焼津内港の岸壁から100mという波の音が聞こえる場所に『大漁やまちゃん』はあります。創業から約半世紀という老舗で、近隣住民や港湾・漁業関係者で賑わっています。盛りの良さと安さから、週末は旅行者の姿も多い。昼営業でも単品つまみが注文できるため、焼津の貴重な昼飲み処にもなっています。
素通りなんてもったいない焼津
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焼津は静岡と掛川の間。東海道新幹線ならば一瞬にして通り過ぎてしまいますが、酒好き・魚好きなら素通りはあまりにももったいない。街の主な産業は漁業。江戸時代は幕府より船鑑札によるお墨付きを得てカツオ漁が行われてきました。
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漁業の延長として食品加工も盛んで、はごろもフーズや東洋水産、そしてサッポロビールもこの地に大規模な研究・製造拠点を構えています。サッポロの静岡限定ビール「静岡麦酒」をはじめ、黒ラベルやサッポロラガーなど、私たちに馴染み深いビールがここ焼津でつくられています。
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駅から港までは徒歩15分ほど。
漁師町というよりは水揚げ基地という言葉のほうがしっくりくるような大規模な漁港です。遠洋での一本釣りや延縄漁でとれたマグロやカツオ、カジキなどが主な取り扱い魚種。水揚げ金額は、なんと長年全国1位に輝いています。
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街と港の境界が曖昧で、商店街や市役所前を歩いていると突然岸壁があり、遠洋まぐろ延縄漁船が停泊している。街の中心と港が一体化している雰囲気が実に楽しいです。
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今回紹介する『大漁やまちゃん』は、港湾施設に隣接し、創業から半世紀という歴史を持つ居酒屋です。ビル1棟という大きさから、漁業関係者を中心に多くの人々に親しまれてきた様子が伺えます。
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暖簾の向かい側はJFの事務所。その先には漁船が並んでいます。それでは暖簾をくぐって店内へ。
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漁師町ならではの素朴な温もりが感じられる、畳敷きの広々とした入れ込みとカウンター席が並ぶ店内。
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カウンターの上には、大漁を祈願した巨大な熊手がずらりと並べられています。毎年11月19日のえびす講市で有名な焼津の西宮神社では、漁業の神様・恵比寿様をお祀りしており、この熊手は、店名にも「大漁」と掲げる当店の象徴と言えるでしょう。
晩酌利用はもちろん、定食飲みも大満足
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美味しい魚を前にしてお酒を飲まないというのは実にもったいない。悩むことなく、一杯目の生ビールをお願いしました。静岡の料理にマッチするように造られた焼津のビール、静岡麦酒で乾杯!
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まずは軽くおつまみを。生しらすか、かつお塩辛か、まぐろの皮ポンも気になります。ですが、ここはやはり桜えびのかき揚げを。カリッと揚がっていて海老の風味が実に心地良いです。
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こうなると飲みたくなるのが静岡の地酒。お隣、宿場町・藤枝の酒が揃っている中、志太泉を選びました。旨口ドライ、静岡らしいすっきりとした味に、ますます魚を食べたい欲求が高まります。
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カウンター席目の前に並ぶ冷蔵ショーケースには、マグロの様々な部位が並んでいます。これを切ってもらいたい!ということで、マグロづくしの三色丼をお願いしました。
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思わず「わぁ」と声が出るインパクトです。これでもかと分厚い本マグロ赤身、すきみ、カジキです。重なるように盛られていて、ご飯のほうが少ないくらい。
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ねっとり舌にまとわりつくようなマグロの赤身は、それはもう驚くほど日本酒を進ませます。
本マグロやミナミマグロと比べて「カジキかぁ」と思うかも知れませんが、脂が乗っているのにしつこさが全くなく、思わず頬がゆるむような美味しさ。カジキ漁が盛んな焼津ならではの発見です。
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こちらは人気の舟盛り定食並。マグロ、カジキ、カンパチに加え、カツオや生しらすもたっぷり盛られています。県外の魚介類もありますが、それも含めて鮮度よし。地元の人で賑わうのも納得です。
週末は旅行者で混雑するようなので、ゆっくり飲みたい方は平日がおすすめです。夜の単品メニューも充実しているので、夕方、東海道線を途中下車して晩酌するのも良いと思います。
店舗詳細
メニュー
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- 生ビール静岡麦酒:660円
- 日本酒 日本盛・杉錦・志太泉・初亀・女なかせ純米大吟醸:605円~
- 生しらす:990円
- 生桜えび:1,430円
- 単品刺身 かつお・まぐろ赤身・まぐろトロ・めだい・あじ・あわび・さざえ・しめさば:各1,540円~
- 舟盛り:3,080円
- かつお酒盗:440円
- ながらみ:1,100円
- めかぶ:770円
- まぐろの皮ポン:770円
- 桜えびかき揚げ:660円
店名 | 大漁 やまちゃん |
住所 | 静岡県焼津市中港2-7-2 |
営業時間 | 火・水・木・金・土・日 11:00 – 14:00 17:00 – 22:00 月 定休日 ■ 定休日 |
創業 | 約半世紀 |