中野のブリックが復活しました。『ブリック』は、1964年(昭和39年)に、サントリーウイスキートリスを提供する、いわゆるトリスバーのひとつとして開業。店の歴史が長かったこともあり中野北口飲み屋街のランドマーク的な存在でしたが、2020年4月、営業制限下で臨時休業となり、そのまま店を閉めてしまいました。それが今、2年半の沈黙から目覚めたのです。
目次
新・中野ブリックが、店構えそのままにオープン!
中野駅北口から、中野の飲み屋街「ふれあいロード」や昭和新道へ抜ける際に必ず通るクランク型の路地あり、中野で飲み歩く人なら一度は立ち寄ったことがあるような名店です。店の歴史は古く、1964年に開業しました。当時は、寿屋(現サントリー)が実施したキャンペーン「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」(1961年)が流行語になるなど、ウイスキー「トリス」が注目されていた時代。サントリーが第一次洋酒ブームを牽引しました。この時代、洋酒の大衆化を支える安価なバーが全国に誕生し、それらは「トリスバー」と呼ばれました。
トリスバーは数を減らしながらも現代まで続いてきましたが、昨今の酒場や酒類提供への逆風の中でつぎつぎと閉業。中野の『ブリック』までもが56年続いた歴史に幕を下ろしたのでした。
「店名を変えないことが条件でした」
閉業後も建物が残されており、「いつか復活するのでは?」などと期待しながら多くの人がガラスから店内を覗き込んでいました。筆者もその一人。それが、ついに復活の日を迎えました。
2022年11月1日、中野のブリックに再び明かりが灯りました。店名はそのままに、新体制で再オープンしたのです。
以前のブリックを知る人たちが驚きと不安、そしてなにより嬉しそうな表情で再びブリックのドアノブに手をかけました。
ブリックの名前が残ってよかった!このカウンターで再びトリスが飲めるなんて夢のよう。そんなお客さんの会話が聞こえてくる店内。内装は老朽化した箇所の修繕程度で、基本的に大きく変わっていません。
赤レンガでできた安定感ある足置きも、背もたれがわずかなかわいいハイチェアも昔のまま。違いといえば、店内が少し明るくなったくらい。窓辺の席に座れば、駅と飲み屋街を往来する人々を眺めつつ昔のようにハイボールが楽しめます。
店の方によると、オーナーが変わる際に「ブリックの名前を残して欲しい」という要望があったそうです。店名とこの内装が守られたことが、どれだけ中野の街にとってプラスになったことか。本当に良かったです。
代々木上原で40余年続く「大衆酒場ジャンプ」の二代目が新たなオーナーとなりました。
品書き
お酒
お酒や料理は以前のブリックとは異なり、再構成したそうです。
ハイボールは、トリス:308円、角:418円、ジムビーム:418円、山崎:758円など。ビールは樽生がサントリー ザ・プレミアム・モルツ中:473円、サントリーマスターズドリーム:638円。瓶ビールはサントリー ザ・プレミアム・モルツ中瓶:605円、サッポロ赤星(サッポロラガー)大瓶:638円。
今回、運営が変わり大衆酒場テイストのお酒が大幅に加わっています。ホッピーセット:550円、バイスサワー:385円、鍛高譚ソーダ:495円、パンチレモンサワー:330円など。個性派は、自家製ジンジャーサワー:638円、メロンクリームソーダハイ:803円など。
ワインも拾っています。グラスはスパークリングワイン:528円、赤・白ワイン:各473円。ボトルワインはシャンパン(ローラン・ペリエ):12,000円、イタリアのスパークリングワイン プロセッコ(ミオネット プロセッコ DOC):4,180円、白ワイン(フロム甲州):3,850円、赤ワイン(フロムファーム マスカットベリーA):3,850円など。
料理
トリスハイボールが308円(税込)と驚くほど手頃ですが、フードも大変リーズナブルです。
ハムカツ:220円、クリームコロッケ:275円、ちくわ磯辺揚げ:275円、ポテトサラダ:385円、チーズ味噌漬け:440円、もつ煮込み:495円、ボンゴレうどん:715円、黒毛和牛のメンチカツ:825円、焼鳥:100円~など。
トリス、ハムカツ、ポテトサラダ。新ブリックは「酒場寄り」
サッポロ赤星(638円)
瓶ではまさかのサッポロラガーが置かれていました。一杯目は何を飲もうか品書きを眺めていたところ、スタッフの方が「赤星は大瓶ですよ!」と話してくれたので即決しました。トリスハイボールは2杯目以降のお楽しみ。
お通し(このときはポテトサラダ)をもらって、それでは乾杯!
ハムカツ(220円)
サクサクに揚がったハムカツが、フードの新おすすめメニューです。千切りキャベツにケチャップやマネーズが添えられているのも丁寧で嬉しいポイント。
トリスハイボール(308円)
アンクルトリスのイラスト入りのジョッキで供されるトリスハイボール。以前のタンブラーとは雰囲気が異なりますが、これはこれで酒場的な方向性に合わせているようです。店の名前とともに受け継がれたコースターにも注目です。
やきとり盛り合わせ5本(770円)
かわ、ボンぢり、とり、レバ、つくね。タレか塩が選べます。やきとりは代々木上原の大衆酒場ジャンプの定番料理でもあり、こうしたところに新テイストが感じられます。
ミルクハイ(385円)
甲類焼酎の牛乳割りもあります。お好きな方、いらっしゃるのでは。
ナスとピーマンの味噌炒め(715円)
盛りのよい一品。酒場のつまみ的なフードが多く、どれもしっかり作ってあるので、新しくなったブリックは1軒目に利用するのも十分良いのではないかと思います。
バイスサワー(385円)
バイスサワーも、ブリックだとなんだかカクテルのよう。
接客スタイルや、料理、お酒は酒場寄りになりましたが、お店の方が背筋を伸ばしてパリッとした接客をしているのは変わりません。
懐かしのブリックで再び飲めると喜ぶお客さんたちでいっぱいの店内は、なんだかとても幸せな空間でした。これからも末永く、この場所・この雰囲気が続きますよう願っております。
ごちそうさま。
ブリックの思い出
懐かしい旧ブリックの思い出を写真とともにご紹介します。
以前は蝶ネクタイと白衣(バーコート)姿のバーテンダーさんが、正統派のカクテルを提供してくれていました。
それでも、やはり1杯はトリスを飲みました。
このコースターは、まだ在庫があるので使っているそう。いつか無くなるでしょうから、お早めに。
いいことがあった日は、スペシャルリザーブで背伸びをしたものです。
グリルサンドが好物でした。ハムチーズとツナサラダの2種類。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | NAKANOブリック(BRICK) |
住所 | 東京都中野区中野5-61-3 |
営業時間 | 営業時間 [カフェタイム] 12:00~16:00 [バータイム] 16:00~23:00 日曜営業 定休日 無休 |
開業年 | 2022年11月1日(初代は1964年創業) |