横浜の老舗酒場を語る上で昭和初期に結成された「市民酒場組合」は外すことの出来ない存在です。連合会は解散したものの、当時から続く酒場もあって、老舗酒場として人気を博しています。神奈川支部で現在も酒場を続けているお店は3軒あり、そのひとつが「大衆酒場秋葉」です。
歴史ある落ち着いた雰囲気の子安の街に灯る老舗暖簾。地元の方が通う人気のお店です。
下末吉大地の際を通るJR東海道線(京浜東北線)。新子安駅の改札を抜け大地側(北側)に向かうと、駅前にも関わらず閑静な住宅街が広がっています。静かな街に白く灯る「秋葉」の暖簾が酒場好きの心をくすぐります。
昭和初期からの老舗ですが建物は比較的新しく、それでも壁一面の短冊からは酒場の味が感じられます。
横浜の市場から仕入れる魚介類をメインにしながらも揚げ物、焼鳥、餃子やサーモンフライなど、和洋折衷なんでもござれの楽しい品揃えです。
市民酒場のビールはかつては生麦(神奈川県横浜市鶴見区)のビールが指定であり、戦後復興の中で自由化が進んでも生麦のビールを置くお店が多かったと聞きます。「秋葉」のビールも、やはり生麦にあるキリンビール横浜工場づくりのビールが提供されています。
ビールの銘柄に歴史あり。それでは樽生のキリンラガー(中590円)で乾杯!
瓶ビール(大ビン690円)、ホッピー(セット410円)など定番が揃います。珍しいのは「焼酎ハイボール」と「チューハイ」が別にあって、焼酎ハイボールのほうは宝のコンク焼酎が使われています。定番の日本酒は老舗らしい「菊正宗」(410円)です。
シンプルで見やすい品書き。ですが、献立には食べてみたい料理が山程みつかります。煮ぶた(530円)も良さそうですし、ジャンボシウマイ(420円)も気になります。カレーポテ玉は、丸めたじゃがいもにカレーのルーをかけたもの。手元の品書きだけでなく、店内の短冊とあわせてみないと見逃しもあります。
お刺身はその日のものが冷蔵ケースの上に張り出され、定番のマグロ中おち(450円)をはじめ、いかさし、〆鯖などが用意されています。
盛りがよく見た目も美しい秋葉の「マグロ中おち」。ねっとりとした食感に濃厚な旨味と爽やかな酸味があとをひく逸品です。
焼酎ハイボール(410円)は専用のグラスで用意されます。ほんのり風味がついているので、軽快なリズムで飲み進めてしまいます。お酒は適量で。
横浜の老舗らしさを感じるところといえば、多くの市民酒場の系譜にあるお店に中華料理があることではないでしょうか。
ぎょうざ(380円)は、少しはねをつけたもので、きつね色の皮のパリパリ感と、たっぷり野菜の甘い汁がよくマッチします。
トマトハイ(410円)といっしょに頂くのはあさり酒蒸し(420円)を。汁を救うようにしてちゅるりと食べれば、余韻でトマトハイもますます進みます。
女将さんが丁寧に接客されています。その家庭的な雰囲気に癒やされながら、落ち着いた空間で日々の生活に少々の休息はいかがでしょう。
ごちそうさま。
市民酒場について
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
大衆酒場秋葉
045-401-4236
神奈川県横浜市神奈川区新子安1-9-1
17:00~23:00(日定休)
予算2,500円