静岡『手羽先おおむら』クセになる手羽先と、期待を超えるマグロの中トロ刺し

静岡『手羽先おおむら』クセになる手羽先と、期待を超えるマグロの中トロ刺し

2021年1月28日

静岡駅前から、帰宅客を大勢乗せた路線バスに飛び乗りました。路線バスは新静岡、県庁前などを経由し、走ること10分ほど。そろそろ目的の居酒屋が近づいてくる頃です。

目指した酒場は、創業から60年になる「手羽先おおむら」という店。「手羽先」を冠した店名の通り、名物料理は大ぶりの鶏手羽串焼きです。

よくある地方都市のように、中心街とターミナル駅に距離があるわけではない静岡。駅前からすぐに旧東海道が貫く繁華街となり、紺屋町や両替町といった古い地名が残されています。つまり、静岡では老舗・大衆酒場を求めているならば駅前でも完結するわけですが、それでもなお、バスに乗って行きたいお店が「手羽先おおむら」という訳です。

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バスに乗っても行きたい名酒場

しずてつバス安倍線の井の宮局前バス停下車。安倍街道沿いとはいえ、すっかり住宅街になった場所に大きな赤提灯がひとつ灯っています。

やっていてよかった…!こうばしい香りが漂う店の前。逸る気持ちを抑えて、背筋を伸ばし静かに暖簾をくぐります。

豪快に10本単位の手羽先串をゴウゴウと焼くお父さん。そして調理場や給仕を担当されるお店の皆さん。ご家族でまわしているから阿吽の呼吸でやり取りされ、実に爽快なテンポです。

さっと席に付き、ビールと手羽先をまずは注文。先にいるお客さんは皆さんサンダルで来ているようなラフな雰囲気です。口開けにあわせて訪ねたのでお店はまだ空いているのですが、さっきから猛烈に手羽先が焼かれているのが気になります。

そうそう、手羽先おおむらのカウンター上は、サッポロビールのポスター資料室と化しています。みなさん、思い出に残っているラベルや絵柄はありますか。

焼津でつくられたビールで乾杯

樽生ビール(560円)は老舗の大衆酒場に似合う、通称サッポロジョッキで登場。焼津でつくられたサッポロ生ビール黒ラベルで乾杯!

瓶(560円)では黒ラベル、サッポロラガー、そしてキリンを置いています。

静岡の柑橘類などをつかったリキュールが豊富。意外にもホッピー(セット480円)もあります。酎ハイ類で一番人気は、やはりここでもお茶割り(360円)のよう。

日本酒は定番が世界長(沢の鶴)、地酒は英君に臥龍梅、白隠正宗と静岡の銘柄が充実しています。5尺(330円~)から頼めるので、少し味見をしたいというときにも嬉しいです。

手羽先だけじゃない、豊富なメニュー

名物手羽先(320円)を筆頭に、鶏もも(特750円)、鶏かわ(120円)、ささみ(130円)、つくね(130円)など、焼鳥の定番が用意されています。黒いはんぺん(100円)があるのは静岡らしくて素敵。

ここにもあった「もつカレー」(450円)や、ホタテバター(650円)、ホッキ貝サラダ(400円)など一品料理も充実しています。

静岡おでんは100円から。また、静岡は知る人ぞ知る牡蠣の産地。陶器は生牡蠣やカキフライ、牡蠣串焼きも食べられます。

冷蔵ショーケースは必見

食堂のショーケースのように、お刺身や小鉢は店内中央の冷蔵ケースに用意されており、各々見に行って好きなものを取り出すようになっています。

ミナミマグロのお刺身が輝いています。御前崎などが産地のカツオ、かんぱち、イカなど。タコ刺しはほぼ吸盤のみを盛り付けた個性派。

手羽先が焼けるまでのタスキをつなぐつもりで取った「マグロ刺し」(1,100円)。これが実に美味しい。コクと酸味、深い味の赤身と、口に含むと体温でとろけていく中トロのグラデーションは、量があっても食べ飽きることがありません。

美味しい魚を前にして、日本酒を飲まずにはいられません。お燗をつけたお銚子を1本。

カリカリに揚がるように焼き上げた手羽先

醤油が蒸発する匂いとともに、ジューっと音を立てて登場、手羽先(320円/本)が焼き上がりました。

大ぶりの手羽が1串に3本刺さっており、一人ならば2串くらいが丁度いい。焼き上がる直前に醤油をつけ、手羽の脂と醤油の焦げを利用して一気にパリっと仕上げている様子。メインの味付けは塩と胡椒。とくに胡椒はしっかり効かせていて、あふれる肉汁を引き締めてくれます。

常に焼き続けていた手羽先はどうやら予約制のお土産のようです。次々お客さんが受け取りに来ます。愛されていますねー。

お茶割りのベースとなっている焼酎は、甲類(連続蒸留)ではなく麦焼酎(乙類)を使用しています。静岡の居酒屋ならば、かなりの頻度でみかける粉末茶をつかったお茶割り。各店でこだわりがあり、こちらは平岡商店のお茶を使用しているそうです。

甘く心地よい余韻は、ジューシーな手羽先との相性もぴったり。

マグロと手羽先で幸せいっぱいに

品数が多いのでいろんな味を楽しみたいと思うものの、やはりマグロと手羽先は外すことはできず、これで満腹になってしまうのです。また近いうちに訪ねよう、そう感じながらお会計します。

飲みに行きたいから旅に出る。そんな楽しさを感じさせてくる一軒です。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名手羽先おおむら
住所静岡県静岡市葵区井宮町96
営業時間営業時間
[月曜日~土曜日]
17:00~23:00(LO、22:00)
[日曜日]
16:30~23:00(LO,22;00)
定休日
火曜定休、第3水曜日
開業年1960年頃
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