名古屋を代表する老舗酒場の一つ「大甚本店」。その系列店「大甚中店」が、本店からわずか30mの場所にあります。本記事は、大甚本店をご存知の方向けに、大甚中店の特長をご紹介します。(関連記事:大甚本店)
劇場横、知る人ぞ知る大甚中店
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名古屋の玄関口、JR名古屋駅から地下鉄東山線で1駅。伏見駅周辺はホテルや劇場が集まるエリアです。繁華街はもう1駅西へ向かった栄のほうが大きいですが、酒場好きが名古屋に来たら伏見で途中下車をしないわけにはいきません。
広小路伏見の交差点にかまえる「大甚本店」は、明治40年創業という大変歴史がある酒場です。全国にファンが居て、平日16時の口開けから満席状態になることも。そうした賑わいも楽しみの一つではありますが、今日は落ち着いて飲みたいという日だってあります。
そういうときに「大甚中店」という選択はぴったりです。
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大甚本店が古くから賑わう理由の一つ、伏見には明治30年から続く名古屋劇場「御園座(みそのざ)」があります。その隣に経つ3階建ての店が「大甚中店」です。建物には店名よりも大きく書かれた、酒王賀茂鶴の文字が。ここは清酒は賀茂鶴樽酒が看板メニューです。
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学校の教室より一回り広めの店内。天井は高く、長く続く酒場ながら開放感も感じられます。
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利用方法は大甚本店に近く、好きな席に座って、お酒はお店の人に注文し、料理は棚に並べられたものを自分で選びに行く方式。カウンター席はないものの、分厚い一枚板でつくられたテーブルが落ち着いた店内を演出しています。店内を見渡せるテーブルが特等席です。
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日本酒が目当てですが、一杯目は喉を落ち着かせるビールから。芯までよく冷えたキリンクラッシックラガーの大瓶(500円)で乾杯。
お酒は3品だけ、料理は自分で選びます
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お酒の品書きは、キリンビール大ビン、賀茂鶴、菊正宗(ともに正1合380円・大徳利600円)の3種類だけ。実に潔い。
外観かに店内の様子や品書きなどが窺い知れない中店にやってくるお客さんも、キリンビールとお酒が目的の人ばかりなのですから、それでよいと筆者は思います。
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本店ほど料理の種類は多くなく、煮物系を中心に10品程度。穴子の煮付け、ヒラメなどのアラ、カレイの煮付け、小イカなど。冷菜は冷奴、そら豆、おひたし、たまごサラダ、かまぼこ、他。お腹にたまらない、飲兵衛向けに絞った料理という内容です。
お酒に向き合うひととき
いいだこ煮
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しっかり甘く濃い味に煮てあるのが中店の煮物。本みりんの旨味は、日本酒を呼びます。
料理の値段は書かれていないものの、それほど高いものはありませんので、食べたいものを2品ほど選んで…。それに瓶ビールとお酒2合で2,000円くらいになります。
賀茂鶴の樽は特別な味
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お店の顔、四斗樽「賀茂鶴・特別本醸造超特撰特等酒」。大甚本店と同じもので、もちろん飾りではなく、実際にこの樽で届けられたもの。樽酒本来の香りがついた、大甚の賀茂鶴が味わえます。
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首がしゅっとした背が高い徳利は、正一合。予め徳利に注がれており、注文するとすぐにやってきます。寒い季節はお燗もよいですが、大甚の樽は冷(常温)が一番。すっと体に溶けていく美味しさがあります。
濃い味の冷奴
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あわせるおつまみは、冷奴。生姜のすりおろしが溶かした地元メーカーの醤油が美味しい。だから冷奴もいつもよりちょっぴり特別です。
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杉の香と米の甘さが調和した、和菓子のような旨さすら感じる樽酒。それを引き立てる冷奴。心地よく酒場に浸ります。
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飲み慣れた人が静かに飲んでいる大甚中店。じっくりとお酒に向き合ういい場所です。気分に応じて使い分けたいですね!
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 大甚 中店 |
住所 | 愛知県名古屋市中区栄1丁目6-9 |
営業時間 | 16:00~20:00(日定休) |