山形県新庄市の「あけぼの町飲食店街」で地元の人がふらりと立ち寄る店『やきとり酒場 串駒』。ご主人のご両親はマーケットで40年以上続け、いまは閉店してしまった郷土酒場『ふるさと』を営んでいました。最上地域を代表する飲食店街に、東北内陸部らしい侘び寂び浸れる名酒場を訪ねました。
目次
店の場所に歴史あり
今回ご紹介する『串駒』は、あけぼの町飲食店街の中にある一軒です。店の紹介をするには、その背景でもあるあけぼの町飲食店街の話をしなくてはならないでしょう。
最上地域最大の歓楽街「あけぼの町飲食店街」
終戦の翌年、昭和21年に中央通り商店街(当時は大正小路)に闇市が形成されたことがはじまり。復員者や疎開していた人が始めたと言われています。昭和25年には100店舗近くまで拡大したものの、市によって撤去されることとなり、代替地として現在の「あけぼの町飲食店街」の場所に移転しました。闇市は次第に酒場やバー、キャバレー、スナックへと姿を変え、飲食店街として賑わうようになります。日本各地の闇市由来の飲み屋街にみられる変遷を歩んだといえます。
そんな「あけぼの町飲食店街」ですが、モータリゼーションによる中心街の空洞化や人口減少など、時代の流れで衰退していくことに。それでも、若い人が店を開くなどして、現在も最上地域を代表する飲み屋街としての姿を維持しています。
昨今、全国で屋台村が誕生していますが、本物の横丁には、土地に根付いたパワーを感じます。
地元の人は「マーケット」と呼ぶこの界隈。市による区分けに際し、一軒「4坪(約13.2平方メートル)」だったそうで、今も多くの店に区分け当時の小ささが残っています。
外観
『串駒』も同様です。コンパクトな間口。赤く灯る提灯に味わいがありますが、雪化粧をすればより味わいが増しそうです。
内観
焼き場に向いた5席ほどのカウンター席とわずかなテーブルが詰め込まれています。
乾杯は瓶ビール「サッポロ黒ラベル」で
深夜0時までと、遅い時間まで営業しているのが嬉しいです。近隣はスナックが多いものの、まだまだ新庄は2軒目・3軒目の居酒屋梯子が楽しめる町だと実感します。
まずは、ビールから。銘柄はサッポロ生ビール黒ラベル。製造は名取の仙台工場です。それでは乾杯。
お通しは芋煮
お通しには芋煮がでてきました。“私が旅行者だから土地のものを”、というわけではなく、新庄でも芋煮は日常的に食べている郷土料理なのだそう。
品書き
お酒
常連さんはボトルの焼酎をキープして飲むようですが、ここに来たら気になるのは日本酒ではないでしょうか。
出羽桜 一耕 純米酒(650円)、出羽桜 雪漫々大吟醸(950円)、八海山純米酒(500円)など。ほかにも冷蔵庫に様々な銘柄があるので、相談するとだしてくれそうです。
樽生ビールはアサヒスーパードライ、瓶でサッポロ黒ラベル、チューハイは樽ハイ倶楽部です。
味違いのサワーが豊富に揃っていて驚きます。
料理
焼き鳥は、若鶏もも、砂肝、レバー、はつ、つくね、ねっく、かわ、ぼんじり(各120円)。豚モツもあり、豚タン、かしら、あぶら、シロなど120円から。あけぼの町飲食店街は馬刺しをだすお店が非常に多く、ご主人のご両親がやっていた『ふるさと』でも人気料理だったそうです。串駒でも馬刺し(900円)がありました。
最上地域は焼き鳥が郷土料理のひとつ
新庄のご当地料理といえば「とりもつラーメン」が知られています。海から遠く交通が発達する以前は魚介類が入らず、鶏料理が愛されてきた歴史があります。鶏もつは煮込みになり、やがてラーメンの具材になり、正肉は焼き鳥として親しまれてきたそうです。
さび焼(200円)、うめ焼(200円)、若鶏もも(120円)
『ふるさと』時代から焼き鳥が看板料理のひとつでしたし、店名がかわってもこうして継承されていることは以前の店を知る常連さんには嬉しいのでしょう。『串駒』を訪ねる前に飲んでいた別の店のカウンターで、隣のお客さんが、ふるさとの息子さんが串駒をやっていることを嬉しそうに話していました。
表面はパリっと、中はジューシー。 しっかり美味しい串が揃っています。
『ふるさと』の女将さんも店にいらっしゃることがあるそうです。また、品書きの多くに同店の名残があります。街の名物店が世代交代で継承されているのはとても素敵なことです。
出張、旅行などで新庄を訪れたら、ふらっと立ち寄られてみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | やきとり酒場 串駒 |
住所 | 山形県新庄市若葉町16 |
営業時間 | 営業時間 18:00~24:00 定休日 不定休 |
開業年 | ふるさと時代からの継承とすれば、1975年 |