちゃん自ら仕入れてくる魚介類が店の名物ですが、から揚げも絶品!しっかり濃い目に注ぐ、焼酎ハイボールと相性抜群です。
住所 | 東京都台東区日本堤1-1-3 |
営業時間 | 営業時間 [月・火・木~日] 14:00~21:00 日曜営業 定休日 水曜日・他不定休あり |
創業 | 1955年 |
北千住『大はし』
北千住を代表する老舗酒場『大はし』。創業はなんと1887年!日光街道の旧千住宿で130年以上続いてきた名店。開店10分で満席になる人気店です。
「大はし」と言えば「千住で二番」というフレーズ。名物の牛煮込みは、東京の人気煮込みの中でも一番甘く、すき焼き風の味付けが特長です。肉豆腐も絶品で、お豆腐が仲間と味を染み込ませています。煮込みは定期的に通いたいお店ですが、お刺身や揚げ物も種類豊富でリーズナブル。
知名度が高くて聖地巡礼のように訪れるお客さんもいますが、大衆酒場らしい雰囲気が漂い、大将と跡継ぎの若が流れるような接客を見ていると実に楽しいです。
名物ドリンクは梅割り。キンミヤ焼酎に飴色のエキスを垂らし、そのまま飲んでよし、炭酸で割った焼酎ハイボールにするもよし。
住所 | 東京都足立区千住3-46 |
営業時間 | 16:30~20:30 |
開業時期 | 1887年 |
綾瀬『駅前酒場』
「駅前酒場」は屋号の通り、綾瀬駅の真横。創業から40年以上愛され続ける人気店です。
店内はコの字型のカウンターのみで、20名入れば満席になります。初代からタスキを受け継いだのは先代の息子さんの奥さんで、少しずつ店を継承してきました。現在は、先代の息子さんと女将さん、そしてお手伝いの皆さんで営業しています。
店の名物は「ハイボール」。ただし、一般的なウイスキーハイボールではなく、城東エリアに多い色付きの甲類焼酎ハイボールです。酸味のバランスが秀逸。
駅前酒場創業当初から酒は「鈴木酒販」が配達し、同社が江井ヶ嶋酒造の「SS鈴藤 白玉焼酎」をプライベートブランドとして販売していることから、駅前酒場の焼酎ハイボールはずっと「白玉焼酎」です。
二代目のご主人が職場の豊洲から仕入れてくる魚介類は、どれもこだわりのものばかり。旬の安くて美味しい魚を良心価格で食べさせてくれると評判です。名物「駅前さつま揚げ」はびっくりするほど具だくさん!
住所 | 東京都葛飾区小菅4-10-5 |
営業時間 | 営業時間 [月〜土] 16:00~22:00(L.O.21:30) 定休日 日曜・祭日 |
創業 | 1977年 |
亀有『江戸っ子』
葛飾・亀有といえば、人気マンガの聖地として有名ですが、酒場愛好家、焼酎ハイボールファンの間では「亀有の関所」こと『江戸っ子』の存在のほうが大きいかも?
創業は1966年。平日の4時間しか営業しない店ですが、朝から仕込みをされており、営業時間より仕込みのほうが長い店。それだけ準備しても、50人ほど入れる店はあっという間に埋まり、もつ焼きが飛ぶように売れて完売してしまうのです。
一階はちょっぴりハードルが高そうな立ち飲みですが、二階は落ち着いて飲めるL字のカウンター席となっています。
この店が半世紀以上続いてきた人気の秘訣は、美味しいもつ焼きと、この「特製酎ハイボール」の存在でしょう。柑橘系エキスをベースにつくるオリジナルの風味付き酎ハイで、これがびっくりするほどもつ焼きと相性がイイのです。
醤油にんにくの「辛タレ」や「味噌タレ」など、味付けがいくつかあり、11種類あるもつ焼きにさらなる選択肢を加えています。
たしかに、ここの特製酎ハイボールを知ると、亀有「江戸っ子」を素通りできません!
