2021年2月2日、サッポロビールは麦芽100%使用の缶ビール「開拓使麦酒仕立て」をファミリーマート限定で発売しました。
このビール、実はビールファンをはじめ、多くの人々の間で話題になった商品です。
ビール工場にて製造がすでにおこなわれていたタイミングで、なんと缶のデザインにまさかの誤表記が見つかり、当初発売を予定してた2021年1月12日のわずか4日前となる、2021年1月8日に急遽発売中止が発表される事態となりました。
誤表記は、ビールの種類を表す「LAGER」を、「LAGAR」としてしまったというもの。すでに製造された食品を誤記を理由に発売中止するという発表に、製造済みビールが廃棄されることはもったいないと、サッポロビールファンならずとも、日本中のビールファンが心配しました。
そんな「サッポロ開拓使仕立て」<LAGAER BEER>が、本日無事に発売されたことを祝って、本記事ではもととなった開拓使麦酒についてご紹介します。
開拓使麦酒とは?
サッポロビールの起源は、明治のはじめ、国により北海道開拓のために設立された北海道開拓使という機関の言わば現業部門です。
もともとホップが自生していた北海道ですが、さらには原料となる大麦の栽培に適した風土や、日本人初の醸造技師がビールづくりを勉強した、ドイツ・ミュンヘンと気候が似ていることから、北海道の産業振興のひとつとして札幌でビールづくりが始まります。
その後、渋沢栄一などが関わり民営化し、様々あって現在に至ります。
このときにつくられたビールを再現したものが、札幌の一部施設限定で提供されており、これが「開拓使麦酒ピルスナー無濾過」です。サッポロビール博物館のテイスティングコーナー「スターホール」などで飲める「開拓使麦酒」は、大手ビール会社のひとつであるサッポロビールの商品群の中でも、ひときわ”レア”な存在です。
実はこの開拓使麦酒は、同社の通常のビール工場では製造されていません。
札幌市内にある、明治9年(1876年)に建設された開拓使麦酒醸造所をルーツとした同社工場の跡地を再開発した、大型複合施設「サッポロファクトリー」内に、この開拓使麦酒の製造所が併設されています。同施設は、市内各地から見渡せる旧・石川島播磨重工業製の大煙突がシンボルです。
いまでこそ、クラフトビールブームで小規模の醸造施設は各地に存在しますが、サッポロファクトリー内の醸造所は先駆け的な存在です。そして、大手ビールながら、手作業が多く一層のこだわりを持ったビールの製造がおこなわれてきました。※製造は株式会社札幌開拓使麦酒醸造所
併設されたスタンド(運営はサッポロライオン社)では、「復刻の一杯」と題して、開拓使麦酒を味わうことができます。
開拓使麦酒ピルスナー無濾過。
文字通り、サッポロビール(現在の愛称赤星ことサッポロラガー)の原点に近い味を再現したこのビール。黒ラベルなどのように副原料を含まない、麦芽とホップだけでつくった、少しアンバー色がついた濃い味のピルスナービールです。
『麦とホップを製すればビイルという酒になる』。これは1876年9月の開業式で書かれた、同社初のキャッチフレーズのようなもの。いまで言えば「乾杯をもっとおいしく。」でしょうか。開拓使麦酒はこのフレーズのとおり、麦とホップだけでつくられています。
※写真はサッポロビール博物館付近につくられたレプリカです。
このように、開拓使麦酒ピルスナー(ラガー)は、札幌に行けば飲めるのですが、如何せん、いまは旅が難しいとき。そこで嬉しい存在が、今回の「LAGAR BEER」の開拓使麦酒仕立てです。
色と味わい
「開拓使麦酒ピルスナー無濾過」と同様に、開拓使麦酒醸造所でおこなわれていた伝統的な「3回煮沸製法」を採用したビール。この作り方で缶商品が飲めるのは大変貴重な機会です。製造はさすがにサッポロファクトリーではなく、手元の商品はサッポロビール仙台工場(N)製。
麦芽100%、アルコール度数は6%と、その数字をみてもわかるように濃い味で、しっかりとした飲みごたえのある味わいです。大麦と麦芽だけでつくる、サッポロクラシックとも違う、より厚みのある味が特長です。
サッポロファクトリーの赤レンガのイメージにも似た、エンジ色とクリームの配色は、サッポロビールファンには嬉しいポイントではないでしょうか。
普段、サッポロ黒ラベルを飲んでいる方に、色の違いを見てもらいたく、お馴染みの240タンブラーに注いでみました。
しっかりとした味は、「ファミチキ」とも相性バツグンです。
発売されて本当に良かった、ラガービール★
仕事帰りや、リモートワーク後の一息つく時間に、お近くのファミリーマートでお試し購入をされてみてはいかがでしょうか。
“SDGs”「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の企業活動に取り組むサッポロビールやファミリーマートの英断のおかけで、ちょっぴり特別な乾杯が楽しめました。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)