静岡「華音」 中華と静岡食材と日本酒。お昼から飲めます。

それはまさに、オンリーワンの居酒屋。カテゴリーの枠にあてはまらないけど、なぜだかものすごくしっくりくるお店ってありますよね。

今日は中華と地のもの、そしてピリ辛料理にあうお燗酒を提案するお店「華音（はなおと）」をご紹介します。若くアイデア豊富のご主人がはじめたお店は、その独創的な料理や、一人客でも気軽に楽しめる雰囲気が評判となり、いまや静岡・両替町で名の知れた一軒です。

創作中華と静岡の燗酒の組み合わせ。いまどきらしい組み合わせと思われるかもしれませんが、これがまた、なかなか良いお店なのです。

東京から東海道新幹線で約60分。人口約70万の都市、静岡。

県内最大規模の歓楽街・飲食街である、両替町と紺屋町。約500軒の居酒屋が立ち並ぶ激戦区。1世紀近く続く老舗からニューオープンのビストロまで個性的な居酒屋が揃い。

そんな両替町の飲食ビルの二階に「華音」はあります。開業は17年前。2011年に現在の場所へ移転オープンされたとのこと。

飲食街の規模に比較しお昼から飲めるお店がさほど多くない静岡。ですが、華音は平日は15時オープンと早く、さらに日祝はお昼13時に暖簾が掲げられるという、嬉しい昼酒スポットです。

仕込みがてら営業している、日曜14時ころにお伺いしました。料理上手のお兄さんが立つ厨房。そこに向いたカウンターには、静岡県の地酒を中心にした一升瓶がずらりと並んでいます。

純米酒の燗酒をコンセプトのひとつとしているお店ですが、取材に対して「最初は焼酎を並べていたのですが、酒屋さんから日本酒の話をいろいろ聞いているうちに次第に興味を持ち、今ではすっかり日本酒の店になりました」とのこと。

掘りごたつの小上がりと一升瓶が並ぶ店内からはとても想像がつきませんが、店内は本格的な中華スパイスの香り。アンマッチにも魅力あり。このあとの料理とお酒が楽しみです。

日本酒の前に、まずは喉を整えないと。樽生ビール（中550円）はキリン一番搾り。状態抜群の一杯で乾杯！

瓶ビール（中ビン630円）ではサッポロラガーも用意あり。紹興酒、酎ハイ、ワインと一通りありますが…

メインはもちろん日本酒。定番酒は沼津の老舗造り酒屋・髙嶋酒造がつくる「白隠正宗」。藤枝の杉井酒造「杉錦」や御殿場・根上酒造店の金明などを用意。加え、独楽蔵やるみ子の酒、鷹勇などこだわり感じるラインナップです。

メニューを眺め楽しんでいるところにお通しが登場。なんと「かつおつみれ汁」。冬季だけでなく通年で出しているそうです。繊細な出汁の味で食べさせる非常に上品な逸品。

椀もののあとは一気に中華スパイス全開。富士宮で育った萬幻豚（まんげんとん）をつかった黒酢酢豚（1,600円）やホルモンの四川麻辣ソース（1,000円）、木くらげ玉子炒め（900円）、レバーと青ニラの発酵唐辛子炒め（1,000円）と、本格的です。

野菜もすべて県内のもので揃え、自家菜園で育てたそら豆など旬の食材が登場します。

鰹と青唐のなめろう（800円）が気になっていましたが、ここで静岡ならではの一品があるとのお話。とれたての生しらすの紹興酒漬けです。シラスのほんのりとした苦味と紹興酒のコクが相性抜群の一品です。

一人飲みサイズに調整していただいた、お店の人気メニューのひとつ「ホルモン麻辣ソース」。

ホルモン、ノドブエ、ハツなどの豚のモツを軽く素揚げし、それをピリ辛だけど辛さだけではない深い味の麻辣ソースで包んでいます。見た目ほど味は強くなく、後引く美味しさです。

合わせる一杯は、ご主人のおすすめでもある「白隠正宗」の辛口純米（600円）。平盃を満たしきゅっと一口。中華と日本酒の意外な相性の良さを感じる瞬間です。燗でひらいた米の旨味がスパイスを包み込みます。

カップ酒の器で用意されるのは、白隠正宗の仕込み水。わざわざ沼津から汲んできているというこだわりです。

お昼ですから、ほろ酔い止まりにしておきたく、次は瓶ビール。焼津の赤星で改めて乾杯。

ゴーヤとしょうがの塩こぶ和え（500円）。これも中華風の一品。こぶの旨味はゴーヤの苦味とよくあいます。夏らしい料理に、きゅっとビールを。

お昼は比較的静かですが、夜はできれば予約したほうが安心という人気店。

燗酒と中華の意外な組み合わせを体験しに、お近くで飲み歩く際は立ち寄られてみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

（取材・文・撮影／塩見 なゆ　※外出自粛要請以前に取材）

華音
054-273-8591
静岡県静岡市葵区両替町2-5-8 2階
15:00～24:00（日祝は13:00～22:00・月定休）
予算2,600円