東京メトロ銀座線の浅草駅に直結する昭和30年竣工の「浅草地下街」は、日本最古の地下街です。
ここに、2020年3月、久しぶりに新店がオープンしました。店名は「雑派」(ざっぱ)。焼酎好きの大将と親切で人懐こいお兄さんが二人で始めた「雑派」。特長はなんといっても、こだわりの焼酎が300円均一ということ。料理も300円、お通しはなし。千円ちょっとあれば、ふらっと立ち寄り楽しめるカウンターの店です。
それでは、早速お店の様子をご紹介しましょう。
料理人からはじまり、一時期ITの世界に入るも再び飲食に戻り、念願の店を構えた大将の「たく兄」(左)。もともとお寿司屋だった建物を自分たちでリノベーションをし、開業に至ったそうです。
トーク上手で話をしているともっとここで飲みたくなるような雰囲気の「たく兄」は、なんと元、海洋調査船のコックさん。北極圏でオーロラを眺めた感動などを語ってくれるおもしろいお兄さんです。
お店のコンセプトは、「お店のお二人が生きていける程度にほどほどで営業する」らしい…。冗談で話しているように聞こえますが、古いとはいえこの立地ながら低価格で楽しませてくれるのはすごいこと。ずらっと並ぶ焼酎やウイスキーなどの洋酒はすべて300円。加えてちょっぴり贅沢な日本酒と、500円の中ビンスーパードライが用意されています。ホッピーセットは350円
コストを抑えるために、テーブルや入り口近くの立ち飲みカウンターは建築用木材を加工しニスを塗った自作のもの。
なにはともあれ、ビールで始めましょうか。ワイングラスで飲むビールも、不思議なお店ならむしろこっちが楽しい!では乾杯。
おつまみは、これだけ。だんだん増やすそうですが、いまのところ8種類。かつお刺身も300円とは、リーズナブルです。
にんじんシリシリ(300円)。
それに合わせるお酒は、やっぱり焼酎でしょう。30種類近くもある焼酎はなかなか銘柄が決められませんが、「芋でロックですっきり系」などと伝えると、焼酎好きのたく兄がチョイスしてくれます。
こちらの店舗を始める前はもつ焼き屋で働いていたとのこと。品書きには書くのが間に合っていないそうですが、話を聞くと煮込みもあるそうです。半熟玉子をのせた煮込みは、なかなかのボリュームです。明るい農村のロックをもらって、ちびりちびりと。
軽く一杯のつもりで立ち寄ったのに、気づけばあれもこれも飲みたいと頼んでしまいます。料理の種類はすくないし、お店もプロの造作ではない…せめて、プロとして接客でお酒を楽しく飲んでほしい、とお店のお二人の想いが伝わる、おもしろく、そして親切な接客に自然とお酒が進みます。
ねぎ山盛りのじゃこ豆腐(300円)。
黒と緑と白のふしぎな空間、「雑派」。駅直結、浅草の便利な場所に楽しい店ができたのが嬉しいです。
しかも、毎日10時過ぎから夜21時まで通しで営業予定だそう。これは使い勝手バツグンではありませんか。お近くで飲む前に、待ち合わせや乾杯の練習に利用されてみてはいかがですか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)