焼津「食事処かどや」 漁港で70年。漁業関係者も御用達の海鮮処。

焼津「食事処かどや」 漁港で70年。漁業関係者も御用達の海鮮処。

静岡県焼津市。全国有数の水揚げ高を誇る焼津漁港を中心に発展した港町です。

特にまぐろは日本の水揚げ量の1/3が焼津漁港という、日本一のまぐろの町として知られています。マグロ、カツオといった大型の魚を扱う遠洋漁業だけでなく、鯵や鯖などの近海もの、そして桜えびやしらすのような小さな魚介類まで、魚種の豊富さも焼津港の特色です。

そんな焼津漁港に隣接し、創業から70余年になる老舗の食堂兼居酒屋「食事処かどや」をご紹介します。

焼津は魚だけでなく、美味しいビールも地場産品。魚とビールの美味しい組み合わせを楽しみましょう。

 

焼津へは、静岡駅からJR東海道本線で14分。東京からならば日帰り圏内です。駅前広場では、カジキマグロの銅像がお出迎え。

 

駅構内の看板も、漁業組合や水産加工会社のものが多く、ちょっとした魚のフードテーマパークに来た気分です。

 

地場産品コーナーには、見慣れた食品が並びます。水資源が豊富で、鉄道・高速道路・海運などの物流面でも便利な焼津は東洋水産やはごろもフーズなどの食料品メーカーの事業場が多数あります。

 

大手ビール会社のひとつ、サッポロビールもこの地に工場を構えています。サッポロビール静岡工場は、計画当時、首都圏向けにビールを製造していた事業場である、サッポロビール埼玉(川口)工場、サッポロビール恵比寿工場(ともに現在は閉鎖、新設された千葉工場へ集約)が手狭になっていたことから、ここ焼津に、新たな製造事業所として1980年に竣工しました。

県内限定の静岡麦酒や、サッポロ黒ラベルやヱビスビール、サッポロラガービールなどを製造しています。固有記号は「Y」。

 

工場見学やビール園などのレストランはなく観光スポットではありませんが、酒類技術研究所など同社の研究部門が集結した開発拠点となっています。焼津駅からは路線バスで約15分「岡当目」バス停下車。

 

さてさて、日が暮れてきました。夜間も動きがある焼津港。遠洋漁業の船が入港する様子を眺めつつ、そろそろ酒場を目指します。

 

食事処かどやは駅前の商店街から離れた、漁港に接した場所にあります。住所も「中港」。釣り人向けの旅館や船宿、釣具店に水産加工会社などに囲まれています。

 

訪れるお客さんも漁師さんや釣り客、水産関係者が多く、この日も2階では水産関係者が宴会を開いている様子。数人で使える小上がりやテーブル席、一人でも安心のカウンターもあります。

 

「いらっしゃい?飲んでいきますか?」

地元のお客さん以外は自動車でやってくる人も多いそうで、そう尋ねられました。もちろん飲んでいきます。

 

まぐろ、かつお、鯖に鯵、よりどりみどりの魚メニュー。ワクワクしてきます。

 

なにはともあれ、まずはビールから。サッポロビール関係者も御用達のかどやは、もちろん星のビール。年代物の赤星がデザインされたジョッキが現役です。

 

サッポロ黒ラベルの大ジョッキをもらって、では乾杯!

 

大ジョッキ(850円以下税抜)、中ジョッキ(500円)、瓶ビールも黒ラベル(大ビン600円)です。酎ハイ類は400円。

 

日本酒は定番酒が静岡県島田市の大村屋酒造場がつくる「若竹本醸造」(一合350円)。地元焼津のお酒「磯自慢 本醸造」(一合650円)、藤枝の「初亀 本醸造」(一合650円)、大村屋酒造場の「おんな泣かせ 大吟醸」(一合850円)と、地酒が揃います。

本格焼酎は「和ら麦」や「からり芋」など。

 

至るところに短冊が貼られていて、それが種類ごとに整理されていないので、あっちもこっちもと見回して食べたいものを探し出す。ビールを飲みながらの献立選び、楽しいものです。

 

お刺身の品揃えの多さは、さすが漁師町。まぐろは本マグロとトンボマグロの2種類が用意されています。

 

キス天、アジフライ、どれも魅力的。まぐろ料理だけで30種類ほどあります。

 

まずは生しらす(550円)。「いいのが入っています」なんて言われちゃったら、それはもう頼むでしょう。大井川漁港で水揚げされたしらすは、弾力が桁違い。鮮度でこんなにも違うものですか。磯の華やかな香りが心地よい一品です。(生しらす、桜えびなどのメニューは、入荷状況によって変動します。)

 

もずく酢(300円)。もずくとビール、暖かい季節にはこの爽やかな組み合わせがたまりません。

 

初亀 本醸造の冷酒を。食中酒向きな料理を引き立てる味。すっきりした米の甘みと、優しい香りのお酒です。

 

ねぎま(250円)。まぐろのハラ側の脂ののった部位にネギを挟んだもの。日本酒によくあいます。

 

焼津の郷土料理といえば、「かつおのへそ」。かつおの心臓のことで、おでんや味噌煮にして食べる家庭の味です。「食事処かどや」では、へそはフライ(1本300円)でだしてくれます。

コクのある味、クセになるもちもち食感で、日本酒、ビールとの相性バツグン。

 

まぐろのスキミなどの定番お刺身を食べるもよし、今回みたいにお酒メインに珍味をおつまみにするのもまた楽しいお店です。

グループでゆったり飲めますし、一人だとお店の方とちょっとした会話をするなど有意義な時間が過ごせると思います。「夏の岩牡蠣も美味しいよ」と、お隣のお父さん。お店の方からは「普段の夜はそんなに混んでいませんから、気軽にいらしてください。」とのこと。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

食事処かどや
054-628-4951
静岡県焼津市中港3-4-31
11:00~14:00・17:00~21:00(月定休・第3日曜日定休)
予算2,500円