豊橋で大正7年から続く居酒屋「福島屋」。豊橋駅から徒歩20分の距離にありながら、平日16時の口開けとともに満席になるほど地元に親しまれています。名物の豚足や冬季限定の湯豆腐だけでなく、近海で水揚げされた地物の魚介類も評判です。
駅から20分。それでも行きたい奇跡の酒場
「手軽な肴で気軽に楽しめる」というキャッチフレーズの「福島屋」は、界隈きっての老舗酒場です。その歴史は100年以上。豊橋駅前の繁華街から離れた住宅街にぽつんと佇む平屋の店構えは、奇跡の一軒と言える雰囲気です。
豊橋の駅前は決して寂しいということはなく、人口37万人都市らしい立派な繁華街・飲み屋街が存在します。それでも、わざわざ1km以上離れた「福島屋」へタクシーに乗ってまで飲みに来る人が多いのはなぜでしょうか。
周囲に酒場がないからこそ、ぼんやり灯る福島屋の明かりが嬉しく感じます。縄のれんと「千代菊」の看板に迎えられ、いざ店内へ。
古くからある酒場に多い、古民家の土間を大きく広げたような客間に、様々な形状の原木机がぽつぽつと並んでいます。けして詰め込むことなく、贅沢な空間の使い方です。
典型的な酒場の小上がりは、実に味わい深い雰囲気です。飲み慣れた黒帯の飲兵衛さんたちが仲間内で静かに盃に注ぎあっています。
その先には冷蔵ケースとサッポロのビールサーバー。瓶ビールはお店の方にオーダーができますが、慣れた常連さんたちは、「黒ラベル1本ね!」と自己申告しながら自分で取り出しています。
店内にはレトロなサッポロビールの販促グッズがあり、生樽もサッポロ生ビール黒ラベル。長くサッポロを扱ってきたお店ですから、瓶でもここは黒ラベル(大びん650円)を選びました。店内を見渡すと、どうやらヱビスが人気の様子。
それでは乾杯!
品書き
飲代(お酒のメニュー)
日本酒1合(450円)からはじまるお酒の品書き。燗酒、冷酒ともにお酒は岐阜・羽島の千代菊を中心に揃えられています。その他、福島県福島市にある酒蔵・金水晶酒造店の「金水晶」などもあります。
樽生(中生550円)はサッポロ黒ラベル、瓶(大びん650円)はアサヒスーパードライ、キリンラガー、サッポロ黒ラベルの3銘柄ほか。不思議なのはチューハイ類がRTD(缶)のみということ。宝の焼酎ハイボール(350円)やアサヒビールの玉露と抹茶酎ハイ(350円)、サントリーのリザーブウォーター(400円)などから選びます。
料理の品書き
料理には値段の記載がありませんが、どれもリーズナブルですからご安心ください。内容は仕入れ次第で取材時の刺身はカツオ、サンマ、アジ、イワシ、とり貝、アジタタキという並び。
このほか、ぬた、ゆでダコ、ゆでカキ、クロムツ・ソイ煮付け、イワシ煮付け、いか焼、せせり焼、鳥心臓焼、なす焼、豚足など。冬季は山かけを入れた丼ぶりいっぱいの湯豆腐が加わります。
何を食べても手頃で美味しい
一杯目のお酒とともに、軽いつまみにお漬物がきます。一品目までのちょうどいい繋ぎです。
ゆでタコ
小ぶりの吸盤できゅっと引き締まったタコは、見るからに美味しそう。味が濃く、かつジューシー。非常にお酒を誘います。おろしたての生姜をたっぷり入れた生姜醤油がよくあっています。
なす焼き
深くコクのあるナス焼き。素朴な一品が老舗の酒場によく似合います。
飲み慣れた人たちが集う集会場のような世界がそこにあります。温かく親切な接客、家族経営ならではのお客さんとの距離感も素晴らしいです。「名店とはこういう店のことを言う言葉」、そう改めて感じさせられた酒場でした。「のぞみ」で素通りしてはもったいないです。
ごちそうさま。
近くの酒場
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 福島屋 |
住所 | 愛知県豊橋市北島町北島44 |
営業時間 | 16:00~22:00(日祝定休) |
開業年 | 1918年 |