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東京から約120km。茨城県北地域の街、ひたちなか市・勝田を訪ねました。
水戸市と隣接するひたちなか市は、県内屈指の漁港「那珂湊漁港」や、春のネモフィラで有名な国営ひたち海浜公園などがあります。また、大手電機メーカー「日立製作所」の企業城下町としても知られています。
人が働く場所には酒場あり。駅前は古典的な大衆割烹からアイリッシュパブまで幅広いジャンルの飲み屋があります。そんな勝田の駅前から、今回は地元で水揚げされた新鮮な魚介類を食べさせてくれる地域で人気の大衆酒場「山甚道場」をご紹介します。
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目指す勝田は上野からJR常磐線の特急ひたち号で1時間少々。意外と近い印象です。
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ひたちなか市の玄関口、JR勝田駅。駅前の目抜き通り(昭和通り)をまっすぐ行けばひたち海浜公園です。
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駅周辺は飲食店が豊富。とくに居酒屋が多く、若い方が始められたようなビストロや、立ち飲み店なども豊富。
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路地をみてみれば、昭和の面影を色濃く残す飲食街があり、平屋の軒先に提灯が灯ります。さすがは工業都市、飲み屋が多くて巡りがいを感じます。
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JR勝田駅から徒歩5分。半世紀近く続く店「山甚道場」。
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これぞ正統派飲み屋の雰囲気。
那珂湊漁港が県内イチの水揚げを誇るカレイや、茨城の定番・カツオなどが並ぶショーケース。そこに向いたカウンターは調理風景も楽しめるすなかぶりの特等席。小上がりは掘りごたつになっています。2階には宴会用の座敷があり、メーカー系の方の宴会がよく入るそうです。ずらりと掲げられた短冊メニューに目移りしてしまいます。
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雰囲気がよいと飲みたい気持ちはますます高まるというもの。まずは樽生のキリンラガービール(中600円・以下税別)で始めましょう。では乾杯!
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茨城県にはアサヒビールとキリンビール、大手2社の工場があります。こちらのビールも2社併売。アサヒスーパードライとキリンラガー、ともに生大ジョッキ(700円)や瓶ビール(大ビン600円)を置いています。
屋号に「道場」とつくだけあって、全国各地の地酒が揃っているのも特長です。品書きに掲載がないものも多く、気になる方は要相談。県内のお酒もあります。
チューハイ類は400円、ホッピーセットは白と黒で50円の値段差があるのが不思議です。
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さーて、食べ物に悩むしあわせタイム。酒場の品書きをみて「むむー」ってしている時間はクセになります。皆さまも、この品書きでぜひ悩んでみてください。漁港まで6キロの距離。それを感じさせてくれる豊富な品揃えです。
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和洋中、なんでもござれの献立。1本100円~のもつ焼きもよいですし、港町らしく目光の唐揚げ(550円)なんてチョイスも良さそうです。脱皮ガニ唐揚げも魅力的。
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悩んだ末に選んだのは、今日のおすすめとして張り出されている、聞き慣れない名前「ギンバ藻」(500円)。銀葉藻と書くそうで、一般的な呼び名はアカモクです。秋田ではギバサ、北陸ではナガラモなど全国で呼び名が違うアカモク。こまかく包丁でたたき、甘い出汁で味を整えて完成。これは日本酒もよいですが、意外とビールとの相性もなかなか。
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もう一品は鹿島灘の岩牡蠣(900円)。茨城の岩牡蠣は手のひらをこえるほど大きく、さらに肉厚。ふくらみのある旨味がぎゅっと詰まっていて、大変に美味。
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すだちをしぼって、ちゅるっと。大きすぎるので包丁で4等分されています。
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心地よい風味の余韻にあわせるお酒は、筑西市(下館)の来福 純米 ふくまる。日本酒の定番には県内のお酒がなかったので相談したところ、もちろんありますよー、といくつか出してくれたうちの1本です。
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県産米の「ふくまる」をつかったお酒で、フルーティーさと優しいのどごし、すっと自然に広がるマイルドな味のお酒です。
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納豆包み揚げ(550円)。餃子の皮で大きな納豆を包んだお店の人気メニューです。
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さすが茨城、濃い味の納豆が楽しめます。ラー油、からしと醤油をつけて餃子感覚でいただきます。
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明るい皆さんがもてなしてくれる家族経営の大衆酒場。地元ことばで話す常連さんやお店の方々の会話もまた旅先の酒場の楽しさの一つです。
一人、二人でくるスーツ姿の男性や近所にお住まいのご夫婦はカウンターへ。グループでくる会社帰りの人々も小上がりに入り、帰る頃には満席近くになりました。地元に愛され、いまも賑わう老舗酒場にはずれなし。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
山甚道場
やまじんどうじょう
029-272-6200
茨城県ひたちなか市勝田泉町3-12
16:00~(日定休)