土浦「ほたて食堂」 明治2年創業。飴色の天ぷらとかつお刺し。

土浦「ほたて食堂」 明治2年創業。飴色の天ぷらとかつお刺し。

水戸街道千住宿から11番目の宿場町、土浦。霞ケ浦が街の中心部に入り込むこの地は、水運と街道を結ぶ物流の町としてヒトとモノが集まり、古くから栄えてきました。

歴史ある街には食の名店あり。明治期創業の料亭や蕎麦屋、昭和初期開業の洋食屋などがあり、非常に魅力的です。

今回は、そんな土浦でお昼酒。1869年(明治2年)創業の食堂「ほたて」で、名物の刺身や天ぷらを肴に、瓶ビールを傾けようと思います。

 

土浦は、東京駅からJR常磐線の特急ときわ号で約50分。茨城県県南地域の中心的な存在である一方、首都圏のベッドタウンという一面ももっています。商業施設を併設した立派な駅舎が土浦の玄関です。

 

歴史ある街ですが、駅舎から市役所までペデストリアンデッキで結ばれていて駅前は近代的です。

 

片や駅前路地を歩いてみれば、昭和で時間がとまったようなレトロな町並みに出会うこともできます。

 

 

 

駅から徒歩10分ほど。駅前の大通りと旧街道、現在の中城商店街が交差する場所に、「ほたて食堂」があります。かつて土浦で最も栄えた一角にあり、よせ棟づくりの建物に往時の賑わい感じさせます。

この中城商店街には、ほかにも県指定文化財の矢口酒店など歴史的な建造物が現役で使用されており、散策にはもってこいの場所です。ただし、まずはお酒を飲んでから…

 

魚屋として始まったほたて食堂。刺身や丼ぶり、鰻などを食べさせるお店として、2階の座敷は地元の人々で賑わったそうです。現在は6代目が暖簾を守り、天ぷらの店として営業中です。

 

営業時間は11時から19時まで。(水曜日を除く)

少し早めの一軒目として、少し遅めのお昼酒として嬉しい通し営業です。

 

天ぷら定食、天丼、単品天ぷら、そしてお刺身、アラ汁とメニューはとてもシンプルです。

 

料理屋時代を感じさせる立派なおかもち。「保立」は、創業者の姓で、店名の由来です。現在のご主人も保立さん。

 

午後の日差しが格子木ごしに優しく差し込む店内。テレビに流れるドラマの再放送をぼんやり眺めつつ、さぁ、はじめましょうか。

ビール(450円)は昔ながらの加熱処理ビール、キリンクラシックラガーです。一世紀続く食堂で、一世紀続いてきたキリンのビール。では乾杯!

 

お通しは切り干し大根の煮物。ほっとします。

 

お刺身(650円)は、かつお。かなり上等なものを厚切りにし、しっかりとした量で提供してくれます。

 

鮮度がよく、脂ののりがちょうどいい。爽やかな風味を楽しみます。それにしても、お醤油が深いさしちょこにたっぷり。ここ土浦は、関東三大醤油産地です。

 

美味しいお刺身を食べると、美味しいお酒が飲みたくなます。コップでもらった普通酒(300円)。お刺身と、この空間、そして親切な女将さんの接客で、特別な一杯に感じます。

 

こちらが「ほたて」の人気メニュー、天丼(上 1,150円)。料理屋だった「ほたて」は、先代(5代目)が天ぷらを中心に切り替えたそう。お酒のおつまみにと、ご飯は小盛りにしています。

 

ごま油で揚げた天ぷらは、やや甘めで飴色のタレをくぐらせています。立派な大海老が2本と、小柱、小エビ、三つ葉のかき揚げという内容。

 

見た目ほどに味は濃くなく、旨味が大変に濃厚です。熱々の衣に甘いタレがしっかり染み込んでいます。日本酒、ビールともに相性抜群。

 

アラ汁(単品では300円)は、魚屋時代をいまに伝える味。身がたっぷりついたカツオと、しっかりとした硬め、味濃いめの木綿豆腐のバランスがとてもよいです。もう一本ビールを開けてしまいそうなほどにお酒の肴になります。※お酒は適量で。

 

土浦の歴史がぎゅっとつまった、タイムカプセルのようなお店「ほたて食堂」。土浦散策の合間にはもちろんですが、東京・水戸間の移動の合間に、途中下車して訪ねる価値があると思います。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

ほたて
029-821-0151
茨城県土浦市中央1-2-13
11:00~19:00(水曜日は14:00まで・不定休)
予算2,000円