水戸『満月城』地酒と炉端で40余年。老舗酒場で滋味を楽しむ夜。

水戸『満月城』地酒と炉端で40余年。老舗酒場で滋味を楽しむ夜。

2021年2月1日

水戸徳川家の城下町として栄えた水戸。徳川御三家お膝元ならではの文化の集積がおこなわれ、徳川光圀によって開始された大日本史の編纂や、日本三名園の偕楽園の建設などは周知の通りです。

武家屋敷の敷地に沿うように大きく東西に長く伸びた城下町は、そのまま現在の水戸の中心街となり、繁華街の泉町、歓楽街の大工町として今に至るわけで、水戸の”飲み屋たち”にもその歴史の影響を感じます。

非常に規模の大きな水戸の飲み屋街。さらには大規模店は少なく小箱の個人店が多いなど、酒場好きには実に魅力的なエリアです。

このあたりで有名な老舗大衆酒場といえば、水戸駅すぐで40余年続く炉端焼き「満月城」でしょう。

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民芸調のぬくもりある空間、街を代表する酒場

昔の家屋の土間を飲み屋にしたかのような空間です。民芸調の調度品が並び、それを埋め尽くすように黄色い短冊が空間を包み込みます。

入ってすぐのL字カウンターはわずか9席ほどで、常連さんに人気の特等席。炉端料理が看板で、カウンター席ならば食材を確認してから焼いてもらうのが楽しみです。

品書き

瓶ビールはキリンラガー(520円※取材時)に加え、サッポロの大瓶(520円)も用意されています。

注目は日本酒です。茨城は実は知る人ぞ知る酒蔵密集県。関東地方では最多の36蔵があります。こちらでは、地元消費の定番日本酒を手頃な価格で飲ませてくれることが人気の理由の一つ。一品や稲里の瓶は300円前後で飲めます。

さらに日替わりの差し込みメニューで店長のおすすめのお酒が追加されます。

季節感のある特定名称酒がずらりと並び、実に楽しいです。

料理は定番の焼鳥を筆頭に、メヒカリ、いかげそ焼き、あじ開き、まぐろカマ焼きなど炉端焼きの魚介が並びます。

地元食材が当たり前に揃う

樽生ビールは茨城に工場があるキリンの樽詰ラガー。提供品質にこだわり、特別仕様のキリンの「満点生の店」のプレートが輝いています。

今日はタンブラー(430円)でスタート。それでは乾杯。

海鮮類は仕入れ次第でかわるものの、夏のホヤや秋の秋刀魚など、太平洋側の街らしい食材が用意されます。水戸といえば、近海物の生かつお銀皮造り(680円※取材時)はやはり食べておきたいところ。

小皿料理は300円前後、焼き物も500円前後と、「安くて旨い」の言葉どおりの手頃さです。

焼き物がでるまでの間、県内産を中心とした地元野菜を。元気でみずみずしいトマトや、お通しのナスの煮浸しを摘みます。

明るくテキパキとしながらも、非常に丁寧な接客をされる大将の仕事をなんとなく眺めつつ――。

茨城はメヒカリの名産地。新鮮なものを天ぷらにしても美味しいですが、一夜干しでぎゅっと引き締めてから焼くのも実にイイものです。ふかみのある旨味は、チリチリとした身からじんわりと溶けてきます。

飲むべきお酒は、瓶詰めの地域消費向けお燗酒

地魚のおいしさに誘われて、地酒を一本。そのままお燗につけられる瓶詰めで提供される清酒一品。水戸駅にほど近い水戸市本町でつくる、寛政二年創業の老舗酒蔵「吉久保酒造」の定番酒です。

飲み飽きない普通酒のお燗は、酒場料理との相性は言うまでもなく抜群です。

さらっとしたタレを続けて潜らせ、焼けてすぐに1本単位で供されるつくね串。

ハツは塩としっかりふられた黒胡椒が味を引き締めています。一般的な焼鳥の1.5倍ほどの大きさで、頬張ると肉汁が溢れてきます。

生レモンサワー(450円)。コンクを使わないドライな味のサワーで、やきとりの脂をすっと流します。

一品と飲み比べたい、もうひとつの瓶詰め地酒は、笠間市の酒蔵・磯蔵酒造がつくる定番酒「稲里」。リターナフルの瓶が実にかわいらしい。そして、このまま瓶ごと湯煎でお燗をつけるという、昔ながらの手法も魅力的。昔ながらの旨口です。

駅にも近いので、電車までの時間にかるく一杯という用途にも最適な満月城。昔ながらの赤提灯の居心地の良さに誘われて、帰宅途中の会社員の姿も以前は多く見られました。

ここは水戸の老舗酒場巡りの定番コースです。ほどよく郷土料理店寄りの大衆店へ、ご都合が良いときに訪ねてみませんか。

テイクアウトもやっていますから、帰りの電車で焼鳥をつまんで一献なんて用途にもおすすめです。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名ろばた焼 満月城
住所茨城県水戸市宮町2丁目1-6
営業時間営業時間
17:00~23:00(L.O.22:45)
定休日
日曜・祝日
開業年1976年