川越市『若松屋』は、東松山式のやきとんを広めた「かしら屋」の本店！創業は昭和41年

大宮、浦和、赤羽、そして新橋で7店舗を展開するやきとん酒場『かしら屋』。その本店が川越にあることはあまり知られていません。店名は『若松屋』。50年以上の歴史があります。店の名物はもちろん豚モツの”かしら串”。味噌を塗りつけて食べる「東松山式」が楽しめます。

川越の商店街から離れた住宅街で行列をつくる店

江戸時代の情緒を色濃く残す蔵の街・川越は、首都圏を代表する観光地のひとつであるとともに、比較的大きな繁華街を抱える街でもあります。川越駅前から伸びる全長1.2kmのクレアモール商店街は、平日でも都心に負けないほどの賑わいです。

クレアモールはその賑わいもあって飲食店は多いのですが、チェーン店の比率が高く、ご当地感を楽しめるお店はやや控えめ。今回ご紹介する『若松屋』も、クレアモールではなく、東武線の川越市駅寄りの住宅街にあります。

タイル張りのレトロな店構え。扉がふたつあると、入口と出口に分かれているのでは？と心配になりますが、どちらから入っても大丈夫です。

仕込みも焼きも任せて！という感じの若手の皆さんが忙しく働く店内。いらっしゃい！と迎えてくれます。

開店は16時（平日）と早く、17時には店先に列ができることも。周囲に居酒屋は多くないため、皆さん狙ってやってきます。確実に入るならば、17時前が安心です。

さて、店内の構造は独特です。一見すると焼台を囲むコの字カウンターだけの造りなのですが、左の通路を進むと4人テーブルが並ぶ空間が広がっており、グループ利用も実は可能です。

早い時間のカウンター席は常連さんでいっぱい。煙たくても、やっぱり焼き立てを1本ずつ出してくれるのは串焼き店の醍醐味です。

そんな活気ある空間で飲むビールは格別。キリンラガービールの大瓶をもらって、乾杯！

カウンターの端部幅いっぱいに設置された特製の焼台。その幅は1m以上もあります。20本以上の串がずらりと並ぶ様子は圧巻。炭火の火力差を巧みに活用し、常に焼き立ての串を提供できるようにしています。

注文が入る前から焼いているのは、それだけ席の回転が良いことと、かしら屋系列共通のルールが関係しています。

『若松屋』は、席に座った瞬間から注文せずにかしら串が提供されるのがお約束。食べきると、わんこ蕎麦のように、すぐさま次のかしら串が届けられます。1本目は待つことなく、すぐに届けられました。

ねぎを挟んだ軽い串なので、数本はだれでもペロリと食べられます。つぎつぎ来るので味の指定はできませんが、ここで「東松山やきとり式」の出番となります。

東松山やきとりとは、養豚・加工が盛んな埼玉県南部で、主に東松山を中心に広まった豚モツ（かしら肉）のやきとりのこと。特徴はこの味噌タレ。お店によってレシピは異なりますが、白味噌にニンニク、唐辛子などを配合したもので、塩辛いだけでなく深いコクがあることも特長です。

若松屋もそうですが、一般的に味噌は容器ごとでてきます。刺さっている刷毛を使い、直接串に塗るのが本場のスタイルです。ですが、塩分が気になる方などはお皿につけてもOK。ただし、串から外して食べるのは冷めてしまいますので、豪快に頬張ります。

辛さ、コク、しょっぱさが豚モツの脂と混ざって、味の感想は「パワフル」の一言。次々焼かれる店の雰囲気も相まって、ワイルドにもりもりと串が進みます。その余韻をキンキンに冷えたキリンラガーでグッと追いかければ、もう大満足。

箸休めに注文した自家製の白菜キムチは、辛すぎず、酸っぱさもほどよく、ほどよい旨味で串との相性ぴったりでした。

日本酒は他ではあまり見かけない栃木の「千菱」。コップでグッと飲む常連さんたちはカッコいいですが、酎ハイ・サワー類のバリエーションも豊富なので、「まだ日本酒は時間的に早い」なんてときにはサワーも。口の中に残るかしらの味をリセットするなら、濃いめのレモンサワーが良さそう。

せっかくならば、かしら以外の串も焼いてもらいましょう。手元にかしら串を残した状態で注文すれば、比較的スムーズに別の串が届けられます。

かしらに味噌も良いですが、プリップリのタンとも相性が良いです。

おすすめは、ちょっと贅沢な特製なんこつ。骨の周りこそ美味しい！と実感できる、のどぶえのたたき。コリコリとした食感の中に脂のコクが詰まっています。

店数を増やし、新橋にまで進出するようになった繁盛の理由は、食べてみてわかります。手頃な価格で、非日常が楽しめる若松屋。一般的なタレ・塩のやきとり・もつ焼き以外の食べ方にも興味をお持ちでしたら、池袋から東武線で30分、川越市駅すぐの若松屋を訪ねてみませんか。

日祝は15時（土は15時30分）開店と早いので、お昼飲みを楽しみたい方にもおすすめ。

（取材・文・撮影／塩見なゆ）