石岡『とんかつ関平』老舗がつくる分厚い辛味噌カツは唯一無二の味

石岡『とんかつ関平』老舗がつくる分厚い辛味噌カツは唯一無二の味

2020年11月6日

「それはそれは分厚いとんかつを出す、しかも辛味噌味。お昼から地酒や瓶ビールで一杯やるのは格別だ。」という情報を聞いて、茨城県石岡にやってきました。

とんかつ関平は、1979年(昭和54年)に創業した個人経営の街のとんかつ屋さん。平屋のちょっぴりレトロな店構えと、女将さんのあったかい接客、そしてなによりとんかつが美味しいと地元では評判の一軒です。

上野から常磐線で約1時間30分。常陸国の国府が置かれていた歴史ある街で、かつては常府と呼ばれていた地域です。霞ヶ浦の北端に接する立地でもあり、水運が盛んだったことから日本酒の生産が盛んに行われていました。現在も、「白菊」の広瀬商店、府中誉、「筑波」の石岡酒造、富士泉の「藤田酒造店」と、4つの清酒蔵があります。

目指す関平は、徒歩だと15分ほどの距離。10年前に廃止されたローカル私鉄の廃線を専用道路に作り変えた、BRT(bus rapid transit)「かしてつバス」がお店の近くを通っていますので、今回は珍しいBRTで目指すことにしました。

駅前に整備された専用バスのりばに停車中のかしてつバス。茨城空港へのアクセス路線でもあり、大きな荷物を持った旅行者の姿も。

バスはかつて線路だった場所を安定して走行。信号待ちも一般車両の走行もないのでとってもスムーズです。

大谷津南バス停下車。

創業から40年以上、渋い店構えと漂うとんかつを揚げる香り。はやる気持ちを抑え、そっと暖簾をくぐります。

入ってすぐに厨房を向いたカウンター関。その奥は民宿のような畳の小上がりが広がっています。昼食時ということもあり、スーツ姿や作業着姿のお客さんたちがカウンターでもりもりとご飯食べています。一方、小上がりは子供連れのお母さんの姿や、ご隠居さんがビールを傾けている光景がみられます。

とんかつでビールを飲まないなんて、もったいない。なにはともあれ、瓶ビール(660円)から。キンキンに冷えています。それではキリン一番搾りで乾杯。

お酒は地元の銘柄を用意。ビールは樽生はなく、中瓶のみです。

名物の「みそかつ定食」(1,540円)、ひれかつも人気だそう。辛味噌タレは単品でも注文できます。メニューはこれだけ。シンプルな内容で40年続いてきたお店です。

とんかつが出来上がるまで、これでビールをどうぞ、とお漬物をいただきました。

待つこと7分。人懐こいキャラクターの女将さんが、「お昼から飲むは幸せよね!」と話しつつ、みそかつを運んできてくれました。噂通りの大きさです。

みそかつと言うと名古屋のそれを想像しますが、関平は味噌というより、唐辛子ダレです。

とはいえ、見た目ほどに辛いわけではなく、茨城の料理に多い甘辛い味付け。揚げたてすぐに垂らしているため、味噌が衣を潰すことなくエッジがたったまま。薄めの衣ながら、サクっとした食感が大変心地いいです。

唐辛子の旨味と、ほんのりとした甘さ。他では食べたことのない、記憶に残る味です。農業産出額で全国2位になることもある、養豚が盛んな茨城。これもまた風土の味ですね。

土地の味には、土地のお酒。筑波山の伏流水で仕込んだ石岡酒造の特別純米生酒「筑波」(300ml・1,100円)。生酒ならではのフルーティーでピュアな味。とんかつには案外冷酒があうものです。

畳の小上がりで、差し込む光を遠くに眺めつつ、ゆっくりとしたペースでとんかつ飲みを楽しみました。

石岡駅からはちょっと離れていますが、あえて離れているからこそ飲みに行きたくなる、個人系食堂の魅力がぎゅっとつまっています。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名とんかつ関平
住所茨城県石岡市東石岡3-15-1
営業時間11:30~14:00・17:00~20:00(日定休)
開業年1979年