住所 | 東京都葛飾区亀有5-32-1 |
営業時間 | 営業時間 [月~金] 16:20~20:30(L.O.20:00) 定休日 土曜・日曜・祝日 |
創業 | 1966年 |
金町『もつ焼き 大渕』
JR金町駅の南側、京成金町駅横の小さな踏切を越えた先に伸びる飲み屋街「栄通り商店街」。昭和で時間が止まったようなこの路地に、素晴らしいもつ焼き店がります。店名は『大渕』。食肉市場で働いていた大将が半世紀前に創業しました。
平成の中頃まで、金町は工業地帯でした。当時は工場で働く人々で大いに賑わっていたそうです。その頃からの常連さんをはじめ、最近は近隣に暮らす夫婦など若い世代が集うようになり、世代交代が進んでいます。
看板ドリンクは、オリジナルの焼酎ハイボール。既製品の味ではなく、この店独自の味付けで、酸っぱいとも甘いとも言えない、それでいてクセになる美味しさ。氷が入っていないのも城東の酒場の基本という感じがあり、実に良いです。
大ベテランの大将は接客専門。現在は二代目夫婦が切り盛りしていて、焼き場は若女将の担当です。下ごしらえに半日かけるような努力の結果が、ここに並ぶモツ料理たち。
週2日の定休日もタレの仕込みをしているそうです。日々の下処理を含め、私たちが想像する以上に美味しいもつ焼きを提供するのは大変なのだと思います。
ここのもつ焼きやタンの味噌漬けを食べると、手間を掛けただけの美味しさがわかります。
住所 | 東京都葛飾区金町5-26-4 |
営業時間 | 16:30~23:00(※月曜は21:00まで) 定休日 火曜・水曜 |
創業 | 1969年頃 |
松戸『酒処ひよし』
屋台として創業し70年続いてきた、松戸本町最古の大衆酒場。3代目が切り盛りしていて、平日の夜は会社帰りの人たちで大いに賑わっています。
屋台時代からの名物で、変わらない味と評判の「モツ煮」や、牛すじ大根が名物。筆者のオススメは牛すじ大根で、かなり大ぶりのスジ肉がゴロゴロと盛られています。
アジのなめろうも人気メニュー。チューハイ、日本酒、ビールが進む美味しさです。
品書きを見ると、チューハイというメニューがないことに気づきます。しかし、常連さんはチューハイを飲んでいる…。実はここ、炭酸と甲類焼酎を別々に注文する必要があります。好きな濃さで飲めますが、美味しい料理を前にして、ついつい濃い目になるのは仕方がないことです。
住所 | 千葉県松戸市本町19-9 |
営業時間 | 営業時間 [月~土] 17:00~22:30(L.O.22:00) [日] 17:00~21:00(L.O.20:30) 日曜営業 定休日 無休 |
創業 | 1949年 |
松戸から先も名店ぞろい!
北松戸『た古八』
千葉県松戸市上本郷858-2
新松戸『丸昇』
地元の人々が集まる鰻もある大衆割烹。鰻串は良心価格でちょい飲みにも利用できます。
千葉県松戸市新松戸2-28
柏『まことや』
気軽に立ち寄れるカウンターの串焼き店。
千葉県柏市旭町3丁目3−16
取手『さつま』
茨城県取手市取手2-9-16
牛久『串焼 すぎうら』
茨城県牛久市南1-4-27
水戸『満月城』
茨城県水戸市宮町2丁目1−6
勝田『山甚道場』
茨城県ひたちなか市勝田泉町3-12
日立『味どころ あかま』
茨城県日立市鹿島町1丁目1−14
いわき『のんべえ』
福島県いわき市平田町73−2
仙台『源氏』
宮城県仙台市青葉区一番町2-4-8
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
「常磐線のチューハイの日!」公式サイト(JR東日本):https://jobansenknow.jp/2615/